子宮内膜が厚いと妊娠の可能性は高くなる?原因は?生理が来ない?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

子宮内膜の厚さには個人差がありますが、厚すぎる場合は子宮内膜増殖症という病気の可能性もあるので注意が必要です。今回は、子宮内膜が厚いと妊娠の可能性が高くなるのか、厚くなる原因、厚いと生理が来なくなるのかなどについてご説明します。

子宮内膜とは?

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子宮内膜とは、子宮の内側を覆っている粘膜のことです。機能層と基底層という2つの層から成り立っており、機能層は生理周期が月経期に入ると剥がれ落ち、経血として流れ出ていきます。これがいわゆる生理です。一方、基底層は月経期になっても剥がれ落ちず、そのまま残ります。

子宮内膜の厚さは、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの作用によって変化します。生理が終わるとエストロゲンの作用で少しずつ厚みが増していき、排卵が終わるとエストロゲンだけでなくプロゲステロンの作用も加わることで、ある程度まで厚くなります。

妊娠が成立しないとエストロゲンとプロゲステロンの分泌が減り、子宮内膜の機能層が剥がれ落ちます。そうして再び、エストロゲンやプロゲステロンの作用で子宮内膜の厚みは増していきます(※1)。

一方、受精が成功すると、受精卵は子宮内膜に付着し、膜の中へ取り込まれます。これが着床です。その後、妊娠が進むと、子宮内膜は「脱落膜」と呼ばれる胎盤の一部となり、分娩時に胎盤と一緒に体の外に排出されます(※2)。

子宮内膜の厚い・厚くないの基準は?

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子宮内膜の厚い・厚くないの基準は明確には決まっていません。

そもそも前述のとおり、子宮内膜は生理周期の中で厚くなったり、薄くなったりを繰り返します。特に生理の始まりから排卵までの間には1〜10mm前後まで厚さが変化することが知られています(※1)。

また、日本産科婦人科学会の報告によれば、生理周期全体を通して、子宮内膜の厚さは平均8mm以上が一般的なようです(※3)。

さらに、後ほど説明する子宮内膜増殖症を検査するときは、子宮内膜の厚さが閉経前の女性では15mm未満、閉経後の女性では6mm未満であれば異常はないと判断します(※4)。

子宮内膜が厚い原因は?

子宮内膜が厚くなったり、薄くなったりするのは、エストロゲンとプロゲステロンがバランスよく作用しているからです。

ところが、以下のような理由によって、エストロゲンの作用がプロゲステロンよりも大きくなったり、反対にプロゲステロンの作用がエストロゲンよりも弱くなってしまうことがあり、その場合、子宮内膜が厚くなりすぎることがあります(※1)。

● 肥満
● 経口避妊薬などのエストロゲン製剤の長期使用
● 無排卵周期症

子宮内膜が厚いと病気?不正出血が起きる?

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子宮内膜の厚さが、閉経前の女性は15mm以上、閉経後の女性は6mm以上あると、子宮内膜増殖症という病気の可能性が疑われます(※4)。

子宮内膜増殖症とは、子宮内膜の細胞が増えすぎてしまう病気で、40歳代の女性でよく起こります。子宮内膜増殖症になると、子宮内膜が厚くなり、性器から不正出血したり、排卵が起こらなくなったりします。

子宮内膜増殖症のうち、通常の子宮内膜増殖症と診断された場合、まずは経過観察を行うことが多いようです。しかし、病理検査で「子宮内膜異型増殖症」と診断された場合には、悪性化のリスクが上昇するため注意する必要があります(※1)。

子宮内膜増殖症と診断されたら、医師の指示に従いましょう。

子宮内膜が厚いと生理が来ない?

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前述の子宮内膜増殖症になってしまうと、無排卵周期症といって、生理のような出血はあるにもかかわらず、排卵が起きない状態になってしまうことがあります。

無排卵周期症は、生理の周期や持続期間の異常の原因にもなり、人によっては生理周期が通常よりも長くなったり、生理が全く来なくなったりすることがあります。そのため、子宮内膜が厚すぎることで生理が来なくなることはありえるでしょう。

生理周期の乱れが続いたり、生理が数ヶ月来なかったりする場合は、病院を受診して検査を受けるようにしてください。

子宮内膜が厚いと妊娠の可能性が高くなる?

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子宮内膜が厚いと妊娠の可能性が高いかどうかについては、まだはっきりとした結論が出ていません。しかし、子宮内膜が薄いと妊娠率が下がるという報告は多くされています。

例えば、日本産科婦人科学会の報告によれば、22歳から45歳までの女性あわせて205人を調べたところ、子宮内膜が7mm以上ある女性の妊娠率はおよそ50%、6mm未満の女性の妊娠率は0%だったとされています(※3)。

そのため、子宮内膜の厚さがある程度あった方が、妊娠する可能性が高いといえそうです。

子宮内膜が厚いのは更年期の女性に多い?

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更年期とは、45〜55歳頃の期間のことです。この期間はエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が減っていきますが、相対的にはエストロゲンの方が多いため、子宮内膜が増殖すると考えられます。

更年期の女性が子宮内膜増殖症にかかりやすいことからも、更年期の女性は子宮内膜が厚くなる傾向にあると言えるでしょう(※1)。

子宮内膜が厚いのは注意が必要なことも

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妊娠のしやすさという観点からは、子宮内膜の厚さは薄いよりも厚い方が望ましいと考えられます。しかし、厚すぎる場合は子宮内膜増殖症の可能性があるため、注意が必要です。

子宮内膜の厚さを自分でコントロールするのは難しいので、定期的に病院で検診を受けて、異常が起きたらすぐに対応できるようにしておきたいですね。

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