女性なら誰しも、「女性ホルモン」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?しかし、多くの人は女性ホルモンの具体的な働きまでは知らないようです。そこで今回は、女性ホルモンの働きや整え方、増やせるのかどうかについてご説明します。
そもそも女性ホルモンとは?
ホルモンとは体の働きを調整する物質の総称で、女性の体やライフサイクルに大きな影響を与える2つのホルモンを「女性ホルモン」といいます(※1)。
女性ホルモンは別名「卵巣ホルモン」とも呼ばれ、「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があります。
この2つの女性ホルモンは協調しあったり、ときにはお互いに作用して効果を打ち消し合ったりもします。女性ホルモンのバランスが保たれることが、女性の健康には欠かせません。
女性ホルモンの働きとは?
女性ホルモンには様々な働きがありますが、ここでは妊娠・出産に関係する働きを中心にご説明します。
エストロゲン
卵胞(卵子を育てるための袋)の発育のために作られるので卵胞ホルモンとも呼ばれます。
思春期に乳房を発育させたり、妊娠時は母乳を運ぶ乳管上皮を増殖させたりします。
また、子宮内膜を増殖させて厚くしたり、頚管粘液の分泌量をふやして精子を侵入しやすくするなどの働きがあります。妊娠すると、子宮を発育させたり、産道になる頚管を成熟させたりします。
プロゲステロン
排卵した卵胞は黄体となり、その黄体で作られるため黄体ホルモンとも呼ばれます。
妊娠時に母乳を作る乳腺腺房を増殖させたり、子宮筋の収縮を抑えたり毛細血管を生い繁らせたりして、着床した子宮内膜を維持させる働きがあります。
エストロゲンによって厚くなった子宮内膜を、着床に適した状態にするのはプロゲステロンの働きによるものです。
女性ホルモンはいつから分泌されるの?
女性の一生は、性機能の働きから胎生期、小児期、思春期、性成熟期、更年期、老年期の6期にわけられます(※1)。
●胎生期:ママのお腹にいる時期。すで一生分の卵胞を作り出しています。
● 小児期:生後から8〜9歳ごろ。小児期の後半にはエストロゲンの分泌が始まります。
● 思春期:8〜9歳から18歳ごろ。プロゲステロンの分泌量が緩やかに増え、ホルモンの変動によって第二次性徴が引き起こされます。乳房が発育したり、初経を迎えたりします。
● 性成熟期:19歳ごろから45歳ごろ。19歳ごろに女性ホルモンの分泌量はピークを迎え、排卵周期が確立し、妊娠・出産が可能となります。その後、45歳ごろまでは女性ホルモンの分泌量は横ばいが続きます。
● 更年期:45歳ごろから55歳ごろ。卵巣機能の低下にともなって女性ホルモンの分泌量が減少し、更年期障害が引き起こされます。やがて、閉経を迎えます。
● 老年期:閉経後の55歳以降。女性ホルモンはほとんど分泌されないため、骨量や皮脂の分泌量の低下が見られるようになります。
女性ホルモンのバランスが崩れると?
2つの女性ホルモンは協調しあったり効果を打ち消し合ったりして作用するため、ホルモンバランスが崩れると、心身に不調が現れます。
ホルモンバランスが崩れることで引き起こされる病気や不調の代表例に、月経異常、月経前症候群(PMS)、更年期障害があります(※1)。
月経異常
月経異常とは、経血量や生理の期間、生理の周期に異常をきたすことの総称です(※1)。
周期や期間が短くなったり長くなったり、経血量が少なかったり多かったり、いろいろな症状が現れます。
月経前症候群(PMS)
生理の3〜10日前になると心身に不調をきたし生理がくると症状が治まるのが、月経前症候群の特徴です(※1)。
イライラ、抑うつ状態といった精神症状や、胸の張り、頭痛、むくみなどの身体症状が現れます。
更年期障害
卵巣の機能低下に伴ってホルモンバランスが大きく変わり、心身に不調をきたします。
そのほか、エストロゲンが減少することで悪玉コレステロールが増えたり、骨量が減ったり、コラーゲンが作られにくくなったりといった変化も見られます。
女性ホルモンのバランスが崩れる原因とは?
