子宮の病気とは?原因や症状、治療法は?不妊を引き起こす?

監修医師 産婦人科医 渡邉 京子
渡邉 京子 産婦人科専門医。長門クリニック勤務。女性特有の月経や更年期にまつわる悩みの助けとなること、また、妊娠出産期を安心安全に過ごすお手伝いすること、を念頭に置いて日々診療しています。 監修記事一覧へ

妊娠・出産に不可欠の器官といえば「子宮」です。受精卵から赤ちゃんへと成長する大切な場所なので、もし子宮が病気になってしまうと、妊娠できなくなる危険性もあります。そこで今回は、不妊の原因になるかもしれない子宮の病気について、原因や症状、治療法をまとめました。

子宮は病気になりやすい?

子宮 痛い お腹 仕事 ビジネス スーツ 女性 腹痛

子宮の内側は、「子宮内膜」で覆われています。子宮内膜は、女性ホルモンの「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌バランスによって、受精卵の着床に備えて厚くなったり、妊娠が成立せず不要になると剥がれ落ちたり(=月経)、というサイクルを繰り返しています。

女性ホルモンは、脳の視床下部からの指令を受けて、主に卵巣から分泌されています。しかし、ストレスや生活習慣の乱れなどの影響で、視床下部や卵巣ががうまく機能しなくなることがあります。

また、正常な状態ではバランス良く分泌されているエストロゲンとプロゲステロンですが、何らかの原因でエストロゲンの刺激が長期的に強まってしまったりすると、子宮の病気を引き起こすことがあります。

このように、子宮はホルモンバランスの状態に大きく左右されるデリケートな臓器で、病気にかかりやすいといわれています。子宮が何らかの病気にかかってしまうと、不妊につながるリスクもあるので、注意が必要です。

子宮の病気には主にどんなものがあるの?

女性 はてな 疑問 なぜ クエスチョン

子宮腺筋症

「子宮腺筋症」は、子宮筋層で子宮内膜に似た組織が発生・増殖してしまう病気です。

子宮腺筋症のはっきりとした原因はわかっていませんが、女性ホルモンの影響が指摘されています(※1)。また、経腟分娩や帝王切開での出産を経験したことがある30代後半~40代の女性や、人工中絶や自然流産後の手術を受けた女性などは、発症リスクが高いともいわれています(※2)。

月経のたびに子宮の筋肉内で出血が起こるため、強い生理痛が起こります。

治療法には薬物療法と手術があり、個々の症状や妊娠の希望の有無などによって選択されます。

なお、子宮腺筋症に似た病気で、子宮内膜のような組織が子宮以外の場所にできるものを「子宮内膜症」といいます。名称に「子宮」とつきますが、医学的な分類では子宮の病気には含まれません。

子宮内膜増殖症

子宮内膜増殖症とは、子宮内膜が過剰増殖し、異常に厚くなってしまう病気です。

長期間にわたるホルモン療法や黄体機能不全などが原因で、エストロゲンによる刺激が強くなりすぎると、子宮内膜が過剰に増殖してしまうことがあります(※2)。

子宮内膜増殖症にかかると、不正性器出血や月経異常などの症状が見られます。細胞に異型がなければ経過観察で済むこともありますが、後述する「子宮体がん」になるリスクが考えられる場合、子宮摘出手術や薬物療法で治療します。

子宮内膜炎・子宮頸管炎

細菌やウイルスによって、子宮内膜が炎症を起こす病気を「子宮内膜炎」、子宮頸管が炎症を起こすものを「子宮頸管炎」といいます。

性行為などにより膣から菌が入りこんだり、分娩時の処置でついた傷が原因で炎症が起こったりすることがあります(※2)。

子宮内膜炎を発症すると、発熱や下腹部痛が見られますが、子宮頸管炎の場合は症状が比較的軽く、粘液性・膿性のおりものが増えるなどの変化があります。原因となっている菌に合わせて抗菌薬を投与することで、治療します。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮を形成する「平滑筋」という筋肉の細胞が増殖してできる良性腫瘍です。生殖可能な年齢の女性の20~30%に見られるものの、半数以上が無症状です。

詳しい発症原因はまだわかっていませんが、初潮前の女性には見られず、閉経後には腫瘍が小さくなる傾向にあることから、子宮筋腫の発生・増大にはエストロゲンが関わっているのではないか、と考えられています(※2)。

治療法は、一時的にエストロゲンの分泌を抑える薬物療法や、腫瘍だけ、もしくは子宮全体を摘出する手術療法があり、患者の年齢や症状などによって選択されます。妊娠を希望する場合は腫瘍だけを取り除くことになりますが、再発率が20%前後あるので注意が必要です(※1)。

子宮内膜ポリープ

子宮内膜ポリープは、子宮内膜から子宮の内側に向かって、キノコのように突き出た腫瘍を指します。基本的には良性の腫瘍ですが、ごく稀に悪性のポリープが見つかることもあります。

エストロゲンの過剰分泌などが発症に関係していると考えられているものの、まだ原因がはっきり解明されていません。自覚症状がほとんどないため、婦人科健診で偶然見つかるケースも多いですが、不正出血や過多月経、不妊症などが見られることもあります。

子宮内膜ポリープは、経過観察となることもありますが、治療を行う場合には手術で摘出するのが一般的です。しかし、開腹の必要はなく、場合によっては外来での処置も可能で、入院したとしても短期間で済みます。

