ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法とは?注射の効果や副作用、費用は?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

不妊治療で行われる排卵誘発法のひとつに、「ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法」があります。不妊治療を受けている人は、名前を聞いたことはあっても、具体的な作用については知らないこともあるかもしれません。そこで今回は、ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法について、効果や副作用、注射を打つタイミングや流れ、費用などをまとめました。

ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法とは?

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ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法とは、排卵障害による月経異常や不妊がある女性に対して、卵胞の成長と排卵を注射で促す治療法です。

ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)は、脳下垂体から分泌されるホルモンの一種で、「卵胞刺激ホルモン(FSH)」と「黄体形成ホルモン(LH)」の2つがあります。これらは、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの産生・分泌に大きく関わっています。

また、卵胞刺激ホルモン(FSH)は卵胞の発育を促し、黄体形成ホルモン(LH)は排卵を誘発するなど、排卵に至るまでのプロセスでゴナドトロピンが重要な役割を果たします。

この2種類のゴナドトロピンの作用を、hMG製剤とhCG製剤の注射を打つことで補い、排卵を誘発するのが、ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法です。

ゴナドトロピン療法のhMG製剤とhCG製剤とは?

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ゴナドトロピン療法で使われるhMG製剤とhCG製剤には、それぞれ次の特徴があります(※1)。

hMG製剤

hMG製剤は、閉経後の女性の尿から抽出・精製された薬で、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の両方を含みます。製品によって、2つのホルモンの含有比率は異なります。

精製hMG製剤(FSH製剤)は、hMG製剤からLH成分を取り除いたもので、FSH作用を持っているため、投与すると卵胞の発育が促されます。

hCG製剤

hCG製剤は、妊婦の尿から精製されたものです。

FSH作用があるhMG製剤を投与し、充分な大きさまで卵胞が発育したあとに、LH作用を持つhCG製剤を投与し、排卵を誘発します。

ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法の対象は?

診察 聴診器

ゴナドトロピン療法は、主に次のケースの治療法として行われます(※1)。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは、卵胞の発育が遅いだけでなく、ある程度の大きさになっても排卵されず、卵巣内に多数の卵胞がたまってしまう病気です。

PCOSの患者で、妊娠の希望がある場合、まずクロミフェン療法という排卵誘発法が選択されます。しかし、クロミフェン療法で効果が得られなかった場合、LHの含有量が少ないFSH製剤を用いたゴナドトロピン療法が行われることがあります。

下表のとおり、ゴナドトロピン療法は、クロミフェン療法と比べて妊娠率が高いとされています(※2)。

治療法 クロミフェン療法 ゴナドトロピン療法
排卵率 第1度無月経:60~70%
無排卵周期症:80~90%
70~80%
妊娠率 25~30% 30~40%

無月経・排卵障害による不妊

無月経や排卵障害が原因で排卵がうまくいかなかったり、それが原因で不妊が見られる場合、ゴナドトロピン療法を実施することがあります。

hMG製剤を投与している期間は、超音波検査で卵胞の発育状況を観察します。一般に、卵胞の直径が18mm程度まで大きくなったところで、卵胞が充分に成熟したと判断し、hCG製剤を投与して排卵を促します。

ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法の注射のタイミングは?

階段 ステップ 進行 スケジュール 段取り 

ゴナドトロピン療法では、hMG製剤とhCG製剤、2種類の注射を使います。打つタイミングや投与量は、症例によって異なりますが、ここでは例として、無月経や排卵障害が見られる場合の治療法をご紹介します。

まず、生理または消退出血があった3~6日目に、hMG製剤を筋肉注射または皮下注射で投与します。初回は少量から始めます。

そのあと、連日にわたって同じ量を投与する方法が一般的ですが、経過観察をしながら投与量を減らしたり増やしたり、または1日おきに投与することもあります。

先述のとおり、卵胞の直径が約18mmまで大きくなったらhCG製剤を投与するのが一般的です。

種類によっては自分で注射できるタイプもあり、通院の負担を軽減できるというメリットがあります。

ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法に副作用はある?

副作用 薬 虫眼鏡 

ゴナドトロピン療法はクロミフェン療法と比べて妊娠率が高いという長所がある一方で、流産率も高いという懸念点もあります(※2)。

副作用としては、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」が起きる場合があります。これは、排卵誘発剤などによって卵胞が過剰に刺激され、卵巣が膨れあがることで様々な症状を引き起こす病気です。

また、ゴナドトロピン療法で2つ以上の排卵が起こった場合、双子や三つ子などの「多胎妊娠」が起こりやすいともいわれています。多胎妊娠の場合、妊娠高血圧症候群などの合併症や、流産・早産リスクが高まるため、治療の際には注意が必要です。

ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法の費用は?

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ゴナドトロピン療法の費用は保険が適用されるため、病院によっても異なりますが、1周期あたり2,000~3,000円程度かかります。

しかし、ゴナドトロピン療法に加え、体外受精などの「高度生殖医療」を行う場合、自費診療となるので、治療費は自己負担になります。

ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法は不妊治療の一つ

カップル 夫婦 妊活 家族

ゴナドトロピン療法は、排卵率や妊娠率が比較的高い治療法のため、無月経や排卵障害による不妊に悩んでいる人は、チャレンジする価値があるかもしれません。

一定期間、注射を続けなければならないという大変さはありますが、早期の妊娠・出産を目指す場合には、排卵誘発法のひとつとして医師に相談してみてください。

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