妊娠すると、妊娠前には考えられなかったような様々な変化が体に現れます。なかには、妊娠中に「でべそになってしまって、元に戻らない!」と困っている妊婦さんもいるかもしれませんね。今回は、なぜ妊娠するとでべそになりやすいのか、いつ元に戻るのか、妊娠中にできる対策などについてご説明します。
でべそとは?
へそは、胎児がお母さんと「臍帯(へその緒)」でつながっていたところです。生後、臍帯が取れたあとに、へそと腹腔の間にある「臍輪(ヘルニア門)」が閉じ、最後に皮膚がへこむことで形が完成します。
しかし、へその形成過程が途中で止まってしまい、ヘルニア門が完全に閉鎖されないと、腸がへそに脱出して「臍ヘルニア」になります。また腸が脱出せず皮膚だけが余っている場合は「でべそ」の状態になります(※1)。
一方で、へそが完成している大人の場合、このような理由でべそになることは考えられませんが、「でべそに見える」ことはよくあるようです。その理由について、次から見ていきましょう。
妊婦がでべそになりやすい理由は?
妊娠してお腹の中で赤ちゃんが成長するにしたがって子宮が大きくなり、内側から押される「腹圧」が上がっていきます。そのため、腹筋が引き伸ばされ、へそのある中心部分の筋肉が薄くなります。
そうすると、くぼんでいたへそが平らになってきます。穴がほとんどなくなった状態になる人もいて、妊娠前と比べると「でべそ」に見えることがあります。
特に、お腹に双子や三つ子がいる妊婦さんはかなりお腹が大きくなるので、でべそになりやすい傾向があります。また妊娠前から痩せていてお腹まわりの脂肪が少なかった人の場合、でべそが目立って見えるようです。
つまり、へその穴がなくなったり、へそが出てきて「でべそ」のように見えるだけであれば異常なことではありません。妊娠に伴う体の変化の一つと考えてくださいね。
妊婦のでべそは、いつ治るの?
妊婦さんがでべそになってしまった場合、「このまま戻らなかったらどうしよう」と心配になる人もいますよね。個人差はありますが、産後に子宮が収縮し、2~3ヶ月が経つ頃にはでべそが気にならなくなるようですよ。
ただし、出産を終えてしばらくたってもへそが戻らなかったり、産後になってでべそが目立つようになったりした場合は、次に説明するように「腹直筋離開」を起こしているかもしれません。
妊婦のでべそは腹直筋離開の可能性も?
妊娠中や産後に「でべそ」になり、痛みを伴うような場合は「腹直筋離開(ふくちょくきんりかい)」を起こしている可能性があります。
「腹直筋」とは、一般的に腹筋として知られるお腹の筋肉のこと。お腹の中心で左右の腹筋をつないでいる白線が横に伸びて薄くなり、左右の腹筋が離れて開いた状態を「腹直筋離開」といいます。
ある研究によると、妊娠後期には70%近くの女性に腹直筋離開が見られ、そのうちの30~60%は産後も腹筋が開いた状態が続くという報告もあります(※2)。
腹直筋離開の程度によっては、へそだけでなく、へそ周りのお腹もぽっこりと前に出ることがあります。また、分娩時にお腹に力が入りにくいためにいきめず、帝王切開になることもあります。
軽い腹直筋離開であれば、でべそは出産後半年ほどで自然に治ることが多いですが、出産してから半年~1年ぐらいたってもへそやお腹のふくらみが元に戻らない場合は、産婦人科で相談してみると良いでしょう。
欧米では、妊娠・出産による腹直筋離開はよく知られており、美容上の理由で修復手術が行われることもよくあります(※2)。日本ではまだあまり多くありませんが、できるだけお腹に傷跡が残らないような形で手術をしてくれる病院もありますよ。
妊娠中からできる、でべそ対策は?
特にはじめての出産の場合、出産後に元の状態に戻るかどうか不安になりますよね。
お腹が大きくなることで、でべそになったように見える場合は、妊娠中に対策できることは特にありません。しかし、基本的には産後数ヶ月で戻るので、「今だけ」と割り切りましょう。
ただし前述のとおり、腹直筋離開が起きている場合には、腹筋の開きをできるだけ小さくするために、サポーターなどで下腹部を支えるなどの対策が必要です。
腹直筋離開を起こしていると、インナーマッスルが弱くなっていることが多いですが、自己流で腹筋運動などをしてしまうと、状態が悪化してしまうことも。まずは産婦人科や整体院で専門医に相談してくださいね。
妊婦のでべそは気にしすぎないで
妊娠中にでべそのような状態になると、見た目の問題で心配する人も多いかもしれませんが、産後は元に戻ることが多いので、あまり気にしすぎないでくださいね。気になるからといって、いじりすぎないようにしましょう。
でべそが腹直筋離開によるものである場合も、程度が軽ければ産後半年~1年ほどで見た目が気にならなくなります。
ただし、でべそやへそ周りのくぼみがなかなか治らなかったり、お腹の痛みがあったりするときは、我慢せず産婦人科や整体院で診てもらってくださいね。