帯状疱疹は水疱瘡(みずぼうそう)と同じ水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気です。妊婦さんが水疱瘡にかかると、生まれてくる赤ちゃんに何らかの異常が見られることがあるため、帯状疱疹もお腹の赤ちゃんに何か悪影響があるのではと心配される女性は多いでしょう。そこで今回は、妊娠中に帯状疱疹を発症しても慌てないように、帯状疱疹が妊婦さんにうつるのか、発症したらお腹の赤ちゃんにどのような影響があるのかを紹介します。
帯状疱疹の原因と症状は?
帯状疱疹とは、水疱瘡(水痘)と同じ水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる病気です。このウイルスに初めて感染すると水疱瘡になりますが、水疱瘡が治ってもウイルスは完全には消えず、後根神経節という部位に潜伏し続けます。
その後、何らかの理由で免疫が落ちると水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化して帯状疱疹を発症します(※1)。
帯状疱疹の症状は?
帯状疱疹を発症すると、まず痛みや知覚異常、あねるいはかゆみが体の片側に現れます。それが数日から1週間続き、やがて虫さされのような赤い発疹が現れます。この時期には、微熱やリンパ節の腫れ、頭痛といった症状がみられることもあります。
発疹が出てしばらくすると、真ん中にくぼみのある水ぶくれが出てきます。水ぶくれは初めは透明ですが、次第に黄色くなり、6〜8日で破れてただれたり潰瘍になったりします。発疹が出始めてから1週間程度は発疹や水ぶくれの数が増えたり、範囲が拡大し続けます。
しかし、その後は回復に向かい、約2週間で水ぶくれはかさぶたになり、約3週間で肌から剥がれ落ちていきます(※2)。
帯状疱疹になりやすい人は?
帯状疱疹は免疫が落ちると発症する病気なので誰でも発症する可能性がありますが、特に次のような人たちは注意が必要です(※3)。
● エイズ、白血病、悪性リンパ腫などの病気を患っている人
● お年寄り
● 20歳代、50歳代の人(年代的に水痘・帯状疱疹ウイルスの免疫が低いためと考えられる)
● 疲れが溜まっている人
帯状疱疹は妊婦にうつるの?
帯状疱疹は、もともと体の中にいる水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化することで発症する病気のため、人から人へはうつりません。
ただし、約95%の妊婦さんは子供のころに水痘・帯状疱疹ウイルスに感染しているため、多くの女性は妊娠中に帯状疱疹を発症する可能性を持っています(※4)。
帯状疱疹の妊婦を検査する方法は?
妊婦さんの帯状疱疹の診断には特別な検査は必要なく、症状を見れば帯状疱疹かどうかが判別できます。
ただし、場合によっては虫刺されや接触皮膚炎、単純ヘルペスなどの病気と症状が似ていることがあるため検査が必要になります。具体的には、帯状疱疹の発疹の一部を取って顕微鏡で観察したり、ウイルス抗原の検出や血清診断などの検査を行います(※5)。
帯状疱疹を妊婦が発症したらお腹の赤ちゃんにうつるの?
帯状疱疹の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスは、免疫のない妊婦さんが感染すると水疱瘡を発症し、お腹の赤ちゃんにもこのウイルスが感染します。その結果、生まれてきた赤ちゃんは先天性水痘症候群を患っている場合があります。
しかし、帯状疱疹を発症した妊婦さんから水痘・帯状疱疹ウイルスがお腹の赤ちゃんに感染するという報告はないので、妊娠中に帯状疱疹になってしまったとしても問題ありません(※4)。
帯状疱疹を妊婦が発症したときの治療法は?
一般的に帯状疱疹を発症したときは、抗ウイルス薬のアシクロビルやバラシクロビル、ファムシクロビルによる治療をできるだけ早く行います。重症化してしまった場合は、入院してアシクロビルやビダラビンといった抗ウイルス薬による点滴治療が必要になります(※6)。
また部分的に治療をする場合は、帯状疱疹を発症したばかりであれば非ステロイド抗炎症薬を使い、水ぶくれが出始めたら細菌による二次感染を防ぐために化膿疾患外用薬、潰瘍になってしまったら潰瘍治療薬を使います(※6)。
妊娠中に帯状疱疹を発症した場合の治療法としては、上記の薬のうち、アシクロビルとバラシクロビルであれば問題はないとされています。それ以外については妊婦さんへの影響がはっきりしていないため、妊娠中に帯状疱疹になった際は、医師の指示に従って治療を行ってください(※7)。
帯状疱疹を妊婦が発症したら病院へ行こう
帯状疱疹に妊婦さんがなっても、お腹の赤ちゃんに悪影響はありません。しかし、発症すると病原体である水痘・帯状疱疹ウイルスを人へうつしてしまう可能性があり、うつされた人が免疫を持っていなかった場合は水疱瘡を発症することがあります。
そのため、帯状疱疹を発症したらすぐに病院へ行って治療してもらいましょう。疲れがきっかけで発症することも多いので、ゆっくり心と体を休めてくださいね。