GBS感染症とは?妊婦の検査方法は?新生児への感染は予防できる?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

妊娠後期に差し掛かると、多くの妊婦さんが「GBS検査」を経験します。新生児に影響を及ぼす可能性があるGBS感染症を起こさないように、出産前に妊婦さんがGBSを保有しているか知っておく必要があるためです。今回はGBSとはどういった細菌なのか、GBS検査ではどのようなことをするのか、感染したときの症状や新生児への感染予防方法についてまとめました。

GBSとは?

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GBSは「Group B Streptococcus」の略で、「B群溶血性連鎖球菌」という細菌です。GBSそのものは非常に生命力が弱い菌で、普段は腟や直腸、膀胱、肛門の周りなどにいますが、害を与えることはほとんどありません。

一般的に、妊婦さんの10~30%から検出されます(※1)。

妊娠中のGBSの検査方法は?

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GBSの検査は、妊娠35~37週あたりの妊婦健診の際に行われます。綿棒でおりものを採取して診断し、約1週間で結果が出ます。

妊娠初期や中期にも検査をした方が良いのではないかと思うかもしれませんが、GBSは卵膜に入っている赤ちゃんには悪影響を与えないと考えられているため、GBSを目的とした検査は必要ないとされています。

また、妊娠初期や中期にGBS陽性だとわかっても、基本的に治療は行いません。治療を行ってもまたB型溶血性連鎖球菌に感染することもあるからです。

妊娠後期に再度検査を受けて、GBS感染が陽性であることを確認してから治療が行われます。

妊婦のGBS検査が陽性だったら赤ちゃんに影響があるの?

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健康な人にとってGBSは、病気などを起こすリスクがほとんどない、病原性の弱い細菌です。保有していたとしても、普段は問題ありません。

ただし、GBS抗体を持っていない妊婦さんがGBS検査で陽性になったときには、分娩時に腟内を通って出てくる赤ちゃんに感染するリスクがあります。

もし、赤ちゃんに感染してしまうと、新生児GBS感染症と呼ばれる病気にかかり、非常に危険な状態になる可能性があります。妊娠中の検査で、母体がGBS陽性と判明したら、赤ちゃんに感染させない対策を取らなければなりません。

新生児GBS感染症とは?感染する原因は?

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新生児GBS感染症とは、母体の産道にひそんでいるGBSが赤ちゃんの目や鼻、口などから体内に入り、肺炎や敗血症、髄膜炎などを引き起こすものです。

なかでも生後1週間以内に発症する「早発型」にかかると、短時間で症状が重くなり、最悪の場合、赤ちゃんが死にいたることがあります。命が助かっても、仮死状態やショック状態になったり、呼吸障害を併発したりすることがあります。

お腹のなかの赤ちゃんは卵膜によって守られていますが、破水するとその卵膜が破れます。その際に、GBSが赤ちゃんに触れて感染する可能性が高まります。つまり、GBSが赤ちゃんに感染する可能性があるのは、経腟分娩中や陣痛開始前に破水したタイミングといえます。

妊婦のGBS感染症が新生児にうつる確率は?

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妊婦さん自身がGBSに感染しているからといって、必ずしも赤ちゃんに感染するわけではありません。

GBSが赤ちゃんに感染するのは、GBSを保有している妊婦さんの約50%前後といわれています。さらに、GBS感染症を発症するのは、そのなかの約1%です(※2)。

特に、下記のような状況の妊婦さんから生まれる赤ちゃんは、感染のリスクが高まるとされています(※1)。

  • 早産
  • 破水後12時間以上の経過
  • 分娩時の妊婦さんの発熱
  • 前回の出産で赤ちゃんがGBS感染症になった

新生児GBS感染症を予防するには?

点滴

妊婦さんからGBSを持っていた場合、赤ちゃんがGBS感染症にかかるリスクを防ぐために、予防の処置がとられます。

陣痛が始まったら、妊婦さんの静脈内にペニシリン系の抗菌薬を点滴で投与します。分娩の4時間以上前から投与することで感染予防の効果が期待できるとされています(※3)。

ただしこの予防法は100%の効果が期待できるわけではなく、点滴を投与してもまれに赤ちゃんがGBS感染してしまうケースがあることを知っておきましょう。

また、破水や陣痛のない予定帝王切開では、赤ちゃんへ感染する心配がないため、抗菌薬の投与は行われません。

新生児にGBSが感染してしまったら?

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新生児がGBS感染症にかかってしまったとき、生後1週間以内に発症する早発型と、それ以降に発症する遅発型で治療法が異なります。

早発型であれば入院中に発病することになり、抗生物質の投与などですぐに対処されます。

一方、遅発型の場合は病院外で発症することになるため、発見の遅れに注意が必要です。呼吸数が多くなる、呼吸をするときに胸がへこむ(陥没呼吸)、発熱、嘔吐、風邪のような症状などが見られたときには、すぐに出産を行った産婦人科に連絡するようにしてください。

妊婦健診でGBS感染症の検査をしよう

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GBSは、分娩時に対処をすれば赤ちゃんへの感染を防げる可能性が高いものです。安心して赤ちゃんを産むために、妊婦健診は忘れずに受けるようにしましょう。

また、GBSを妊婦さんが保菌していても、赤ちゃんに感染しない確率は高いので、検査で陽性が出たとしても落ち込みすぎないでください。不安なことがあれば出産前に医師に相談するようにしましょう。

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