不妊治療でよく使われる排卵誘発剤に「クロミッド」があります。クロミッドは飲み薬で、比較的手軽に使うことができますが、効果はどれくらいあるのでしょうか?今回はクロミッドの効果について、排卵が起きる確率や、クロミッドで排卵しないときの治療法などをご説明します。
クロミッドとは?
クロミッドは錠剤タイプの排卵誘発剤で、「クロミフェンクエン酸塩(クロミフェン)」を主成分としています。
軽い排卵障害が起こっている場合や、排卵していても排卵日が不安定で、タイミング法での妊娠が難しい場合などに処方されることがあります。
クロミッドを飲むと、主成分のクロミフェンが脳の視床下部に作用します。そうすると、視床下部は女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」が足りないと認識します。その信号が視床下部から脳下垂体へと伝わることで、「黄体化ホルモン(LH)」と「卵胞刺激ホルモン(FSH)」の分泌が刺激されます。
LHとFSHの刺激によって、卵胞の発育と排卵が促され、クロミッドを一定期間飲んだ7~10日後に排卵が起こります(※1,2)。
クロミッドの効果は?
クロミッドは使う目的にもよりますが、一般的に、生理が始まって5日目から、1日1~2錠を5日間、毎日連続で飲み続けます(※3)。
そうすると、生理がこない「無月経」の人は約60~70%、生理のような出血はあるけれど排卵が起こっていない「無排卵周期症」の人は約80~90%の確率で排卵が起きるとされています(※1,2)。
また、クロミッドは飲み終えた7~10日後に排卵することが多いものですが、クロミッドを飲みきった直後に排卵する人もいます。
もともと無排卵の人も、排卵リズムが不安定だった人も、夫婦生活のタイミングを取りやすくなりますが、クロミッドで治療を行った人の妊娠率は、約25~30%です(※1,2)。
なおクロミッドは、注射するタイプの排卵誘発剤と比べると体への負担が少ないといわれていますが、まれに顔のほてりや頭痛、吐き気、食欲不振といった副作用が見られることもあります。
クロミッドと効果が近い薬は?
クロミッドと同じく、クロミフェンクエン酸塩を主成分とする排卵誘発剤として、「セロフェン」や「フェミロン」があります。
また、含まれる成分は異なりますが、脳の視床下部や下垂体に作用して、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を促すという効果においては、「セキソビット」という薬もクロミッドと同じです。
セキソビットに含まれるシクロフェニルという成分は、クロミッドのクロミフェンと比べると排卵誘発効果が弱いものです。ただし、クロミッドに見られる副作用がほとんどないというメリットがあります(※4)。
クロミッドで排卵しないときの治療法は?
クロミッドは、重い排卵障害に対しては効果が見られないこともあります。
一般的に、「クロミッドを生理5日目から5日間飲んで、やめる」という治療を3回(約3ヶ月)繰り返しても排卵が起こらない場合、クロミッドの使用を中止することとされています(※3)。
クロミッドによる治療で効果が得られなかった場合は、「ゴナドトロピン(hMG-hCG)療法」を検討することもあります。これは、hMG注射(またはFSH注射)で卵胞の発育を促し、そのあとhCG注射を打って排卵を誘発する治療法です。
ゴナドトロピン療法による排卵率は約70~80%、妊娠率は約30~40%と、クロミッドによる治療と比べて高い効果を得ることができるとされます(※1)。
その一方で、流産率も高く、排卵誘発剤の刺激で卵巣が腫れる「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」などの副作用が起こるリスクもあります(※1)。
クロミッドを飲んでも排卵しなかった場合の治療法については、こうしたメリット・デメリットも踏まえたうえで医師と相談しながら検討しましょう。
クロミッドの効果は人それぞれ
クロミッドを飲むことで、比較的高い確率で排卵を起こすことができるとされています。ただし、排卵障害の程度によっては、何周期か服用を続けても排卵しないこともあります。
クロミッドによる治療で効果が得られなかった場合、ゴナドトロピン療法で排卵誘発する方法もあります。自分の体調や不妊治療にかけられる時間・コストなどもふまえてパートナーや医師と相談し、自分にあった不妊治療に取り組めるといいですね。