VBAC(ブイバック)とは?出産の条件は?リスクはあるの?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

ドラマの影響や、人気タレントが第2子の出産方法に選んだことで、にわかに聞かれるようになった「VBAC(ブイバック)」という言葉。これは、帝王切開での出産経験がある人が、次の出産で経腟分娩を選択し、無事に出産することをいいます。前回は帝王切開で出産したけれど、次回は経腟分娩を希望している、という人もいますよね。そこで今回は、VBACとはどんなものか、出産の条件やリスクなどについて説明します。

VBAC(ブイバック)とは?

第二子の誕生を待ちわびる家族
帝王切開での出産経験のある妊婦が経腟分娩に挑戦し、無事に出産することをVBAC(ブイバック)といいます。

あわせてよく聞かれる「TOLAC(トーラック)」は、帝王切開での出産経験のある妊婦が経腟分娩にチャレンジすることをいいます。つまり、TOLACの成功がVBACということになります。

ちなみに、VBACは英語の「vaginal birth after cesarean delivery(帝王切開の後の普通分娩)」の頭文字を取ったものです。

VBACのメリットって?

出産直後のママ
帝王切開ではなく経腟分娩で出産するので、出血量が少なくて済みます。そのため、輸血の使用量が減ったり、入院期間が短くなったりします。また、感染や分娩後血栓症の発生率も少ないという報告があります(※1)。

また、経腟分娩で出産したほうが、次回の妊娠時、前置胎盤や癒着胎盤の発生が増加しにくいという報告もあります(※2)。

さらに帝王切開より経腟分娩のほうが、体力の回復が早いことが多いようです。上の子がいる場合は特に、早く退院できるのはうれしいですよね。

VBACとならず、失敗したときのリスクはあるの?

リスクの積み木
TOLACの成功(=VBAC)率は60〜80%とされていますが、個々の症例について確実に予測する方法はありません(※1)。

不成功のときは、緊急帝王切開が必要になります。

ごくまれですが、子宮破裂が起きた場合は子宮を摘出することもあります。その場合、赤ちゃんに呼吸や循環(血流)、脳や脊髄といったなどの中枢神経に影響を及ぼし、後遺症が残るケースもあります(※1)。

子宮が破裂する確率は0.4〜0.5%で、予定帝王切開と比べると約2倍となります。子宮破裂は非常にまれなものですが、発症するとママや赤ちゃんの命に影響を与えることもあるため、注意が必要です(子宮にある手術の縫合痕が開いてしまうケースでは0〜0.01%と非常にわずかではありますが、ママの命に影響が及ぶケースもあります)(※1)。

一方、赤ちゃんの死亡率は0.5〜0.6%で、予定帝王切開と比べると約1.7倍という報告がありますが、高い確率ではありません(※1)。

かつては、帝王切開での出産経験のある妊婦さんが、次の妊娠時に帝王切開で出産する割合は20〜30%程度でした。それが、2010年には89%にまで上昇しています(※1)。

しかし、帝王切開後は血栓症や、腸や膀胱といった臓器のリスクがあること、そして、帝王切開での出産を2回行うと次の妊娠時に子宮破裂のリスクがさらに高まることから、アメリカでは経腟分娩が見直されています(※1)。

挑戦するための条件ってあるの?

チェックリスト
わずかですが子宮が破裂する危険があるため、分娩方法は家族や医師とよく相談し、慎重に決める必要があります。

帝王切開での出産経験のある妊婦さんで、経腟分娩に挑戦できるのは下記の人とされています(※2)。

1. 帝王切開での出産が1回で、かつ、子宮の下の部分を横に切る「下部横切開」であること
2. 児頭骨盤不均衡がないこと
3. 帝王切開以外で子宮にメスをいれた痕がない、または子宮破裂の経験がないこと
4. 分娩中に、医師が継続して監視可能で、緊急帝王切開ができること
5. 緊急帝王切開のための麻酔科医やスタッフがいること

過去の帝王切開が、子宮に縦向きにメスを入れる縦切開だったとしても、メスを入れた痕が子宮の上の部位(体部)に及んでいなければ経腟分娩の成功率は横切開の場合と変わらないといわれていますが、実際にはTOLACを行うことは少ないです(※1)。

VBACになりにくい人は?

取り上げられた赤ちゃん
最初の帝王切開が難産によるものだった場合は、成功率が低いという報告があります。そのほか、高齢妊娠、妊娠40週以降、母体肥満、妊娠高血圧症候群を合併している、前回の妊娠から期間が短い、胎児の体重が重いといったことも、成功率を下げる要因とされています(※1)。

VBACになりやすい人も

帝王切開を経験した妊婦さんが経腟分娩での出産に挑戦している際、陣痛誘発や促進が不要だった場合は成功しやすいといわれています。そのほか、経腟分娩での出産が順調に進行して、12時間以内で出産する場合は、VBACとなりやすいと報告されています(※1)。

VBACはメリットもデメリットも

赤ちゃんとママ、お兄ちゃん
帝王切開より経腟分娩での出産のほうが体力の回復も早いとなれば、選択肢に加えたいという人もいますよね。

とはいえ、帝王切開の経験があるママの全てが、経腟分娩での出産にチャレンジできるわけではありません。ママや赤ちゃんへの様々なリスクが高くなる可能性もあります。

分娩方法を決める際は、今後の妊娠の予定、家族との相談内容、そしてママの体調やこれまでの出産や病歴をしっかりと医師に伝え、十分に相談して決めてくださいね。

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