羊水塞栓症とは?原因や症状、治療法は?胎児への影響は?

記事監修 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年に山梨医科大学(現 山梨大学)医学部を卒業。板橋中央総合病院を経て、現在は沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センターに勤務。産婦人科専門医、周産期専門医として、一般的な産婦人科診療から、救... 続きを読む

「羊水塞栓症」とは、出産時に起こる重篤なトラブルのひとつです。分娩中や分娩直後に突然起こるものなので予測することは難しく、発症はごくまれですが、誰にでも起こり得るものです。お産の前に、発症したときの母体や赤ちゃんへの影響を知っておきましょう。今回は、羊水塞栓症とはどういうものか、原因や症状、治療法についてご説明します。

羊水塞栓症とは?

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羊水塞栓症(ようすいそくせんしょう)とは、羊水や、羊水のなかに存在する赤ちゃんの産毛、髪の毛、皮膚細胞、便などが母体の血管内に流入し、血液の流れを遮ったり、アナフィラキシーショックを起こしたりする疾患です。

ほとんどが破水後に発症し、母体の呼吸停止や心停止など重篤な症状を引き起こします。発症頻度は2~5万分娩に1例ほどとごくまれですが、発症した場合の母体死亡率は30~80%と非常に高く、妊産婦死亡原因の約30%を占めます(※1)。

羊水塞栓症を引き起こす原因は?

記号 疑問 はてな

羊水塞栓症は、羊水中の髪の毛や胎脂、胎便中のプロテアーゼなどが母体の血液中に流れ込むことで起こりますが、そもそも羊水が血液中に流れ込む原因ははっきりとわかっていません。

ただし、子宮内圧の上昇や卵膜・子宮内膜の裂傷など、以下の条件がいくつかそろったときに発症する可能性が高いといわれます(※1,2)。

羊水が母体の血液中に流れやすくなる状況

● 誘発分娩
● 多胎妊娠
● 過強陣痛
● 羊水過多
● 羊水混濁
● 人工羊水の注入
● 帝王切開
● 軟産道裂傷
● 常位胎盤早期剥離
● 前置胎盤
● 胎児機能不全
● 吸引分娩
● 鉗子分娩

また、35歳以上の人や、経産婦にも起こりやすいといわれています。年齢や出産経験、または多胎妊娠や前置胎盤などの状況がすでにわかっている場合には、事前に万が一に備えておく必要があります。

羊水塞栓症の症状は?

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羊水塞栓症は急激に発症するのが特徴です。分娩中や帝王切開時、子宮内に残ったものを取り出している時、分娩後30分以内などに症状が現れます。

羊水塞栓症は、症状の現れ方によって、「心肺虚脱型」、「DIC先行型」、「混合型」の3種類に分けられます(※3)。

心肺虚脱型の症状

胸の痛みや呼吸困難、痙攣、チアノーゼを起こし、急激にショック状態や心不全、呼吸停止、心停止などの重篤な状態に陥ります。

DIC先行型の症状

血液が固まらず、血が止まらなくなる「DIC」を起こし、性器から出血が続きます。大量に出血することで、出血性のショック状態に陥ることもあります。

混合型の症状

混合型の場合、胸の痛みや呼吸困難などの心肺虚脱型とほぼ同時に、DIC先行型の性器出血が起こります。すぐに大量出血やショック状態によって、重篤な状態になります。

どの症状が現れても急激に悪化するのが特徴で、最悪の場合、発症後から短時間で死に至ることもあります。命が助かっても、臓器不全や神経系の障害など、長期にわたる合併症が発症することもあります。

羊水塞栓症の赤ちゃんへの影響は?

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羊水塞栓症が赤ちゃんに与える影響についてははっきりとわかっていませんが、羊水塞栓症は分娩中や分娩後に起こるものなので、赤ちゃんは無事に生まれることができる可能性があります。しかし分娩中に発症した場合には、母体の治療も優先されるため、赤ちゃんの命が危険になってしまうこともあります。

また、羊水塞栓症を発症する兆候として胎児機能不全を起こすことがあるため、胎児に悪影響をおよぼしている可能性があるともいわれています。

羊水塞栓症の診断と治療法は?

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羊水塞栓症は、血液を採取して、そのなかに胎児の成分が含まれるかどうかを調べて初めてわかります。発症したときには早急な対応が必要なので、症状などから羊水塞栓症と想定して治療が行われます。

羊水塞栓症で起きるような突発的な症状が現れたら、意識レベルや脈拍、血圧、心電図などをチェックします。そこで羊水塞栓症の疑いがあれば、現れた症状に合わせた対症療法が行われます。

呼吸困難が見られたら気道確保と人工呼吸、出血には輸液や輸血、DICに対しては血漿と薬の投与、心停止には心肺蘇生が必要です。

分娩中であれば母体の状態を安定させて赤ちゃんをすぐに娩出し、集中治療室(NICU)で予後の観察を行います。

羊水塞栓症のリスクを知っておこう

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羊水塞栓症は、妊娠中にできる有効な予防法がありません。また発症した際には、高度な医療技術が要求される難しい疾患です。

発症率は高くなく、過度に心配する必要はありませんが、お産には羊水塞栓症のようなリスクを伴うことは忘れないでください。防ぐことができるものではありませんが、日々健康に過ごして、安産になるように心がけましょう。

万が一のときのために、不安なことがあれば医師に確認し、知識を身に着けておくことも大切です。

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