月に1度、定期的に生理がやってくるのは女性の健康のしるしです。そうはいっても、生理痛のつらさに、仕事や家事、育児が億劫になってしまう人も多いですよね。生理痛がひどくても、なかなか休めず、薬ばかりに頼るのに不安を感じることもあるのではないでしょうか。そこで今回は、副作用が少なく効き目がマイルドな「漢方薬」で生理痛を緩和する方法についてご紹介します。
そもそも生理痛ってなに?
毎月の生理周期にあわせて、女性の体では、受精卵が着床しやすいように子宮内膜が分厚くなっていきます。
しかし受精や着床をしなかった場合、分厚くなった子宮内膜は不要となるため、はがれて血液と一緒に体外に排出されます。これが生理です。
「生理痛」は、血液を排出するときに起こる子宮収縮によって感じる痛みのことです。
「生理痛」といってもその症状はさまざまです。下腹部痛や腰痛をはじめ、頭痛、吐き気、胃痛、下痢、めまい、倦怠感、肩こりなどの身体的症状だけでなく、イライラ、無気力、憂うつなど精神的症状を伴うこともあります。
痛みの強さも人それぞれで、全く感じない人もいれば、寝込むほどつらいという人もいます。子宮を収縮する働きのあるプロスタグランジンというホルモン物質の分泌量や、体の冷え・ストレスなどによっても生理痛は強くなるため、毎回痛みの強さが異なることもあります。
漢方医学からみた生理痛とは?
漢方医学では、生命活動に必要なエネルギーをあらわす「気」、血液やホルモンなどの働きをあらわす「血」、血液以外の体液をあらわす「水」のバランスが崩れると心身に悪影響を及ぼすと考えられています。
女性は、体の冷えなどから血行不良になり、「血」や「気」、「水」が滞りやすいほか、血がドロドロした「瘀血(おけつ)」の状態になりやすく、これが生理痛の原因となるとされています。
滞りのある部分や程度は人それぞれなので、漢方医学で治療を行うときは、その人の症状や体質にあわせた漢方薬が選択されます。
生理痛を緩和する漢方薬にはどんなものがある?
漢方薬とは、植物や鉱物などでできた天然の「生薬」をブレンドして作られる薬です。
西洋医学から生まれた薬と比べると効き目が穏やかなこと、西洋薬のように症状そのものを止めるよりは体全体の調子を整えて、自己治癒力を高めるのが特徴です。そのため、数週間~数ヶ月じっくり服用を続けることが大切です。
また、症状や体質によって、同じ症状でも異なる漢方薬が使われること(同病異治)もあり、異なる病気に同じ漢方薬が処方されること(異病同治)もあります。生理痛の緩和に使われる漢方薬としては、下記のようなものが代表的です(※1,2)。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
比較的体力はあり、便秘がちの人に処方される漢方薬です。血の巡りを改善する効果が高く、生理痛の他に、のぼせ、腰痛、頭痛、めまい、イライラなどの改善が期待できます。
成分 | トウニン・ダイオウ・ボウショウ・カンゾウ・ケイヒ |
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
比較的体格がしっかりしている人に処方される漢方薬です。血の巡りを改善することで、生理痛、顔がほてるのに足腰が冷える症状、めまい、冷え性、しもやけ、にきび、肩こり、頭痛などに効果があります。
成分 | ケイヒ・シャクヤク・ブクリョウ・トウニン・ボタンピ |
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷え症の傾向がある人や、疲れやすい人に処方される漢方薬です。女性特有の様々な症状に効果的で、女性の「聖薬」ともいわれています。生理痛や生理不順、むくみ、下腹部痛、めまい、頭痛、貧血などに効果があります。
成分 | トウキ・センキュウ・シャクヤク・タクシャ・ブクリョウ・ソウジュツ(またはビャクジュツ) |
温経湯(うんけいとう)
比較的体力がない、冷え性の人に処方される漢方薬です。血の巡りをよくし、気を補うことで、生理痛や不妊症、不正出血、足腰の冷え、のぼせ、皮膚の乾燥、不眠などに効果があります。
成分 | トウキ・センキュウ・シャクヤク・アキョウ・バクモンドウ・ボタンピ・ハンゲ・ショウキョウ・ゴシュユ・ニンジン・カンゾウ・ケイヒ |
加味逍遙散(かみしょうようさん)
比較的体力がない人で、イライラや気分の落ち込みなど、精神不安がある人によく処方される漢方薬です。血を補い、全身の巡りをよくします。生理不順や生理痛、冷え性など、女性特有の症状や、頭痛、不眠、倦怠感、上半身のほてりなどに効果的です。
成分 | ボタンピ・シャクヤク・トウキ・サイコ・ハッカ・サンシシ・ブクリョウ・カンゾウ・ショウキョウ・ソウジュツ(またはビャクジュツ) |
大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)
比較的体力があり、便秘傾向の人に処方される漢方薬です。血の巡りをよくし、熱や炎症を取る効果があり、生理痛や生理不順、痔、便秘の改善が期待できます。
成分 | ボタンピ・トウニン・ダイオウ・トウガシ・ボウショウ |
これらの他に、当帰建中湯、五積散、芍薬甘草湯、通導散など、様々な漢方薬が処方されることがあります。
市販の漢方薬も生理痛に効果的?
漢方は、体の状態や症状、体質などにあった薬を選ぶことが大切です。市販されている漢方薬もありますが、同じような効能でも体質によって合う、合わないがあります。
漢方薬は副作用が少ないとはいえ、全くないというわけではないので、まずは専門医に相談することをおすすめします。
また、ただの生理痛だと思っていても、実は子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が隠れているということもあります。漢方薬ではなく、西洋薬などを使用したほうがいい場合もあるので、一度婦人科で検査をしてもらうと安心です。
生理痛には漢方薬を上手く利用しよう
漢方薬は、あまり即効性が期待できるものではありません。効果を焦る気持ちもあるかもしれませんが、根本的な体質を改善することで、生理痛以外にも様々な体の不調が改善されることもあります。じっくりと付き合っていけるといいですね。
また、生理痛の改善のためには、漢方薬に頼るだけでなく、日ごろの生活そのものを見直すことも重要です。規則正しい生活を心がけ、食事や睡眠などにも気をつけましょう。