不妊治療を行うなかで、排卵誘発剤の「クロミッド」を処方されている人もいるかもしれません。特にタイミング法での妊娠を目指している場合、クロミッドを服用したあとの排卵日をできるだけ正確につかみたいですよね。そこで今回は、クロミッドを服用して何日後に排卵が起こるのか、タイミングをつかむ方法についてご説明します。
クロミッドの排卵効果とは?
クロミッドは、「クロミフェンクエン酸塩(クロミフェン)」を主成分とした排卵誘発剤の一つで、錠剤の飲み薬です。
軽い排卵障害が起きているときや、排卵が起こったり起こらなかったりと不安定で、タイミング法での妊娠が難しいときなどに処方されます。
クロミッドの成分であるクロミフェンは、投与されたあと、脳の視床下部に働きかけます。そうすると、脳は女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」が不足していると認識し、その結果、「黄体化ホルモン(LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の分泌が促進されます(※1)。
LHとFSHの作用により、卵胞の成長が促され、クロミッドを飲み終わったあと数日後に排卵が起こる、という仕組みです。
なお、クロミッドによる排卵誘発効果は約60~70%とされます(※2)。
クロミッドの排卵日は服用してから何日後?
一般的には、クロミッドは生理5日目頃から1日1~2錠(50~100mg)を5日間服用し、服用終了後7~10日ほど経つと排卵が起こるとされます(※1,3)。
ただし、排卵のタイミングは個人の体質や排卵に必要な機能の状態によって異なるので、様々な方法で見極める必要があります。その方法については、後ほど詳しくご説明します。
クロミッドで排卵が早まる・遅れる?
前述のとおり、「クロミッドを飲み終わったあと、7~10日ほど経つと排卵が起こる」のが一般的とされますが、人によっては、それより排卵が早まったり、遅れたりすることもあります。
「前回の周期と比べて、今回は排卵が早まったようで、婦人科で卵胞チェックを受けに行ったときにはすでに排卵してしまっていた」というケースもあるようです。
排卵のタイミングが早まったり遅くなったりした場合、クロミッドを飲む量を調整することもあるので、毎回かかりつけの医師と相談しましょう。
クロミッドの排卵タイミングを知る方法は?
クロミッドで排卵効果が得られたからといって、いつでも妊娠できるわけではありません。精子と卵子の寿命や、受精できる時間の長さを考えると、最も妊娠しやすい性交のタイミングは「排卵日の1~2日前」です。
妊娠の可能性を高めるためには、主に次の4つの方法で排卵日を推測し、妊娠しやすいタイミングを見極める必要があります。
1. 排卵検査薬
排卵前には、黄体化ホルモン(LH)が大量に分泌される「LHサージ」と呼ばれる現象が起こります。
排卵検査薬を使って、尿のなかに放出されたLHの数値を検出することで、LHサージのタイミングをある程度つかむことができます。排卵検査薬が陽性反応を示したタイミングで夫婦生活を持つと、妊娠する可能性が高くなります。
2. 超音波卵胞計測(卵胞チェック)
不妊治療中の場合、クロミッド服用後に数回、卵子を包む卵胞の大きさを婦人科でチェックし、排卵日を推測することもあります。
これは「超音波卵胞計測」という方法で、腟に器具を入れて超音波で卵胞の大きさを測ります。排卵直前の卵胞は約20mmまで発育するということがわかっているため、卵胞のサイズを測ればあとどれくらいで排卵が起こりそうか、判断することができます(※1)。
3. 基礎体温
基礎体温も、排卵のタイミングを測る目安になります。基礎体温のグラフをつけていると、一度ガクッと体温が下がり、低温期から高温期に移るタイミングがありますが、この前後数日の間に排卵が起こります。
ただし、排卵の状態が安定していない、といった理由でクロミッドを処方されている女性の場合、基礎体温が安定していないことも多いので、排卵検査薬や超音波卵胞計測と比べると正確な判断は難しいと考えてください。
4. 排卵痛
人にもよりますが、排卵するときに卵巣付近にチクチクとした痛みを感じることがあり、これを排卵痛と呼びます。排卵痛がある場合、「そろそろ排卵が起こる時期だな」と何となく推測することはできます。
ただし、排卵痛の程度や感じる時期には個人差があり、あくまでも感覚的なものなので、ここで紹介した4つの方法のなかでは最も正確性が低くなります。
クロミッドで排卵が起こらないときは?
クロミッドの服用を続けてもなかなか排卵が起こらない場合、長期間飲み続けることは推奨されていません。
クロミッドに含まれるクロミフェンという成分には、女性ホルモンのエストロゲンに抵抗する作用があるため、長期にわたって服用すると、子宮頸管粘液が十分に分泌されなくなったり、受精卵を受け止める子宮内膜が発育しなくなったりして、妊娠しづらくなってしまう恐れがあるからです(※1)。
また、クロミッドによって卵巣が過度に刺激されると、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」という副作用が起き、下腹部痛などの症状が現れることもあるので注意が必要です(※2)。
クロミッドで排卵効果が得られなかったときは、かかりつけの婦人科医と相談のうえ、より適切な治療法を探っていきましょう。
一般的に、クロミッドを「5日間飲んだあとに休薬する」というサイクルを3回繰り返しても排卵が起こらない場合は、クロミッドの服用を中止し、ほかの治療法を試すこともあります(※2)。
クロミッドの排卵日予測は医師と相談を
クロミッドを使った排卵誘発法は、決められたタイミング・期間に薬を飲むだけ、と簡単なように聞こえますが、妊娠の可能性を上げるためには排卵日を推測することも大切です。
排卵日をより正確につかみ、ベストなタイミングで夫婦生活を持つために、クロミッドとあわせて排卵検査薬を使用したり、パートナーとよく話し合って理解を得たりと、できる限りのことはしておきたいですね。