女性ホルモンのバランスが崩れる原因は、病気などの異常を除くと、ストレス・不規則な生活・加齢の3つと言われていますが、はっきりとは解明されていません。
ただ、自律神経のバランスの乱れには、ストレスや生活習慣の乱れが大きく影響していることが報告されています(※2)。
自律神経は体温を調整したり、運動時に心臓の鼓動を早くして全身に大量の血液を送ったりします。そして、ホルモンの分泌量をコントロールするのも、自律神経の大切な働きです。
つまり、ストレスや不摂生な生活によって自律神経が乱れることでホルモンの分泌量が不安定になり、ホルモンバランスが崩れると考えられます。
女性ホルモンのバランスを整えるには?
女性ホルモンのバランスを整えるには、自律神経を整えることが大切です。
そのためには規則正しい生活を心がけ、意識的にストレスを解消するようにしましょう(※2)。
下記に、気軽にできる、おすすめのストレス解消法をご紹介します。
● 散歩やストレッチなどをして体を動かす
● ゆっくり入浴して、疲れをとる
● ペットや植物を育てる
● 趣味をもつ
趣味を通して人と交流したり、家族や友人とレジャーやスポーツを楽しんだりするのも効果的です。楽しいと感じ、リラックできる時間を積極的に作るようにしましょう。
女性ホルモンの乱れは薬で治療する?
女性ホルモンの分泌が減少したり欠乏したり、バランスが崩れることでなんらかの異常をきたしたときは、欠乏したホルモンを薬剤で補うホルモン補充療法を行うこともあります(※1)。
黄体機能不全の場合
クロミフェンという薬を服用することで、脳の視床下部にプロゲステロンの分泌を促します。そのほか、黄体ホルモンを薬剤で補う、黄体補充療法を行うこともあります。
月経異常
排卵周期が確立すると、自然と症状が改善されることほとんどです。出血が多いときは、エストロゲン・プロゲステロン合剤というホルモン剤を服用することもあります。
月経前症候群(PMS)
日常生活に支障をきたすほと症状が重い場合は、エストロゲン・プロゲステロン合剤の低用量経口避妊薬(低用量ピル)を服用することがあります。
卵胞の発育と排卵が抑えられるため生理の症状自体が軽くなり、月経前症候群の症状も改善することが一般的です。
更年期障害
卵巣の機能低下に伴って減少したエストロゲンを、薬を服用して補います。
更年期障害でよく見られるホットフラッシュ(のぼせ・ほてり・発汗)には、このホルモン補充療法が効果を発揮します(※1)。
これまでの病歴などによっては、ホルモンを補充できない人もいます。女性ホルモンのバランスの崩れからくる症状があるときは、婦人科を受診して医師と治療法について相談してください。
女性ホルモンは増やせる?食べ物は?
体内で女性ホルモンのエストロゲンと似た働きをすることから、大豆イソフラボンは植物性エストロゲンとも呼ばれています(※3)。
大豆イソフラボンは大豆や納豆、豆腐、油揚げ、みそなどに多く含まれています。手軽に手に入る食材ばかりなので、積極的に食卓に取り入れるようにしましょう。
女性ホルモンを増やすサプリはある?
女性ホルモンを増やすホルモン剤は、基本的に医師の処方がないと入手できません。
市販されているサプリは、女性ホルモンと同じ働きをする栄養素を配合したものか、女性ホルモンのバランスが崩れることで引き起こされる症状を改善するものが一般的です。
代表的なものに、大豆イソフラボンに葉酸を加えた商品、漢方の生薬にカルシムやビタミンを配合したものがあります(※4,5,6)。
女性ホルモンのバランスを整えて健康的に
女性ホルモンは、女性の体やライフサイクルに欠かせない存在です。
しかし、単純に分泌量が多ければよいわけではなく、2つの女性ホルモンのバランスが取れていることが大切です。規則正しい生活と積極的なストレス発散を心がけて女性ホルモンのバランスを整えて、健康的な日々を過ごしましょう。
月経異常などいつもと異なる症状が見られる場合は、すみやかに婦人科を受診して適切な治療を受けてくださいね。