子宮頸管ポリープ

子宮頸管ポリープとは、子宮の出入口の「子宮頸部」にできる良性の腫瘍です。発症する原因として、女性ホルモンの分泌が関係している可能性が指摘されていますが、はっきりとはわかっていないため、現状では予防が難しい病気です。

しかし、子宮頸管ポリープが癌(がん)であることは稀なので、できてしまったとしても過度に心配する必要はありません。不正性器出血が見られることもありますが、自覚症状がないことも多くあります。

妊娠中に子宮頸管ポリープが見つかった場合、産婦人科医に妊娠経過をよく見てもらいながら、経過観察や切除手術などの治療方針を慎重に決定します。

子宮頸がん

子宮頸がんは、子宮頸部にできる悪性腫瘍で、20~40歳代の女性がかかるがんの中で最も多く見られる病気です。

性交渉によって「ヒトパピローマウイルス(HPV)」に感染することが、子宮頸がんの発症に関係していると考えられています。子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種によってある程度予防でき、1~2年に1回の定期検診で早期発見できる可能性が高いがんです。

発症しても早期は自覚症状がなく、進行するにつれておりものに血が混じる、不正性器出血や下腹部の痛みが現れるといった症状が現れます。

患者の年齢やがん進行ステージによって治療法が異なり、手術・放射線治療・抗がん剤などによる化学療法の中から最適なものを選ぶことになります。

子宮体がん

子宮体がんは、子宮内膜から発生して「子宮体部」にできるがんのことです。発症頻度は40歳代後半から増加し、50~60歳代で特によく見られます。

出産経験がない、ホルモン療法を長期的に受けていた、など何らかの理由でエストロゲンの分泌量が多い人ほど、子宮体がんになるリスクが高いといわれています(※2)。子宮頸がんに比べて、初期段階から不正性器出血を認めることが多いのが特徴です。

子宮体がんの治療は基本的に子宮摘出手術で、放射線治療や抗がん剤治療を併用することも。まだ進行が初期段階で、妊娠を希望する若い女性の場合、子宮や卵巣を温存してホルモン治療を行うこともあります。

子宮肉腫

子宮肉腫は、婦人科系のがんの中でも稀で、原因がよくわかっていない悪性腫瘍です。主に「癌肉腫」「平滑筋肉腫」「子宮内膜間質肉腫」などの種類があります(※1)。

発症初期はあまり自覚症状がありませんが、進行するにつれて不正性器出血や下腹部痛などが現れます。「子宮筋腫」との区別がつきづらく、手術してはじめて子宮肉腫だと判明するケースも。

一般的に治療法として子宮摘出手術が選択されますが、放射線治療や抗がん剤などによる化学療法など、担当医と相談しながら決めていくことになります。

子宮の病気で、先天性のものは?

妊婦 お腹 クエスチョン 疑問 はてな

女性の0.5%程度に、「子宮奇形」という、子宮の形が先天的に本来と異なる状態が見られることがあります(※3)。通常、子宮は洋梨が反対向きになったような形をしていますが、胎内で子宮がつくられる過程で、異なる形になってしまったり、損傷してしまったりすることがあるのです。

自覚症状がないこともあるので、流産を経験した人や不妊に悩む人が、検査を受けてはじめて子宮奇形に気づくことも多くあります(※1)。

子宮奇形の女性の全てに手術が必要なわけではありませんが、妊娠継続に支障をきたす場合などは、医師から手術を勧められることもあります。

子宮の病気にかかると、妊娠できないの?

? 疑問

子宮は、妊娠して赤ちゃんを育てるための大切な器官なので、上に挙げたような病気を発症すると、「妊娠できないのではないか」と不安になるかもしれません。子宮の病気が不妊につながるかどうかは、良性・悪性の違いや、進行の程度によっても異なります。

たとえば良性の病気であっても、子宮腔内や周辺で癒着が起きたり、腫瘍ができる場所によっては受精卵の着床の妨げとなったりして、妊娠しにくくなる、あるいは妊娠しても流産しやすくなるといった可能性があります。また、無排卵や月経不順などの症状を引き起こした場合、自然妊娠しにくくなってしまうこともあります。

悪性腫瘍が見つかった場合、まだあまり進行していない初期段階で発見できれば、経過観察で済むか、子宮や卵巣を温存して治療を続けられるかもしれません。しかし、自覚症状がなくて気づかず悪化したりすると、子宮を全摘出しなければならないこともあるのです。

子宮の病気は早期発見・早期治療で不妊を防ごう

医者 女性 診察 相談 病院

女性にとって、子宮の病気はとても怖いものです。しかし、発見のタイミングが早ければ早いほど、不妊のリスクを下げることができます。

子宮の病気は自覚症状が現れにくいため、普段から定期的に検査を受けることが大切です。また、不正性器出血など何らかの異常を感じたときは、すぐに婦人科の医師に相談してください。

完全に予防することは難しいですが、万が一発症してしまっても妊娠・出産への影響が少なくて済むよう、「定期的に婦人科で検診を受ける」「自覚症状があったらすぐに婦人科を受診する」ということを心がけ、早期発見・早期治療に努めましょう。

こそだてハックに「いいね!」して情報を受け取ろう