「なんだかおりものが変かも…」と思い、勇気を出して婦人科に行くと「子宮頸管炎」が見つかった、という女性もいるかもしれません。子宮頸管炎とはいったいどんな病気なのでしょうか。今回は、子宮頸管炎の原因や症状、治療法のほか、不妊や妊娠中のリスクについてご説明します。
子宮頸管炎とは?
子宮頸管炎とは、膣と子宮を結ぶ「子宮頸管」に起こった炎症のことを指します。性器クラミジア感染症による子宮頸管炎の発症は10~20代の女性に多く、出産や流産、中絶手術によって子宮内膜に一時的に傷ができたり、抵抗力が落ちていたりすると、感染するリスクが高まります(※1,2)。
子宮頸管炎を放置しておくと、感染がさらに体の上に向かって広がり、子宮筋層炎や卵管炎、卵巣炎を引き起こし、骨髄腹膜炎にまで広がることがあるので、早期治療が必要な病気です(※2)。
子宮頸管炎の原因は?
子宮頸管炎の主な原因には、次のようなものがあります(※3)。
性感染症
性交渉によって子宮頸管炎の原因となる微生物やウイルスなどに感染することで、子宮頸管炎を引き起こす場合があります。また、気づかないうちにパートナーにうつしてしまうこともあります。
● クラミジア
● 淋菌
● トリコモナス
● ヘルペスウイルス
● 梅毒
外的刺激による感染
子宮の入り口である子宮頸管は、次のような子宮内操作で傷つきやすく、その際の損傷が原因となって子宮頸管炎が起こることもあります。
● 人工中絶手術
● 分娩(出産)
● 流産後の手術
細菌感染
子宮頸管は膣を経て外へと通じているため、次のような細菌への感染が原因になって膣炎を起こし、その一部が子宮頸管炎に至ることもあります。
● 大腸菌
● ブドウ球菌
● 連鎖球菌
子宮頸管炎による症状は?
子宮頸管炎の症状として次のようなものが挙げられます(※1)。
ただし、自覚症状がほとんどないことも多く、気づいたときには症状が進んでいることがあるので、おりものなどに違和感があれば、早めに婦人科を受診することが大切です。
● 粘り気があるおりものが増える
● おりものが膿っぽく、悪臭がする
● 不正出血がある
● 下腹部痛、腰痛がある
なお、下腹部痛がある場合、子宮頸管炎だけでなく骨盤内炎症性疾患(PID)も合併している恐れがあります(※2)。
子宮頸管炎の検査・治療方法は?
おりものの一部を採取して培養し、炎症の原因となっている病原体を特定します。病原体が判明したら、それに合った抗菌薬などで治療します。症状の程度によっては、消炎剤をあわせて処方されることもあります(※2)。
完治する前に薬の服薬をやめてしまうと、子宮頸管炎が慢性化してしまう恐れもあります。痛みなどの症状が軽くなっても、自己判断で治療をやめたりせず、医師の指示に従って最後まで治療に取り組みましょう。
子宮頸管炎の治療中は、締めつけが少なく、通気性の良い下着を選び、デリケートゾーンを清潔に保ちましょう。また、炎症の悪化やパートナーへの感染を防ぐため、性交渉は控えてください。
妊娠中に子宮頸管炎になったらどうなる?
妊娠中に子宮頸管炎を放置してしまうと、原因となる細菌などが子宮頸管を通って子宮にまで感染する、「上行性感染」を起こすリスクがあります(※4)。
それによって、お腹の赤ちゃんを覆っている卵膜や、羊水、ママから栄養をもらうための臍帯(へその緒)にまで炎症が波及してしまうことがあるのです。
まず、子宮頸管炎の一部が絨毛膜羊膜炎に広がると、切迫早産を引き起こし、早産になることもあります(※4)。さらに感染が進行すると、羊水感染や臍帯炎、最悪の場合は胎児感染に至る危険性もあります。
妊娠中におりものや不正出血などの異変に気づいたら、妊婦健診を待たずに担当医に相談してください。お腹の赤ちゃんへの影響がなるべく少なく済むよう、早期に治療を始めましょう。
子宮頸管炎で不妊になることもあるの?
子宮頸管が炎症を起こすと、子宮頸管から分泌される頸管粘液の量が少なくなることがあります。それにより、精子が子宮までスムーズに通りにくくなり、不妊の原因となることがあります(※5)。
また、子宮頸管炎が進行して卵管にまで炎症が及ぶことで、卵管が閉塞して排卵後の卵子を取り込みにくくなり、不妊につながることもあります(※6)。
特にクラミジア感染が原因の場合、自覚症状が乏しいことから発見が遅れ、子宮頸管炎が慢性化することがあるので、注意が必要です。
子宮頸管炎は早期発見が大切
子宮頸管炎は、慢性化すると不妊につながったり、妊娠中の場合は切迫早産・早産や胎児感染の恐れもあるので、早期発見が大切です。
自覚症状が乏しいので気づきにくい病気ではありますが、いつもと違うおりものの色や匂い、不正出血に気づいたら、早めに婦人科を受診するように心がけましょう。性感染症の疑いがあれば、パートナーと一緒に検査を受けてください。