羊水とは?色や匂いはあるの?どんな役割がある?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

妊娠するとママの体はお腹の中の赤ちゃんを守るために変化します。そのなかでも特に重要な役割を持つのが「羊水」です。ただの水ではなく、赤ちゃんを守り、成長を促すために大切なもの。しかし、妊娠中は羊水を見ることができないので、どんなものかよくわかりませんよね。そこで今回は羊水とはどんなものか、その役割や色、匂い、量のほか、羊水にまつわるトラブルについてもご説明します。

羊水とは?

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妊娠すると子宮内では赤ちゃんを囲むように「卵膜(らんまく)」と呼ばれる袋の形をした空間ができます。この卵膜内を満たしている弱アルカリ性の性質をもつ水分が羊水です。

成分のほとんどが水分ですが、電解質やアミノ酸、脂質、糖分といった成分も含まれています。

妊娠初期には卵膜の一番内側にある羊膜や赤ちゃん自身の皮膚から羊水が作られていますが、妊娠中期以降は羊膜だけではなく、赤ちゃんの腎臓でも作られるようになります。

赤ちゃん自身が羊水を飲み込んで、腎臓で産生し、尿として排出することを繰り返しています。

羊水にはどんな役割があるの?

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妊娠中の羊水には大きく以下3つの役割があります。

1. 肺の発育を促す

胎児はママのお腹にいるときから外に出たときのために呼吸の練習をしています。胎児は空気の代わりに羊水を肺に取り込むことで、呼吸の練習をするのです。

また呼吸の練習以外にも、消化管で羊水を吸収したあとで尿として排出する作業も繰り返しており、腎臓や消化管の発達にも深く関係しています。

2. 衝撃をやわらげる

胎児を包みこんでいる羊水は、外からの衝撃をやわらげる役割もあります。日常生活でママがお腹をぶつけてしまったとしても、羊水がクッションとなり、赤ちゃんには直接衝撃が伝わらないようになっています。よほど強くぶつけない限り、赤ちゃんはしっかりと守られています。

3. 運動空間の確保

羊水があるおかげで、赤ちゃんは子宮の中を動き回ることができます。赤ちゃんの動きを胎動として感じますよね。赤ちゃんは子宮の中で体を動かすことで、筋肉や骨などの発達を促しているんですよ。

そのほか、羊水には抗菌作用があるので細菌による感染を防いでくれたり、保水作用のあるヒアルロン酸のおかげで赤ちゃんの肌を潤してくれたりもしています。また、体温を一定に保つ役割や、出産時には羊水と羊膜が一緒になって子宮口を広げて胎児への圧迫を減らす役割も果たしています。

羊水の色や匂いは?量はどれくらいなの?

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妊娠中は羊水を見ることができず、出産間近で破水したときに目にする人がいるくらいです。どんなものなのか気になると思いますが、基本的には水と同じで無味無臭の透明な液体です。

ただ、妊娠初期は薄い黄色っぽい色がついていることがあり、妊娠後期になると乳白色へと変化します。妊娠後期に色が変わるのは、赤ちゃんの腎臓で濾過されて尿として排出されることが関係しています。

羊水の量は一定ではなく、妊娠期間を通じて徐々に増えていきます。妊娠8週頃から1週間に約10mlペースで増え、妊娠20週頃には約350ml、妊娠30週前後にはピークの約800mlに到達します。ピークを過ぎた後は徐々に減少し、出産を迎える頃には約500mlになります。

妊婦健診で羊水の検査をすることはある?

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妊婦健診では羊水の状態を検査することはありませんが、お腹の大きさと超音波検査を通じて羊水量を簡易的に調べます。

羊水の量を調べる方法は2つあり、子宮腔内を4分割したときの長さの合計を足し合わせる「羊水インデックス(AFI)」と、子宮腔内の赤ちゃんと子宮内壁の間で一番距離が長い場所である「羊水ポケット」をはかる方法です。簡易的に羊水量の異常を見つけることができます。

また、羊水内には胎児由来の物質が含まれているので、羊水を抽出して調べることで、染色体異常などの有無を調べることもできます。羊水検査は出生前診断の方法の1つとしてよく知られており、妊娠15〜17週頃に受けられます。

妊娠中の羊水にはどんなトラブルがある?

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妊娠中には羊水にまつわるトラブルが起こることもあります。羊水トラブルは赤ちゃんに直接影響することもあるので注意が必要です。

羊水過多症

妊娠の時期を問わず、羊水量が800mlを超えるか、羊水ポケットで8cm以上・羊水インデックスで24cm以上の場合は「羊水過多」と診断されます。羊水が多すぎると逆子になりやすく、早産や前期破水を引き起こすリスクがあります。

また母体も、通常よりお腹が大きくなることで、呼吸が浅くなる、食後に胃の不快感や吐き気を感じる、足の血流が圧迫されてむくみを感じやすくなるなど、マイナートラブルに悩まされやすくなります。

羊水過少症

妊娠の時期を問わず、羊水量が100mlを下回るか、羊水ポケットで2cm未満・羊水インデックスで5cm未満の場合は「羊水過少」と診断されます。胎児の発育不良を引き起こす恐れがあります。

羊水混濁

赤ちゃんが子宮内で最初の便(胎便)を排泄し、羊水が黄色や緑色に濁った状態を「羊水混濁」といいます。通常、胎児は産まれるまで便を排泄しませんが、酸素不足によるストレスや過期妊娠の影響で排便することがあります。羊水混濁を起こす時期によっては、胎便吸引症候群になる恐れもあります。

羊水は赤ちゃんを守る大切なもの

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妊娠中は羊水を見ることができませんが、長い間、赤ちゃんのことを守ってくれている大切なものです。自分でチェックできるわけではありませんが、羊水の異常は誰にでも起こる可能性はあるので、気になる人は羊水の状態が安定しているかどうか、妊婦健診を受けたときに医師に確認してみましょう。

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