新生児黄疸とは?数値の基準値は?黄疸には種類があるの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

生まれたばかりの赤ちゃんは、皮膚や目などが黄色くなることがあります。これは「新生児黄疸」と呼ばれるもので、初めて見ると不安になりますよね。黄疸のほとんどは生理的なもので、生後1〜2週間で改善しますが、なかには病気が原因になっていることもあります。そこで今回は、新生児の黄疸にきちんと対処できるように、その原因や症状、治療法、ビリルビンの数値の基準値などをご説明します。

黄疸とは?新生児期の赤ちゃんに現れる?

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「黄疸」とは、体内でビリルビンという物質が増加して起こる現象です。ビリルビンは黄色い色素をもっているので、血液中のビリルビンの濃度が高まると肌や粘膜が黄色く見えるようになります。

生後2~3日ほどの新生児に症状が現れることが多く、新生児の黄疸を特に「新生児黄疸」と呼びます。

新生児黄疸の症状は?

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新生児黄疸はかなりの確率で現れるといわれますが、そのほとんどは生理的な現象なので、生後5〜7日をピークに改善することが多いです(※1)。出産後、産婦人科でも経過を見ていきますが、ママとしても次のような症状に注意してあげましょう。

目や肌が黄色くなる

生後2~3日目に肌や白目の部分が黄色くなり、その後1~2週間かけて徐々に消えていきます。新生児黄疸の特徴的な症状です。

うんちが白くなる

通常増加したビリルビンは自然と体外に排出されるのですが、生後2週間を経過しても黄疸があり、白い便がみられるときは胆道閉鎖症を疑います。母子手帳に配布される便のカードで、1から3番であれば注意が必要です(※2)。

ぐったりしていたり、発熱がある

目や肌が黄色くなることに加えて、病気が原因の黄疸の場合には、倦怠感や発熱を伴うことがあります。赤ちゃんに38度の発熱がある、あまり起きない、哺乳が悪い、呼吸が早いなどが見られたときには、早めに小児科を受診しましょう。

新生児黄疸の原因は?黄疸には種類がある?

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黄疸が現れる原因は、血液中のビリルビン濃度が高くなってしまうことです。ビリルビンは血液中の赤血球が分解されて発生しますが、普通は肝臓で処理されて体外に排出されるので、体内のビリルビン濃度が高まることはありません。

しかし、新生児黄疸がよく知られていますが、様々な原因によって次のような種類の黄疸が現れます。

新生児黄疸(生理的黄疸)

生まれたばかりの新生児の血液には赤血球・ヘモグロビンがたくさん含まれており、生まれると同時にこれらの大量の赤血球が徐々に分解されるため、ビリルビンが一時的に増加します。新生児期は肝臓の働きが十分ではないため、大量のビリルビンを処理しきれず、新生児黄疸として症状が現れてしまうのです。

新生児の肝臓の働きは、時間が経てば成長して処理能力も上がりますので、自然に黄疸が治癒されます。そのため、病気ではない黄疸として、生理的黄疸とも呼びます。

母乳性黄疸

新生児黄疸は遅くとも生後2週目には消えますが、母乳育児の赤ちゃんは生後1ヶ月を過ぎても黄疸の症状が残ることがあります。これは母乳性黄疸の可能性が高く、母乳に含まれるホルモンが肝臓の酵素の働きを弱めるため、赤ちゃんの体内でビリルビンの処理が遅れてしまい、黄疸の症状が続きます。

母乳性黄疸であれば、新生児黄疸と同様に自然に回復しますが、生後1ヶ月を過ぎて症状が残る場合には、他の病的な黄疸の可能性もあります。ミルクに切り替えて様子を見たり、1ヶ月健診で相談するなど、原因を明確にしておく必要がありますね。

新生児溶血性貧血による黄疸

ママと赤ちゃんの血液型が異なることで起こる黄疸です。血液型不適合妊娠では、異なる血液型に対する抗体がママの体にできてしまい、赤ちゃんの赤血球が壊されることでビリルビンが過剰に増加してしまい、黄疸の症状が現れます。

新生児溶血性貧血による黄疸では、とくにRh型がマイナスである母体から生まれた血液型不適合妊娠で発生することが多いため、出産する前から注意して対処が可能な症状の一つです。

肝細胞性黄疸

大人でも、急性肝炎などの病気が原因で肝臓の機能が低下すると、ビリルビンを処理することができなくなり、黄疸にかかってしまうことがあります。この肝臓の機能低下による黄疸を肝細胞性黄疸と呼びます。新生児黄疸や生理的黄疸も、大枠ではこの肝細胞性黄疸に含まれます。

閉塞性黄疸

肝臓はうまく機能していても、体外に排出する胆道が閉塞されていることで起こる黄疸です。胆汁の排泄がうまくいかない「先天性胆道閉鎖症」が主な原因として考えられますが、特に白っぽいうんちが出るときには注意が必要です。

新生児黄疸と診断するビリルビン数値の基準値は?

