妊娠中に子宮の中を満たし、赤ちゃんを守っている「羊水」。赤ちゃんが羊水を飲み込んだり吐き出したりすることで肺の成長が促されています。しかし、出産予定日が近づいてくると羊水が濁る「羊水混濁」が起こることがあり、万が一赤ちゃんが飲み込むとさまざまな悪影響をもたらすことがあります。そもそも、なぜ「羊水が濁る」のでしょうか?今回は、羊水混濁の原因や胎児への影響、羊水が濁ったときの対応などについてご説明します。
羊水混濁とは?
![妊婦 臨月 家 5135039](https://assets-hack.192abc.com/uploads/2017/11/08172243/416abc9dbc2f703c32a2d91871a72bf3_1659979363-480x320.jpg)
羊水混濁とは、羊水に赤ちゃんのうんち(胎便)が混じって濁ってしまうことをいいます。
正常な羊水は透明または白っぽい色をしていますが、赤ちゃんの胎便は黄色か緑色をしているので、混じり合うことで濁って見えるのです。
羊水混濁は、妊娠38週より早い時期ではあまり見られず、妊娠42週以降になると約30%に見られます(※1)。
破水したときに羊水の色が濁っていることで、羊水混濁が判明することがほとんどです。
羊水混濁の原因は?
![妊婦 仰向け 眠る 本 寝る](https://assets-hack.192abc.com/uploads/2015/01/16124815/dabb83c0ef438577405d1a34c29cb2da-480x320.jpg)
通常、赤ちゃんは子宮の中でうんちをすることはなく、出産後0〜2日目頃に、はじめて胎便を排泄します。
しかし、十分に消化管が成熟した赤ちゃんの場合、一時的に臍帯(へその緒)が圧迫されたりすると、神経が刺激されて腸の動きが活発になり、子宮の中にいる間に胎便が出ることもあると考えられています(※1)。
以前は、赤ちゃんの低酸素状態やアシドーシス(体液が酸性に傾きすぎる状態)が羊水混濁の原因ともいわれていましたが、最近は腸への刺激によるものであるという考え方が有力です。
羊水混濁の赤ちゃんへの影響は?
![分娩直後 赤ちゃん 22008813](https://assets-hack.192abc.com/uploads/2017/11/08171731/48f84903c4b730ff44e374f6ef47e5f0_1659979051-480x320.jpg)
出産時は羊水混濁が起こりやすく、正期産の出産のうち約10%に見られます(※2)。
羊水混濁が起きていても、分娩監視装置をしばらくの間設置し、胎児の心拍数に異常が見られなければ、分娩中は特別な処置が必要ないことがほとんどです(※1)。
しかし、羊水混濁が起きたときに赤ちゃんが低酸素状態などに陥っていると、濁った羊水を吸いこんで、まれに「胎便吸引症候群(MAS)」を起こすことがあります(※1,2)。
この場合、胎便が肺に入り込んで気道が塞がれて呼吸困難になったり、胎便に含まれる成分が原因で肺炎を引き起こしたりする恐れがあります(※1,2,3)。
羊水混濁の治療法はある?
![未熟児 NICU 保育器](https://assets-hack.192abc.com/uploads/2016/10/06100502/13e330e999b68e78cbcab8668188c7d5_1475748301-480x320.jpg)
先述のとおり、羊水混濁が見られても胎児の心拍が正常であれば、それほど心配はいりません。
ただし、分娩の前後に羊水や胎児の気道の中に胎便がある場合、吸いこんでしまうリスクはゼロではありません。
そこで、日本産科婦人科学会の産科ガイドラインによると、胎便吸引症候群を防ぐため、赤ちゃんが生まれたあとに鼻や口についた分泌物をガーゼで拭う処置をすることもあります(※1)。
万が一、産後に赤ちゃんが胎便吸引症候群を起こした場合は、低酸素状態に陥るのを防ぐため、酸素投与や呼吸の補助(人工換気)など適切な処置が必要になることもあります。
症状が軽度であれば、産後に数時間、保育器の中で酸素投与などをしながら経過観察をするだけで済むこともあります(※3)。
羊水混濁は予防できるの?
![分娩室](https://assets-hack.192abc.com/uploads/2016/12/12181449/106f2a11cd79ab933b39d5a4e4789521_1492020887-480x320.jpg)
妊婦健診でのエコー検査だけでは、羊水が濁っているかどうかを確認することはできません。また、羊水混濁の原因がはっきりしているわけではないので、赤ちゃんがまだお腹にいるうちから予防するのは難しいといえます。
ただし、破水した場合は、その状態から医師が羊水混濁があるかどうか判断できます。破水が疑われるときは、いち早く産婦人科を受診しましょう。
羊水混濁への対処は、破水にいち早く気づくこと
羊水混濁は、正期産の時期に入ると10人に1人の割合で見られるものであり、ほとんどの場合は赤ちゃんの命に問題はありません。ただし、ごくまれに赤ちゃんが胎便を含む羊水を吸いこんでしまい、呼吸障害に陥ることがあるので、注意が必要です。
自覚症状は特にないため、妊婦さん自身が気づくのは難しいですが、もし破水が起きた場合はすぐに産婦人科を受診しましょう。
出産予定日が近づいてくると、赤ちゃんと対面できる日まであともう少しです。その日を楽しみに待ちつつ、何か異変に気づいたら、すぐにかかりつけ医に相談してくださいね。