月経前症候群(PMS)とは?吐き気などの症状は薬で治療できる?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

生理前に、日常生活に支障が出るほどの強い不快症状に悩まされている…という場合、それは「月経前症候群(PMS)」かもしれません。つらい症状は、できるだけ早く改善したいですよね。今回は月経前症候群の原因や治療法、予防のために心がけたいことなどをご説明します。

月経前症候群(PMS)とは?

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「月経前症候群(PMS)」は、生理前に起こる精神的・身体的トラブルのことで、生理が始まると症状がなくなるのが特徴です。

いつから症状を感じるかには個人差があり、排卵期から生理開始まで体調不良が続く女性もいれば、生理開始の直前に少しだけ症状がある人もいます。

50~80%の女性が、生理前に何かしらの不快症状を感じているともいわれていますが、治療を希望する、もしくは治療が必要となる人は3~7%ほどというデータもあります(※1)。

なかには、自分の症状が月経前症候群によるものであると認識しておらず、我慢してやり過ごしている人もいるかもしれません。

月経前症候群の原因は?

月経前症候群(PMS)の原因は、まだはっきりと解明されていませんが、主に次の2つの説が唱えられています(※1)。

女性ホルモン(プロゲステロン)の不足

基礎体温表 グラフ 女性ホルモン 卵胞期

女性ホルモンには、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があり、時期によって分泌量が増えたり減ったりすることで、生理周期を作り出しています。

上のグラフのとおり、排卵から生理(月経)開始までの「黄体期」後半には、プロゲステロンの分泌量が低下します。このプロゲステロンの低下が、月経前症候群を引き起こすという説もあります。

しかしなかには黄体期の前半(排卵後すぐ)から症状が現れる人もいるので、この説に異論を唱える研究者もおり、はっきりとは分かっていません。

幸せホルモン(セロトニン)の不足

「幸せホルモン」と呼ばれることもあるセロトニンが少ないと、月経前症候群につながるという説もあります。

セロトニンには、精神状態を安定させる働きなどがありますが、食生活などが原因でセロトニンが不足してしまうと、抑うつ感や疲れやすさなど、精神的な不快症状を引き起こすと考えられています。

月経前症候群の症状は?吐き気がある?

女性 ストレス つらい

月経前症候群の症状は、個人差が大きいですが、次のとおり精神的・身体的なものが挙げられます(※2)。

精神的な症状

イライラ、攻撃的になる、集中力の低下、不眠、抑うつ、眠気など

身体的な症状

腹痛、腰痛、頭痛、吐き気、めまい、食欲不振、だるさ、むくみ、お腹・乳房の張り、肌荒れなど

月経前症候群の治療法は?薬を使うの?

漢方薬

生理前の症状がひどくて仕事に行けない、電車を途中で降りてしまう、家事が手につかない、など日常生活にも影響が出ているようであれば、月経前症候群の可能性が高いので、早めに婦人科を受診することをおすすめします。

治療内容は症状や程度によって異なりますが、主に次のような方法で月経前症候群の改善に取り組むことになります(※1)。

症状の記録、生活習慣の改善をする

病院や医師の方針にもよりますが、まずは薬を使わず、毎日の基礎体温や体調、症状などを日記に記録するよう勧められることが多くあります。

自分の体のリズムを記録し、客観的に把握することが、心身の状態をコントロールすることにつながり、月経前症候群の症状が改善されることもよくあります。

また、規則正しい食事や毎日の適度な運動、リラクゼーションによるストレス発散など、生活習慣を整えることも症状の緩和につながることがあります。

低用量ピルを飲む

低用量ピルには、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが配合されているため、服用することでホルモンバランスが整い、月経前症候群の症状が軽くなることが期待できます。

ただし、低用量ピルを飲んでいるあいだは排卵が止まるため、妊娠を希望する場合はほかの治療法を医師に相談しましょう。

症状を和らげる薬を飲む

対症療法として、腹痛や頭痛などの痛みには鎮痛剤、精神的な症状に対しては精神安定剤などが処方されることもあります。

漢方薬を飲む

医薬品よりも効き目や副作用が穏やかな漢方薬が処方されることもあります。月経前症候群の症状を緩和するために処方される漢方薬の例として、次のようなものがあります(※3)。

● 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
● 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
● 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
● 加味逍遥散(かみしょうようさん)

漢方薬は個人の症状や体質に合わせて飲むことが大切なので、はじめてのときは婦人科の医師か薬局の漢方医に相談したうえで使用しましょう。

月経前症候群の症状を我慢しないで

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月経前症候群がなぜ起こるのか、原因がはっきりとわかっていないということもあり、症状をすぐに、そして完全になくすのはなかなか難しいことです。しかし、生活改善や薬による治療で体調が楽になることもあるので、つらいときはひとりで我慢せず、婦人科で相談してみてくださいね。

また、基礎体温や生理周期、体調などを毎日記録する習慣をつけることで、「そろそろPMSが出る時期だから、無理はしないでおこう」など、自分の心身とうまく付き合っていけるようになるかもしれません。スマートフォンの生理アプリなどを利用してみるのもおすすめですよ。

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