不妊のときなどに処方されることがある当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)。妊娠を望む女性であれば、耳にしたことがある漢方薬かもしれませんね。しかしいったいどんな漢方薬なのか、妊娠しやすい体質に変われるのか、副作用はないのかなど、気になることも多いのではないでしょうか。そこで今回は、当帰芍薬散について、妊娠や不妊に対する効果や、副作用についてご紹介します。
当帰芍薬散とは?
漢方薬とは、いくつかの生薬を配合し、相互効果で効き目を促すものです。
当帰芍薬散は、血の巡りをよくする漢方薬で、冷え性や生理不順などの婦人科系の症状や、不妊症、更年期障害の改善などに用いられます。古くから多くの女性に用いられており、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」「加味逍遥散(かみしょうようさん)」と並んで、婦人科でよく使われる漢方薬の一つです。
疲れやすく色白で、腰や脚が冷えやすい人、虚弱体質な人に処方されます。
当帰芍薬散には、血を補う当帰(トウキ)や芍薬(シャクヤク)、血の巡りをよくする川芎(センキュウ)、水のめぐりを良くする蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ハクジュツ)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)の、6種類の生薬が配合されています(※1)。
当帰芍薬散にはどんな効果や効能があるの?
当帰芍薬散には、次のような症状に効果があるとされています(※1)。
● 月経不順、月経困難症
● 不妊症
● 更年期障害
● 子宮内膜症
● 頭痛、めまい
● 貧血、動悸
● むくみ
● しもやけ
● 肩こり
● 腰痛
● 妊娠中の諸症状(むくみ、腹痛など)
上記のように、当帰芍薬散は女性特有の問題に有効で、不妊症をはじめ、婦人科領域の症状に対して広く用いられています。
当帰芍薬散で妊娠しやすくなる?不妊症に効くの?
妊娠するためには排卵が起こり、タイミングよく受精する必要があります。この排卵が規則的に生じるためには、卵巣・子宮の血流を良くして環境を整えると同時に、ホルモンの分泌がバランスよく行われていなければなりません。
当帰芍薬散は、血を補い、血流をよくする漢方薬です。血の巡りがよくなることで、子宮や卵巣の環境が整う、ホルモンバランスが整う、排卵が促されるなどが期待でき、不妊症に処方されることがあるのです。
しかし、不妊症の原因は人それぞれ違います。血の巡りが悪くない人に当帰芍薬散を処方しても効果は期待できませんし、不妊症の裏に病気が隠れている場合は、西洋薬や手術で治療を行う必要があることもあります。
当帰芍薬散を服用することで不妊症がすぐに解消するというよりは、妊娠しやすい体づくりの手助けになると考えましょう。
当帰芍薬散の飲み方は?
当帰芍薬散は、体を温めるためにも、基本的にお湯で服用することをおすすめします。100ml程度のお湯に溶かして飲むのもいいですね。
また漢方薬は複数の生薬から成り立っていて、そのバランスによって効果を発揮するものです。胃のなかに何も入っていないときに服用することで、有効成分が他の食品に邪魔されずに効きやすくなります。
食前(食事の30分前)や食間(食後2時間後)に服用するのが基本ですが、当帰芍薬散は胃もたれを起こすことがあるため、胃腸が弱く、空腹時に服用すると胃の調子が悪くなるという人は、医師や薬剤師の指示のもと、食後に服用してもいいでしょう。
服用回数も、1日3回のこともあれば、朝夕の2回でいい場合など、人によって様々です。自分にとってベストな飲み方を、医師や薬剤師と相談しながらみつけてくださいね。
妊活中の当帰芍薬散に副作用はあるの?
漢方薬は比較的副作用が少ないものですが、体質に合わず副作用が出ることもあります。当帰芍薬散の副作用としては、胃の不快感や食欲不振、吐き気、下痢などの症状があげられます。
しばらく服用してみて体調が思わしくない場合は服用をやめ、主治医に相談しましょう。
また、他の薬を飲んでいる場合は、一緒に服用しても大丈夫かどうかを事前に確認しておきましょう。似たような効果がある薬を併用していると、副作用が現れやすくなります。
当帰芍薬散は市販されている?
当帰芍薬散は、ドラックストアやインターネット通販で購入することも可能です。
しかし、先にも説明したとおり、体質によっては効果が現れにくかったり、副作用が現れやすかったりする可能性があります。自己判断で購入する前に、まずは病院できちんと医師の処方を受けることをおすすめします。
漢方の取り扱いがある産婦人科なら、不妊治療や月経痛、月経不順など、様々な症状に処方してもらうことができますよ。
一度処方してもらい、体に合うことがわかったら、薬局やインターネットで購入するのもいいでしょう。
当帰芍薬散は体質に合わせて
血流を良くすることで、ホルモンバランスと子宮の環境を整える効果が期待できる当帰芍薬散は、妊娠しやすい身体作りに適した漢方薬といえます。
ただし、すべての人に良い効果が出るわけではありません。漢方は、それぞれの体質や症状から、その人に合った薬を処方します。かかりつけ医や漢方薬局などの専門家と相談し、当帰芍薬散が自分に合っているかどうか見極めてから試すことが大切です。