「人工授精」は、より受精・着床しやすいタイミングで行うのが成功の鍵です。妊娠率を上げるには、排卵前と排卵後、どちらのタイミングで人工授精を行ったら良いのでしょうか。今回は、人工授精を行う時期について、よりタイミングを合わせやすくする方法も含めてご説明します。
人工授精はタイミング法の次のステップ?
人工授精とは、女性の子宮に直接精子を注入することで、卵子との受精の場にたどり着く精子の数を増やし、妊娠の確率を上げる方法です。
タイミング法を何度か試してみて妊娠に至らなかった場合や、性交や射精がうまくいかない、精子の運動率が低い、女性の頸管粘液に問題があるといった場合に検討されます(※1)。
精子を注入するのは「人工」的ですが、そのあと精子が卵管に進み、受精、着床するプロセスには手を加えないので、自然妊娠に近い治療法といえます。
そのため人工授精による妊娠率を高めるためには、自然妊娠と同様、卵子と受精しやすいタイミングで精子を子宮内に送りこむことが大切です。
人工授精のタイミングは?排卵後?排卵前?
結論からいうと、人工授精を行うベストなタイミングは、「排卵が起きる少し前から排卵直後まで」とされています(※1)。
卵子の寿命は排卵後約1日(24時間)しかありませんが、精子の寿命は女性の体内に入ってから2~3日ほど続きます。
そのため、「排卵される少し前のタイミングで精子を注入し、女性の体内で卵子を待つ」のが最も受精できる確率が高く、遅くとも排卵が起きてすぐなど、卵子の寿命がなくなる前に精子を注入する必要があります。
そのためには、できるだけ正確に排卵日を予測することが大切です。
人工授精は排卵のタイミングが成功の鍵
前述のとおり、人工授精では排卵日を正確に知ることが不可欠です。
排卵日を予測する方法は、次のとおりいくつかあります(※1)。どの方法を行うかについては、かかりつけの婦人科医と相談しましょう。
基礎体温測定
排卵は、低温期の最後にガクッと体温が落ち、高温期に移る2~3日の間に起こります。基礎体温を測って記録しておくと、このタイミングがわかりやすくなります。
頸管粘液検査
排卵日が近づくと、頸管粘液(おりもの)の量が増え、伸びが良くなります。
尿中LH測定
排卵検査薬で、排卵直前に分泌が急増する「LH(黄体形成ホルモン)」の尿中濃度を測り、陽性反応が出れば排卵が近いことがわかります。
超音波卵胞計測
排卵直前の卵胞は直径20mmほどになるため、超音波で卵胞のサイズを測ると、あとどれくらいで排卵するかを予測できます。
人工授精のタイミングは排卵誘発剤を使うと調整しやすい?
自然周期で排卵が起こるのを待ち、人工授精をすることもありますが、生理不順などが原因で排卵のタイミングがつかみづらい場合は、クロミッドなどの「排卵誘発剤」を使うこともあります。
排卵誘発剤を使うと、卵巣が刺激されて成熟した卵子が排卵される確率が上がるだけでなく、排卵日をある程度調整することができます(※1,2)。
排卵誘発剤を併用すると、人工授精の妊娠率が上がりますが、副作用として卵巣が腫れてしまうこともあるため、慎重に検討する必要があります(※1,2)。
人工授精をやめるタイミングは?
日本不妊医学会によると、人工授精で妊娠したカップルのうち80%は7回目以内の治療で妊娠しています(※2)。
目安として、人工授精を6回繰り返しても妊娠しない場合、体外受精や顕微授精などに切り替えた方が良いとされています(※2)。
ただし、不妊の原因がはっきりわかっておらず、女性が35歳以上の場合には、それよりも早くステップアップすることを医師から勧められることもあります(※1)。
人工授精を始める時点で、何回までチャレンジするか、妊娠に至らなかった場合にはどのように治療を続けるかなど、医師やパートナーとよく話し合っておきたいですね。
人工授精のタイミングは排卵前~排卵後すぐ
人工授精による妊娠率を上げるためには、まず排卵日を正確に推測することが大切です。自分で基礎体温をつけるよう医師から指示があったり、排卵誘発剤を処方されたりすることもあると思うので、わからないことがあれば事前に相談しておくと安心です。
また、人工授精でサポートするのは「受精」までです。そのあと受精卵が着床しやすい体の環境を作るため、食事や睡眠、運動などに気を配って健康的な生活を送りたいですね。