出産が終わるとほっとしますが、ママの体力はまだまだ回復していないので、油断は禁物です。妊娠・出産を通じて、女性の体は思った以上にダメージを受けていて、様々なトラブルが続きます。産後の排尿トラブルもその一つです。今回は、産後の排尿痛や頻尿といった排尿トラブルについて、原因や対処法、尿道が痛いときは病院へ行くべきかなどをご説明します。
産後に排尿痛や頻尿などの排尿トラブルが起きるのはどうして?
産後の排尿トラブルには、骨盤底筋が関係しています。
妊娠中は赤ちゃんの成長に伴って子宮が大きくなり、骨盤を支える骨盤底筋に大きな負担がかかってしまいます。さらに出産時にも筋肉が引き伸ばされることで、産後の骨盤底筋は緩んだ状態です。
骨盤底筋は、尿の通り道である尿道を締めたり緩めたりするときに使われる筋肉です。骨盤底筋が緩むと、尿漏れや頻尿、排尿痛などの排尿トラブルにつながります。
出産による骨盤底筋の緩みは、産後少しずつ回復していき、それに合わせて排尿トラブルも軽減していきますが、しばらくの間は注意が必要です。
産後の頻尿の原因と対処法は?
日本泌尿器科学会によると、頻尿とは、普通に生活していて、昼間の排尿が8回以上ある状態です(※1)。特に、たくさんの水分を取っていないにもかかわらず、トイレに行く回数が増えたというときは注意しましょう。
産後の頻尿は、骨盤底筋が緩み、尿を我慢できなくなっていることが原因です。産後、時間が経つにつれて自然と改善されるものですが、早めに改善したいときは、骨盤底筋を鍛えましょう。骨盤底筋の鍛え方については、後から詳しくご説明します。
産後は赤ちゃんのお世話が忙しく、トイレに行く時間が取りにくいかもしれませんが、トイレを我慢しすぎると膀胱炎になる可能性もあります。尿意を感じたら、こまめにトイレに行くようにしてください。
産後の排尿痛・残尿感の原因と対処法は?
産後、排尿時に痛みがあったり、残尿感を感じたりする場合は、膀胱炎の疑いがあります。女性はもともと膀胱に雑菌が侵入しやすく、膀胱炎にもなりやすいのですが、産後は尿道が緩んでいるため、さらに膀胱炎になりやすくなります。
膀胱炎は治療をすればすぐに治りますが、治療が遅れると、腎盂腎炎になったり、再発を繰り返したりすることもあります。
症状が見られたら早めに出産をした産婦人科か泌尿器科を受診し、授乳中でも飲める薬を処方してもらいましょう。
また、膀胱炎の症状に、発熱や悪心、嘔吐、全身倦怠感を伴うときは、すでに腎盂腎炎が発症している可能性もあります。我慢せず、すぐに病院を受診してください。
産後の頻尿や排尿痛、残尿感を予防する方法は?
産後の排尿トラブルを予防するためには、骨盤底筋を早めに妊娠前の状態に戻すことが大切です。
骨盤底筋は、腟と肛門の間あたりにある筋肉です。この部分を鍛えることで、骨盤底筋が引き締められ、排尿トラブルを予防することができます。
産後に起こりやすい子宮脱の予防にも効果的なので、下記のような方法を試してみてください。
ただし、産後は子宮の回復を待つことがなによりも大切です。体に負担がかからないよう、1ヶ月健診で順調に回復していることが確認できてから取り組むようにしてください。
骨盤底筋を鍛える方法
1. 姿勢を正して立ち、下腹部に力を入れる
2. 下腹部の力を保ったまま、腟と肛門を5秒間かけて引き締める
3. 5秒間かけて、腟と肛門の力を緩める
ポイント
・座った姿勢や、寝たままの姿勢でも行える
・1日数セット、思い出したときにやってみる。毎日の習慣にすることが大切
・余裕が出てきたら、呼吸を意識する。力を入れるときに息を吸い、力を抜くときに息を吐く
産後に排尿痛や膀胱の違和感があるときは無理をせず
産後の女性の体は、自分が思っている以上にダメージを受けています。排尿トラブルがあると、気になって早く治したくなるかもしれませんが、産後しばらくは無理のない生活をすることが大切です。先にご紹介した体操を行うときも、体調をみて、無理のない範囲で行ってください。
また、医師に相談すると、授乳中でも飲める薬を処方してもらえたり、状態にあったアドバイスをもらえたりすることもあります。排尿トラブルは一人で悩まず、早めに病院を受診してくださいね。