赤ちゃんの歯茎に生えた白くて小さいこぶ。病気じゃないのか、痛くないのかと、心配になりますよね。実はそのこぶは「上皮真珠」と呼ばれるものです。成長するにつれて自然に消えるため、歯科医を受診する人も少なく、発生頻度などは詳しくわかっていません。そこで今回は、赤ちゃんに上皮真珠があったとき不安にならないように、原因や症状、歯医者に行って治療してもらうべきなのかについて説明します。
上皮真珠とは?
上皮真珠とは、乳歯が生える前の歯茎にできる米粒大のこぶのことです。色は灰色やクリーム色で、1個しか現れない場合もあれば、複数個が集合して現れる場合もあります。
しかし上皮真珠は生まれたばかりや生後数ヶ月の赤ちゃんによく見られるもので、触ると固いことがわかるはずです。しかし赤ちゃんには痛みはありません(※1)。
「真珠」と名がつけられてはいるものの、もちろん中に真珠が入っているわけではありません。こぶの中には異物が入っているわけではないので、安心してくださいね(※2)。
上皮真珠の原因は?
上皮真珠の正体は、歯を作る組織であるエナメル質の一部が硬くなったものです。
何らかの理由によって発生の途中で歯を作る組織の一部が吸収されず、その結果、赤ちゃんの歯茎に上皮真珠ができます(※1)。
上皮真珠は赤ちゃんに必ずある?
上皮真珠がどのくらいの割合で発生するのかは研究によってばらつきがあり、まだはっきりしていません。
例えば新潟大学の研究では、500人以上の新生児を調査したところ、約半数の新生児に上皮真珠が見られたそうです。しかし同研究によれば、上皮真珠が4割弱の赤ちゃんに発生していたとする研究や、約80%の赤ちゃんに発生するという研究もあるとのことです。
確かなことは、上皮真珠はすべての赤ちゃんに発生するわけではないけれど、かといってあまり珍しくもないということです(※3)。
上皮真珠は歯科医に診てもらうべき?
赤ちゃんに上皮真珠があるからといって歯医者で診察してもらう必要はありません。放置していても発生してから数週間から数ヶ月で自然に消えることが多いため、特に治療する必要はないとされています(※1)。
むしろ無理に取ろうとすると、歯茎を傷つけてしまうかもしれません。気になるかもしれませんが、赤ちゃんに上皮真珠があっても放置しておきましょう。
上皮真珠と似ている口の異常は?
上皮真珠と似ている口の異常に、歯の早期萌出があります。早期萌出とは、一般的な歯が生える時期よりも非常に早く歯が生えてくることで、生まれたときから生えている乳歯を「先天性歯」、生まれてから1ヶ月以内に生えてくる乳歯を「新生児歯」といいます。
上皮真珠と同様に、早期萌出が起きる原因はわかっていません。早期萌出の発生頻度は0.03〜0.11%で、男の子に多いとされます。早期萌出は下の前歯でよくみられますが、犬歯や上の前歯が生えてくることもあります。
早期萌出はとくに症状がなければ、そのままにしておいて問題ありません。しかし歯がグラグラしているときや、まわりの歯肉にこぶができているとき、あるいは過剰歯の場合はその歯を抜く必要があります(※4)。
上皮真珠と同時期に起こりうる口のトラブルは?
上皮真珠と同様に、生後数ヶ月までの赤ちゃんに起こる口のトラブルとしては、以下のようなものがあります。
リガ・フェーデ病
リガ・フェーデ病とは、先天性歯や新生児歯による刺激で赤ちゃんの舌にできる潰瘍のことです。痛みがあるため、リガ・フェーデ病になった赤ちゃんはうまくミルクを飲めなかったり、離乳食を食べられなかったりします。
リガ・フェーデ病になったら、歯を抜いたり、あるいは歯の舌と接触する部分を削ったり、潰瘍の炎症を取り除く治療を行います(※4)。
むし歯菌の感染
むし歯菌が歯に定着するのは2歳前後ですが、早い赤ちゃんだと乳歯が生え始めてすぐの段階で、乳歯からむし歯菌が見つかることがあります。とくに上の前歯に感染しやすいとされます。
むし歯菌は、赤ちゃんと接する時間が長いママから感染することが多いものの、パパや兄弟などからもうつることがあります。感染を予防するためには、歯磨きだけではなく家族の口の中のむし歯菌を減らすことも大切です。
歯磨きは乳歯が生え始めたら行うようにしましょう。最初は水で濡らしたガーゼで歯をふく程度でかまいません。ママやパパによる仕上げの歯磨きが早めに習慣化できれば、むし歯になりやすい3歳以降の乳歯の手入れも楽に行えるようになるでしょう(※2)。
上皮真珠は病気ではないので安心して
赤ちゃんの口にこぶができていたら、何かの病気じゃないかと心配になってしまいますよね。でも上皮真珠は病気ではありません。自然に消えるので、たくさんあっても安心してください。
赤ちゃんの口の中が気になってしまうとは思いますが、見た目に一喜一憂せず、これから生えてくる乳歯を楽しみに待ちたいですね。