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新生児の黄疸が生理的なものか、病的なものかを見分けるために、経皮的ビリルビン検査と呼ばれる方法で皮膚の上からビリルビン濃度を測定します。

生理的な新生児黄疸であれば、血液中のビリルビンの数値が13mg/dl前後になったあと、新生児のビリルビン正常値である5mg/dl以下まで徐々に下がります。

しかし、血液中のビリルビンの値が15mg/dl以上(2500g以下の低出生体重児は12mg/dl以上)を超え続ける場合には、病的な黄疸が疑われるので、さらなる血液検査などを行うことがあります。

また、生後24時間以内に見た目で確認できるほどの黄疸が現れる場合には、治療が必要となります。

新生児黄疸はミノルタ黄疸計で診断するの?

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肌や目の色から黄疸が疑われるときに、まず経皮的ビリルビン検査を行いますが、その際に利用するのがミノルタ黄疸計です。採血する必要がないことから、赤ちゃんに優しく、採血よりも簡単に測定が可能です。

ミノルタ黄疸計での診断数値の基準値は、病院施設によっても異なりますが15mg/dl以上になると血液検査を行う、という判断が多いようです。基準値は出生体重にも左右されますので、数値が高くても慌てずに産婦人科の先生に相談しましょう。

新生児黄疸に治療は必要?

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生理的な新生児黄疸なら治療の必要はありません。しかし病的黄疸の可能性があり、血液中のビリルビンの値が日齢ごとの基準値を超えている場合は、麻痺などの神経症状が残る核黄疸を予防する目的で、ビリルビン値を下げる治療が行われます。

日光や蛍光灯の光に当たると血液中のビリルビンの濃度が減少することがわかっているため、まずは光線療法が行われます。青い光や緑色の光を当ててビリルビンの値を下げます。ただ、光線でもビリルビンの値が下がらなければ、体内の血液の一部を置き換える「部分交換輸血」、原因によりガンマグロブリン投与などが行われます。

ちなみに、昔は黄疸が出た場合に、血液中のビリルビン値を下げるために日光浴をしたほうがいいという指導がされていました。しかし現在では、日光を当てても劇的な治療効果は見られないため、きちんと光線療法を行うことが一般的です。日光に当てていないから黄疸が治らないといったことはないので、気にしすぎないでくださいね。

新生児黄疸はいつまで続くの?

カレンダー 砂時計

本来は排出されるビリルビンが長く体内に留まると、ビリルビンが脳神経細胞を壊して「核黄疸」という病気を引き起こす危険があります。

早期の治療をすれば回復が見込めますが、3日以上過ぎると発熱やけいれんなどが現れ、1週間以上過ぎると筋緊張がなくなりグッタリとしてきます。ここまで症状が進むと、脳性麻痺などの後遺症が現れ、場合によっては命にかかわってくるため、早期治療が大切です。

黄疸と癌の関係は?

赤ちゃん 診察 聴診器

黄疸の原因の一つに肝臓機能の低下が挙げられますが、肝臓癌が発症しているのではと心配になるママも少なくないようです。ただ、小児での肝細胞癌はごく稀です。また、小児がんで考えると5,000人〜1万人に一人くらいの非常に稀な確率で起こる病気です(※3)。心配になりすぎることはありませんよ。

また、黄疸の治療で使用する光線療法が、赤ちゃんの癌に影響するのでは、という意見もあるようです。しかし、小児がん自体の症例が少なく、因果関係ははっきりとはしていません。

それ以上に黄疸の治療を優先したほうが良いことも多く、産婦人科医の指示や治療法に従いましょう(※4)。

新生児黄疸になっても目に影響はないの?

赤ちゃん 目 顔

黄疸の症状の一つに、目の白い部分が黄色くなることがあります。目には毛細血管が張り巡らされているため、黄疸の原因であるビリルビンの血中濃度が高まると、白眼が黄色くなってしまいます。

ただ、新生児黄疸であれば自然と治癒していくもので、目に影響はないとされています。「光線療法が目に悪いかも」と心配になるママも多いようですが、アイマスクをかけて行う、足元から光線を当てて目には強く当たらないようにする、など対処もされます。

もし不安が強いときには、産婦人科医に相談してアイマスクをしっかり固定するなど、考慮してもらうといいでしょう。

新生児黄疸には落ち着いて対応しましょう

初めての出産で黄疸が出ると驚いてしまいますが、決して珍しいことではありません。病的黄疸の可能性もあると考えると不安になってしまうかもしれませんが、ほとんどは生理的黄疸なので焦らず対応しましょう。

そして、病的黄疸の可能性がないかを確認するため、どれくらい黄疸が続いているのか、皮膚や白目の色、うんちの色などをしっかりとチェックしてください。

早期に対処すれば治りやすいものなので、もし症状が改善されないといった兆候があれば早めに出産時の産婦人科などへ相談するようにしましょう。

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