産後に膀胱炎になりやすい原因は?授乳中の治療法は?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

赤ちゃんが産まれた後は、育児に家事と大忙し。すると、トイレに行く時間さえ惜しくなり、膀胱炎になってしまうママも多いようです。そこで今回は、産後の膀胱炎の原因と治療法、予防法についてご紹介します。

そもそも膀胱炎とは?

膀胱炎

膀胱炎とは、尿道からの細菌感染によって、膀胱内で炎症が起きる病気です。自覚症状としては、次のようなものがあります。

膀胱炎の症状

・排尿したすぐ後に、またトイレに行きたくなる
・排尿のたびに痛みを感じる
・排尿後に、尿がまだ膀胱に残っている感じがする
・尿が白く濁っている
・血尿が出る

慢性的な膀胱炎になっている場合、はっきりとした自覚症状がなく、腹部の不快感だけがある場合もあります。

産後に膀胱炎になりやすい原因は?

本

女性の尿道は男性の尿道と比べると短く、細菌が繁殖しやすい腟や肛門と近い位置にあるため、女性の方がもともと膀胱炎になりやすいとされています(※1)。

特に産後は、出産による疲れや育児ストレスにより免疫力が落ちているため細菌が増殖しやすく、膀胱炎になるリスクが高まってしまうのです。

他にも、悪露や会陰切開の跡をきちんとケアしていないと、細菌が繁殖して尿道に入り込む可能性があります。

また、出産によって膀胱に過度に負担がかかることで、一時的に尿が出にくくなり、膀胱に尿が溜まりやすくなります(※2)。

長時間、膀胱内に尿を溜めたままにしておくと、膀胱や尿道内の細菌を排出できず、炎症を引き起こす原因になります。赤ちゃんのお世話で忙しく、ついついトイレを我慢してしまうことも、産後のママが膀胱炎になりやすい原因のひとつです。

産後の膀胱炎の治療法は?授乳中はどうなる?

聴診器 病院

軽い膀胱炎の症状が出ただけであれば、水分補給をしっかり行い、トイレに行く回数を増やすなどの対策を行えば、自然に治ることがあります(※1)。

膀胱炎の症状が重い場合、抗生物質や抗菌剤で治療を行いますが、授乳中は母乳に影響のない薬を処方してもらえるので、安心してくださいね。

産後の膀胱炎はよくあることだとはいえ、放っておくと症状が悪化し、育児に支障が出てしまうこともあります。膀胱炎の症状が現れたら、我慢せず、早めに産婦人科や泌尿器科を受診しましょう。

産後の膀胱炎を予防するには?

トイレ

赤ちゃんが生まれると、育児だけでなく家事の量も増えるので何かと忙しくなりますが、膀胱炎を予防するためには、次の3つを意識して生活してくださいね。

尿道周辺を清潔に保つ

尿道周辺を清潔に保つために、排尿や排便の後は、前から後ろに向かって拭くようにしてください。また、悪露は産褥パッドやナプキンをこまめに交換して対処しましょう。

排便時はウォシュレットを利用して、尿道周辺をきれいにするのもおすすめです。

トイレを我慢しない

どれだけ忙しくても、トイレを我慢しないように心がけましょう。

眠っていた赤ちゃんが起きて泣いたとしても、トイレの間くらいであれば、そのままにしていて問題ありません。ママが健康でいることで赤ちゃんも元気でいられると思い、自分の体のケアも大切にしてくださいね。

水分補給をしっかり行う

頻繁に排尿することで膀胱や尿道内の細菌を排出できるので、水分をたくさん摂り、どんどん排尿することを意識しましょう。

水分は一度に大量にとるのではなく、「コップ一杯程度の水を授乳前や入浴後に飲む」というように、こまめにとるようにしてください。

体を冷やさない

体の冷えも、膀胱炎の原因になります。肌寒いと感じたら、すぐに上着をもう一枚羽織ったり、ひざかけを使ったりしましょう。

また、温かい飲み物を飲むのもいいでしょう。授乳中に飲める麦茶やローズヒップティーがおすすめです。

性行為前後の行動を改める

性行為によって性器周辺にいる細菌が広がり、尿道口から侵入することがあります。性行為を行う前後は、外陰部に温かいシャワーを優しく当て、きれいにしましょう。

清潔にしようとするあまり、ボディタオルで強く洗ってしまうと、外陰部を傷つける可能性があるので注意してください。また、性行為後はすぐに排尿するように習慣づけると、膀胱炎の原因となる菌が流れ出やすいですよ。

ストレスや疲れを解消させる

パートナーや家族に協力してもらい、定期的に自分の好きなことができる時間を作ってみましょう。たった10分でもそういった時間があるだけで、体も心もずいぶん楽になり、免疫力がアップして膀胱炎予防につながりますよ。

産後の膀胱炎には早めの治療を

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産後すぐは、赤ちゃんのお世話があり、猫の手も借りたくなるほど忙しくなります。そんなときに、「膀胱炎かも?」くらいの軽い症状が出たら、治療をついつい後回しにしてしまうかもしれません。

しかし、膀胱炎は放置すると他の病気へと発展する可能性がありますし、癖にもなりやすいものです。ママが元気でいることは、赤ちゃんにとっても大切なことなので、パパや家族に赤ちゃんを任せ、医師に診てもらう時間を作ってくださいね。

膀胱炎に限らず、産後はマイナートラブルが起きやすい時期です。体の異変を感じたら、早め早めの対処を心がけましょう。

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