旅行や仕事、帰省など、飛行機を使う機会が多い人は、妊娠しても乗れるのか不安になるかもしれませんね。放射線が赤ちゃんに悪影響を及ぼさないか心配、という妊婦さんもいると思います。今回は、「妊娠していることに気づかず乗ってしまった」もしくは「どうしても乗らなければいけない予定がある」というときのために知っておきたい、妊娠初期の飛行機搭乗について、放射線の影響や注意点も含めてご説明します。
妊娠初期に飛行機に乗っても大丈夫?妊娠超初期は?
妊娠がわかったけれど、新婚旅行や友達の結婚式、出張などの予定がある…という場合、「妊娠初期に飛行機に乗っても大丈夫かな」と悩みますよね。
ANAやJALなど大手航空会社の規定では、妊娠後期には搭乗に制限がありますが、妊娠初期については特に触れられていません。
しかし、妊婦さんと赤ちゃんの健康を考えると、旅行する時期としては胎盤が完成したあとのいわゆる「安定期(妊娠中期)」が最も安全だと考えられています(※1)。
また、「今思えば、妊娠超初期であることに気づかず飛行機に乗ってしまった」ということもあるかもしれません。この場合、特に体調に問題がなく戻ってこれたうえで妊娠がわかったのであれば、お腹の赤ちゃんへの影響は心配しすぎなくても良いでしょう。
妊娠初期に飛行機に乗るときの注意点は?
飛行機の中は、決して妊婦さんにとって快適な環境とはいえません。妊娠初期は体調が安定しない人も多く、万全ではない状態で搭乗すると、母体に影響が出る可能性はあります。
具体的には次のような点に気をつけましょう。
気圧の変化・酸素濃度の低下
飛行機は特に離発着時に気圧や酸素濃度の低下が起こります。
そのため、耳鳴りや頭痛が起こるなど、体調の変化が見られることも。妊娠初期では貧血症状が出ることも多く、頭痛を強く感じやすい傾向にあります。
エコノミークラス症候群
長時間同じ姿勢で座ることで血流が悪くなり、血栓ができて胸部の痛みや呼吸困難を引き起こすことも。この症状をエコノミー症候群と呼びます。
妊婦さんは血流が悪くなりやすいので、エコノミー症候群には特に注意が必要です。
つわりの悪化
妊娠初期でつわりがある人の場合、飛行機の座席シートの匂いや、風通しの悪さで気分が悪くなり、吐き気を催すこともあるかもしれません。
妊娠初期の飛行機で、放射線の影響は?
妊娠初期の飛行機利用で気になることの一つは、放射線の影響ではないでしょうか。
地球上には常に放射線が降り注いでいて、飛行機に乗っていても放射線を浴びています。しかし、結論からいうと、飛行機で浴びる放射線は、お腹の赤ちゃんに影響が出るほどの量ではないと考えてください。
日本産科婦人科学会のガイドラインによると、「50mGy(≒50mSV)未満の被ばく量であれば安全」とされています(※2)。一方、環境省によると、東京とニューヨークを飛行機で往復したときの被ばく量は0.11〜0.16mSV程度なので、基本的に心配する必要はありません(※3)。
妊娠初期に飛行機に乗ると流産しやすいの?
妊娠初期に飛行機に乗ることで流産の危険性が高まる、という研究報告は特にありません。
しかし、普通に過ごしていたとしても、妊娠12週未満で早期流産が起こる確率は約13%あります(※4)。ほとんどが胎児側の原因とはいえ、体に負担がかかるような行動は控えた方が良いでしょう。
妊娠初期に飛行機に乗るときのポイントは?
妊娠初期は体調面でも精神面でも不安定になりがちなので、「妊娠初期の搭乗は避けられるなら避ける」ことをおすすめします。旅行などの予定は、安定期に変更するなど検討してみましょう。
どうしても乗らなくてはいけないときには、以下のポイントを押さえてくださいね。
たまに体を動かす
エコノミー症候群対策として、長時間同じ姿勢にならないように注意しましょう。
足を伸ばして足首を回すなど、簡単な運動でいいので、周りの乗客に迷惑がかからない程度に体を動かすようにしてください。
エチケット袋を多めに用意する
妊娠初期ではつわりで気分が悪くなることも多くあります。いつでも嘔吐に対応できるように、エチケット袋は多めに用意していきましょう。
水分をこまめに摂る
妊婦さんが脱水症状を起こすと、胎盤の血流量が減り、赤ちゃんへの影響が出てしまいます。
機内サービスを利用してこまめに水分を摂りましょう。体を冷やさないように、お湯や温かいスープを飲むようにするといいですね。
トイレ近く・通路側の席を予約する
気分が悪くなったときにトイレに行きやすく、すぐにフライトアテンダントに声を掛けやすい通路側の席がおすすめです。
バルクヘッド席といって、自分の席の前に広いスペースがある座席もありますので、予約時に利用できないか調べてみると良いでしょう。
母子手帳を持参する
飛行機などでの移動中に気分が悪くなっても、母子手帳を持っていれば健康状態や出産予定日などの重要事項を伝えることができます。
機内や旅行先で緊急対応が必要になったときのために、健康保険証とともに母子手帳を持ち歩くようにしましょう。
妊娠初期の飛行機搭乗には診断書が必要なの?
妊娠初期の飛行機への搭乗については、診断書が不要の航空会社が多いですが、念のため利用する航空会社に事前に確認しましょう。
ちなみに、妊娠後期になると、多くの航空会社では、国際便も国内便も「出産予定日の28日以内」の搭乗では診断書が必要です。
また、国内線では「出産予定日の7日以内」、国際便では「出産予定日の14日以内」になると、医師の同伴も必要になるので、帰りの便の日程にも注意する必要があります。
妊娠初期の飛行機利用は医師に相談を
妊娠初期は、航空会社の規定としては診断書なしで搭乗できるとしても、切迫流産のリスクやつわり症状の悪化なども考えられます。飛行機の利用を検討する際は、必ずかかりつけの産婦人科医に相談しましょう。
妊娠中はつわり以外にも、体調や感じ方に変化が出るものなので、普段飛行機に乗り慣れているからといって油断は禁物です。くれぐれも無理はせず、できれば飛行機に乗るのは安定期に入るのを待ってからにしてくださいね。