女性ならではの病気の悩みは尽きないものですが、特に女性器の問題はデリケートで、なかなか人に相談しづらいですよね。しかし、痛みなどの症状があれば、悪化する前に病院を受診することが大切ですよ。今回は、腟の入口の左右にある分泌腺が炎症を起こす「バルトリン腺炎」について、原因や症状、治療方法などをご説明します。
バルトリン腺炎とは?
「バルトリン腺」とは、外陰部の下1/3ほどの位置、腟の入口の左右両側にある分泌腺です。バルトリン腺は、女性が性的興奮を覚えたときに粘液を分泌し、性交をスムーズにする働きをしています。
このバルトリン腺に炎症が起きた状態を「バルトリン腺炎」といい、女性ホルモンの分泌が活発な性成熟期の女性によく見られる病気です。
バルトリン腺炎の原因は?
バルトリン腺から、大腸菌やブドウ球菌などの細菌が侵入・感染すると、バルトリン腺炎が起こります。
たとえば、手を洗っていない状態で外陰部をさわる、性交渉を行ったあとシャワーなどで外陰部を清潔にしないままにする、生理用ナプキンなどで外陰部が蒸れる、といったことが細菌侵入につながります(※1)。
バルトリン腺炎の症状は?
バルトリン腺は腟の入口の左右両側にありますが、バルトリン腺炎が起こるのは、多くの場合、左右どちらか一方のみです(※2)。
バルトリン腺炎が起きると、腟の入口が赤く球状に腫れて、ヒリヒリと焼けるように感じたり、痛みをともなったりします。陰部が圧迫されると痛みは強くなり、腫れが大きくなると歩いたり座ったりするのが困難になる人もいます。
炎症がひどいと膿(うみ)によってバルトリン腺が詰まり、分泌液がスムーズに排出されなくなります。その結果、バルトリン腺内に液体が溜まって腫れ、「バルトリン腺嚢胞(のうほう)」というしこりができることもあります。
バルトリン腺嚢胞ができた場合、しこり自体に触れてもほとんど痛みを感じません(※3)。しかし、そのまま放置してしまうと痛みが激しくなり、性交痛が生じることも。こぶのようにふくらんでくると、排尿や歩行がしづらくなるケースもあります(※1)。
思い当たる症状があれば、できるだけ早く婦人科を受診して検査を受けましょう。
バルトリン腺炎の治療方法は?薬が必要?
バルトリン腺炎の疑いで婦人科を受診すると、問診と視診を行ったあと、原因菌を特定するために綿棒で陰部の分泌物を採取し、検査を行います。
検査の結果、バルトリン腺炎の原因となる菌が判明したら、その菌に対して有効な抗菌薬を服用します。また、炎症を起こした部分の痛みが強い場合には、対症療法的に消炎剤や鎮痛剤を処方してもらえることもあります。
バルトリン腺に膿が溜まって嚢胞ができている場合には、切開をして小さな穴を開け、膿を出す処置が必要になります。何度もバルトリン腺嚢胞が再発する場合は、嚢胞の摘出手術を行うこともあります。
バルトリン腺炎は自然治癒する?漢方で自壊することもあるの?
前述のとおり、バルトリン腺炎を確実に治すには、炎症の原因となっている細菌に合わせた抗菌薬を処方してもらうのが一番です。
何も対処せずにそのままにしていると、炎症がひどくなって膿が溜まり、痛みが増してしまうことも多いので、自然治癒に期待しすぎず、すぐ婦人科を受診することをおすすめします。
なお、バルトリン腺炎を繰り返し経験した人のなかには、「漢方薬を飲みはじめたら数日で自壊して(自然に膿が出て)治った」というケースもあるようです。
病院での西洋医学的な治療と並行して、漢方薬を飲むことで体の免疫力を上げ、炎症を再発しにくい体づくりをするというのも一つの考え方です。バルトリン腺炎や嚢胞を繰り返す場合には、婦人科や漢方薬局などで相談してみるのも良いでしょう。
バルトリン腺炎を予防するには?
バルトリン腺は、尿や便の中にいる細菌に感染することも多いので、排尿・排便後は必ず前から後ろに向かって拭くようにしましょう。
普段からデリケートゾーンを清潔にしておくために、締めつけのない下着を選び、生理用のナプキンやおりものシートが汚れたらこまめに取り替える意識も持っておいてください。
また、性交渉をする前には男女ともに手や外陰部を清潔にし、腟内が充分に潤ってから挿入することも、感染予防のために大切です。
性交後は、すぐにシャワーで陰部を洗い流し、清潔な状態で下着を身につけるようにしてくださいね。
バルトリン腺炎が悪化する前に婦人科へ
普段、何もトラブルがないときにはあまり意識をしないかもしれませんが、女性器は複雑なつくりをしていて、とてもデリケートです。
外陰部に違和感があると、つい手でさわってしまったり、「そのうち治るかな」と思って放置してしまったりしがちですが、症状が悪化する前に婦人科を受診してくださいね。また、予防のために常にデリケートゾーンを清潔に保つことも心がけましょう。