赤ちゃんの健康や発育を考えると、「魚に含まれていて、食べると頭がよくなる!」そんなイメージのあるDHAは気になりますよね。しかも妊娠中にDHAを摂取することで、お腹の中の赤ちゃんにもいい影響があるのです。今回はDHAについて、妊婦さんや胎児への作用、おすすめの摂取方法などをご紹介します。ぜひ妊娠初期から適切な量を摂取してくださいね。
そもそもDHAとは?どんな効果があるの?
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、多価不飽和脂肪酸のうち「オメガ3脂肪酸」の一つで、青魚やマグロなどの魚油に含まれています。
多価不飽和脂肪酸は、体内で自然に作られる栄養素ではないので、主に食べ物から摂取する必要があります。近年、日本人の食生活が多様化し、青魚の消費量が少なくなってきたこともあって、昔と比べるとDHAの摂取量が減ってきています。
オメガ3脂肪酸は、日本の消費者庁が実施した「食品の機能性評価モデル事業」で、血中の中性脂肪を下げ、血圧を改善するといった作用などが高く評価されました。さらに、乳児の発育や行動、視覚発達の補助についてもその効果が評価されています(※1)。
DHAは、大人の健康維持だけでなく、赤ちゃんや子供の成長を助けてくれる重要な栄養素だといえますね。
DHAは子供の脳の発達に効果あり!?
1980年代に、イギリスの栄養学者マイケル・クロフォード教授が、「日本人の子供の知能がほかの国の子供に比べて高いのは、魚をよく食べるからではないか」という見解を発表したことをきっかけに、DHAと知能との関係が注目されるようになりました。
脳はたくさんの神経細胞でできていて、DHAは神経細胞(ニューロン)の中に存在しています。脳に入った情報は、この神経細胞を経由して伝達されます。
DHAは、神経細胞の細胞膜をやわらかくすることによって、情報伝達をスムーズにしてくれます。そのため、DHAを適切に摂取することで、脳の働きが活発になり、記憶力や集中力、判断力が高まると考えられています。
妊婦にもDHAは必要なの?
先述のとおり、子供の発育に不可欠なDHAですが、妊娠中から意識的に摂取したほうが良いのでしょうか?
現在のところ、妊娠中のDHA摂取量と、生まれてくる赤ちゃんの知能指数との関係性を示したデータはありません。しかし、特に妊娠初期は、胎児の器官が正常に形成されるように、より多くのDHA摂取が必要です(※2)。
また、妊婦さんがDHAを適切に摂ることで、次のような効果があると報告されています。
早産率の低下
アメリカのカンザス大学医療センターの研究チームの発表によると、DHAを多く摂取していた妊婦のグループは摂取していないグループに比べて、妊娠34週未満で生まれる早産率が大幅に低いという差がみられました(※2)。
また日本でも、東京大学の研究者たちによるマウスを使った実験で、DHAなどオメガ3脂肪酸の摂取が早産予防につながる、という結果が報告されています(※3)。
喘息発症リスクの低下
カナダのウォータールー大学の研究によると、妊娠24週から出産までオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取した妊婦のグループは、プラセボ(偽薬)を摂取したグループと比較して、生まれた子供の喘鳴・喘息リスクが約3分の1低下しました(※4)。
妊婦はDHAをどれくらい摂取すればいいの?
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2010年版)」によると、妊婦さんのDHA摂取目安量は1.8g/日とされています(※5)。
焼き魚のサンマだと1匹程度、イワシだと2匹程度、お刺身で食べる本マグロのトロであれば約1/2枚、ブリなら1切れ程度です(※6)。
なお、塩漬けの魚を食べすぎると脳出血の発症リスクが増加するという報告もあります(※5)。魚の調理法にも気をつけつつ、他の食事とバランスよく組み合わせて適度にDHAを摂取しましょう。
妊婦におすすめのDHA摂取方法は?
妊娠中は、胎盤を通じて胎児に栄養を届けるため、妊婦さん自身がDHAを摂る必要があります。ただし、妊娠中は生魚をあまり食べないほうがよいので、煮物や焼き魚にして摂取しましょう。
加熱調理すると、魚油が落ちてDHAは減少してしまうので、煮汁なども一緒に食べることで、効率良くDHAを摂れますよ。サバの水煮やサンマの蒲焼きといった魚の缶詰を利用するのも一つの方法です。
また、DHAは酸化しやすいという特徴があるため、調理したらなるべく早く食べるようにしたり、トマトのリコピンやキュウリのビタミンC、オリーブオイルのポリフェノールといった酸化を防ぐ効果(抗酸化作用)があるものと一緒に摂ったりするのがおすすめです。
妊娠中のDHA摂取は、サプリでもいいの?
妊娠中のDHA摂取ですが、妊娠初期などつわりがひどくて食欲がない…といった場合には、サプリメントでの摂取も検討してみましょう。最近では、DHAが配合された葉酸サプリも販売されています。この場合も、抗酸化作用のある成分を含んでいるものが選べるとベストですね。
ただし、ママと赤ちゃんの健康を維持するための基本は、栄養バランスのとれた食事です。サプリメントだけに偏らないように気をつけてくださいね。
妊娠中からDHAを摂取しよう
DHAには、赤ちゃんや子供の脳の発達を支えるだけでなく、早産率や喘息発症リスクを下げる効果も報告されています。胎児の器官形成にも不可欠なので、妊娠中から適量を摂るように心がけてください。
ただし、つわりがつらかったり、あまり青魚が好きではないという場合は、DHAを含むサプリメントを上手に活用していきましょう。