「胆道閉鎖症」という病気をご存じですか?何らかの理由で「胆管」が欠損して胆汁が流れない病気ですが、治療が遅れてしまうと、命に危険が及ぶ可能性があります。それでは、どのような症状が現れたら、胆道閉鎖症の疑いがあるのでしょうか?今回は胆道閉鎖症について、原因や症状、診断方法、治療方法などをご紹介します。
赤ちゃんに起こる胆道閉鎖症とは?
体内で脂肪の消化吸収を助ける働きを持つ「胆汁」という消化液があります。
胆汁は肝臓で作られた後、胆嚢(たんのう)に溜められます。そして、食事をしたときに、胆管を通って十二指腸へ送られて、脂肪の消化や吸収に作用します。
この胆管が何らかの原因で形成されず、胆汁が十二指腸に送られなくなる病気が胆道閉鎖症です。
十二指腸へ送られずに行き場がなくなった胆汁は肝臓に溜まり、黄疸を引き起こします。日本小児外科学会によると、胆汁が肝臓に溜まることで、肝臓の組織が壊され、線維が硬くなる胆汁性肝硬変症になってしまうと、肝移植などをしないと治ることがありません(※1)。
胆道閉鎖症は、約1万人に1人の割合で発症します。難病情報センターによると、男女比率ではおよそ「男:女=0.6:1」で、女の子の方が発症しやすい病気です(※2)。
先天性胆道閉鎖症の原因は?
胆道閉鎖症の原因は、はっきりとは分かっていないのが現状です。
胎内で作られた胆管が,ウイルス感染など何らかの原因で炎症を起こし、閉塞するのではないかという説もありますが、確定はしていません(※2)。
胆道閉鎖症の症状は?便でわかる?
胆道閉鎖症の特徴的な症状としては、黄疸と便の色があります。赤ちゃんに以下の様子が見られたら、早急に病院を受診してください。
黄疸
胆汁に含まれるビリルビンという黄色い色素が体内に増えることで、赤ちゃんの皮膚や白目が黄色くなる症状が現れます。
新生児期の赤ちゃんのほとんどが生理的な黄疸を発症しますが、通常は2週間程度で治まります。この胆道閉鎖症では、生後2週間を過ぎても黄疸が消えないことが多いです(※3)。
便や尿の色
胆道閉鎖症では、便の色がクリーム色やレモン色、灰白色に変化する、尿がウーロン茶のような褐色になるといった症状が現れます。
母子健康手帳には、うんちの色を見分けるための「便色カード」が付いているので、便の色を見分けるときにぜひ活用してみてください。赤ちゃんのうんちの色が便色カードの1~3番の色に近かった場合は、できるだけ早めに医療機関を受診するようにしましょう(※2)。
胆道閉鎖症の診断方法は?
胆道閉鎖症の診断は、血液検査や尿検査、超音波検査、十二指腸液検査、肝胆道シンチグラムなどを、必要に応じて組み合わせて行います。
十二指腸液検査とは、十二指腸まで細いチューブを入れ、十二指腸液を採取し、胆汁があるかどうかを調べるものです。肝胆道シンチグラムは、胆汁中の放射性活性物質を使って、胆汁の流出状況を調べる検査です(※1)。
胆道閉鎖症の治療法は?
胆道閉鎖症と診断された場合、外科的な治療が行われます。まずは、胆汁流出を目的にした胆管と腸管をつなぐ手術や、肝臓そのものと腸管をつなぐ手術が行われるのが一般的です。
手術の後には、利胆剤(胆汁の流出を促す薬)などが処方されます。手術をしても黄疸が改善しない場合や、肝臓の機能が低下した状態が続く場合には、肝臓移植手術が行われることもあります。
手術後は、胆管炎や門脈圧亢進症などの合併症が起きることがあるので、難病情報センターは生涯にわたって定期通院することを勧めています(※2)。
胆道閉鎖症の生存率は?
胆道閉鎖症は、どれだけ早期に治療するかによって予後が変わります。
国立成育医療研究センターの報告によると、胆道閉鎖症でよく行われる、肝臓と腸をつなぐ「葛西手術」を行った後、20年生存する確率は、生後60日以内に手術をした場合で43%、61~90日以内で33%、91~120日以内で25%、121~150日以内で7%、151日以降ではほぼ0%です(※4)。
黄疸やうんち・尿の色で不安があるときは、病院を受診して、問題がないかどうかを確認しておきましょう。生後1ヶ月健診のときに、不安な点を医師に尋ねることもできます。
胆道閉鎖症を早期発見するために
胆道閉鎖症は、早期発見による治療が赤ちゃんの生存率に影響する病気なので、うんちや尿の色、黄疸で不安になることがあったら、すぐに医師に診てもらうようにしましょう。
胆道閉鎖症は発症数が少ない病気ですが、かかることはないと決めてかからず、普段から様子を気にしてあげてください。赤ちゃんの体の変化に注意を払うことが、赤ちゃんの健康を守ることにつながります。