子宮内膜の厚さの正常値は?排卵前にどのくらい厚さになる?

監修医師 産婦人科医 浅川 恭行
浅川 恭行 1993年東邦大学医学部卒業。2001年同大学院医学研究科卒業後、東邦大学医学部助手、東邦大学医療センター大橋病院講師を経て、2010年より医療法人晧慈会浅川産婦人科へ。東邦大学医療センター大橋病院客... 監修記事一覧へ

妊娠するためには、子宮の内側を覆う「子宮内膜」に十分な厚さがあることが不可欠です。しかし、なんらかの原因で子宮内膜が厚くなりすぎたり、薄くなりすぎたりしてしまうこともあります。それは一体なぜなのでしょうか?また、妊娠しやすい子宮内膜の厚さはどれくらいなのでしょうか?今回は、子宮内膜の厚さについて、生理周期による変化や、妊娠しやすい正常な厚さなどをご説明します。

子宮内膜の厚さは生理周期で変化するの?

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子宮内膜とは、子宮の内側の壁を覆っている粘膜です。生理時に剥がれ落ちる「機能層」と、生理時にも剥がれ落ちずに残る「基底層」の2層から成り立っており、生理周期にあわせて変化します。

子宮内膜の厚さは、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つの女性ホルモンの分泌量によって変わります。

生理が終わると、卵巣の中にある卵胞がエストロゲンを分泌することによって、子宮内膜が増殖し、だんだん厚くなっていきます。

排卵を終えた卵胞が黄体という組織に変わると、今度はエストロゲンだけでなくプロゲステロンの分泌も増えます。プロゲステロンは、受精卵が着床しやすいよう、子宮内膜の厚い状態を維持します。

しかし、妊娠が成立しないと、子宮内膜の機能層は剥がれ落ち、経血として流れ出ます。これが生理です。残された基底層が次の妊娠に向けた準備を始めます。

子宮内膜の厚さに正常値はあるの?

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前述のとおり、生理周期の中で子宮内膜は厚くなったり剥がれ落ちたりします。排卵が近づくにつれて子宮内膜の機能層の細胞が増殖し、厚さを増していき、排卵前後の時期は約10~15mmの厚さになります(※1)。

妊娠しやすい子宮内膜の厚さとして、正常値や基準がはっきり決まっているわけではありませんが、受精卵が着床するためには最低でも6~8mmほどの厚さが必要といわれています(※2)。

子宮内膜の厚さを測る検査があるの?

女性が受けられる不妊検査の一つに、超音波(エコー)による「卵胞径計測検査」があります。

エコーで卵胞の大きさを測り、およその排卵日を予測すると同時に、子宮内膜の厚さも知ることができます。排卵時期がわかれば、より妊娠しやすいタイミングで性交を行えるので、不妊治療の「タイミング法」でも、この検査を行うことがあります。

ただし、卵胞の発育や子宮内膜の増殖のスピードには個人差があり、「卵胞径計測検査」だけでは正確な排卵日を予測できない可能性もあるので、「尿中LH検査」などと組み合わせることもあります(※3)。

子宮内膜の厚さが足りないと妊娠できない?

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子宮内膜の厚さと妊娠率の関係については、国内外で様々な報告があります。一般的には、妊娠が成立するためには子宮内膜にある一定以上の厚さが必要である、とされています(※2)。

2008年に日本産科婦人科学会で報告された研究データによると、子宮内膜の厚さが8mm以上ある場合は妊娠率が約90%、7mm以上であれば約51%以上の妊娠率がありました(※2)。

ただし、子宮内膜の厚さは妊娠の成立に関係する一つの要素なので、子宮内膜が厚ければ必ず妊娠できるというわけではありません。

子宮内膜の厚さが不十分な原因と治療法は?

子宮内膜が薄くなる原因として、まだはっきりとわかっていない部分も多いですが、流産や子宮外妊娠、子宮内膜ポリープなどで「子宮内容除去術」を行うことで、子宮内膜が薄くなる可能性が指摘されています(※2)。

この場合、子宮内膜を厚くするための有効な治療法がないのが現状です。

そのほか、不妊治療でクロミフェンなどの排卵誘発剤を使い続けることで、子宮内膜が薄くなる副作用が現れることもあります(※1)。

クロミフェンの副作用で子宮内膜が一時的に薄くなっていると考えられる場合は、別の排卵誘発剤に切り替えることで改善が期待できます。

子宮内膜の厚さはあればあるほど良いの?

妊娠するためには子宮内膜は厚ければ厚いほどよい、と思うかもしれません。しかし、子宮内膜があまりに厚すぎる場合、「子宮内膜増殖症」という病気の可能性があります。

子宮内膜増殖症とは、その名のとおり子宮内膜が過剰に増殖してしまう病気です。一般的に、閉経を迎えると子宮内膜は薄くなりますが、子宮内膜が厚いと子宮内膜増殖症が疑われます(※2)。

子宮内膜増殖症の約80%は自然に治るので経過観察となりますが、一部は「子宮体がん」に進行する恐れがあり、手術が必要になることもあります(※4)。

最もよく見られるのが40代の女性です。閉経前の生理不順や、更年期の不正出血があった場合は婦人科で検査を受けましょう。

子宮内膜の厚さは検査で調べましょう

子宮内膜が適度な厚さであることは、妊娠にとって大切なことですが、自分自身で厚さをコントロールできるわけではありません。もし不妊で悩んでいる場合、子宮内膜が薄すぎることが影響している可能性もあるので、婦人科でエコー検査について相談してみましょう。

逆に、子宮内膜増殖症を発症すると、子宮内膜が過剰に厚くなってしまいます。症状として、閉経前後に生理不順や不正出血がある場合、婦人科で診てもらってください。

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