産後しばらくの間は悪露(おろ)が出るものですが、初めての出産だと「この出血は本当に悪露なの?」と心配になる人もいると思います。悪露が治まってきたと思っていたのに鮮血が出たら、何かのトラブルではないかと不安になるもの。そこで今回は、産後の不正出血の原因や、悪露と生理の見分け方、病気の可能性などをご説明します。
産後の出血の原因は悪露?
通常、生理のとき以外に出血があるのは「不正出血」と呼ばれ、トラブルのサインである可能性もあります。
しかし、産後しばらくの間は出血が続くのは異常なことではなく、これを「悪露(おろ)」といいます。
そもそも悪露は、子宮内に残った胎盤や卵膜、血液などが混じりあった分泌物のこと。産後は、妊娠中に大きくなった子宮が収縮して妊娠前の状態に戻る「子宮復古」の過程で、悪露が排出されるのです。
日数が経つにつれて、子宮復古が進み、悪露は赤色、褐色、淡い黄色、白色と変化していき、産後1ヶ月半ほど経つと排出されなくなります(※1,2)。
産後の悪露で鮮血が出るのはいつまで?
悪露が血液成分を多く含み、鮮血のような赤色をしているのは、産後2~3日までです。
産後1週間もすると悪露は褐色に、2~3週頃には血液成分が少なくなり、白血球が主な成分となるので、黄色っぽい色へと変化します。
そして産後1ヶ月頃には、悪露に含まれるのは子宮腺からの分泌物が中心となるので白色~透明になり、産後1ヶ月半が経つと悪露はほとんど出てこなくなります。
ただし、産後1ヶ月頃までは子宮内に残っていた血液や分泌物が一気に排出され、塊のような状態で出てくることもあります。
産後の不正出血の原因は?悪露で異常がわかる?
前述のとおり、お産直後の悪露は鮮血のように見えても問題ありません。また、色は変化していくものの、産後1ヶ月半頃までは悪露が出ます。
ただし、下記のような場合には何らかの異常があると考えられ、適切な処置が必要となるため、早めに産婦人科医に相談しましょう(※2)。
鮮血が産後2週間以上続く
子宮が収縮していく過程で、胎盤や卵膜が剥がれた子宮の面が圧迫されて、自然と止血されていきます。産後2~3週間も過ぎればほとんど出血は止まり、悪露に血が混じらなくなっていきます。
もし、産後2週間以上にわたって鮮血のような赤い悪露が出続ける場合は、子宮復古不全を起こしている可能性があります。
子宮のなかに胎盤などが残っていたり、子宮筋が伸びきっていたりすると、正常に子宮が収縮できず出血が止まらないため、場合によっては、子宮の収縮を促す薬の服用や子宮内容除去術といった処置が必要となることがあります。
産後1ヶ月半を過ぎても悪露が出る
産後1ヶ月頃には子宮口が閉じ、産後1ヶ月半を過ぎると子宮は妊娠前と同じくらいの大きさに戻ります。悪露は透明や白っぽい色をしているか、ほとんど出なくなっているはずです。
この時期になっても悪露の量が多く、血が混じる場合、子宮内の傷や炎症による不正出血の可能性があります。悪露があると細菌が繁殖しやすく、感染症を起こしている場合は抗菌薬で治療します。
産後の不正出血は生理の可能性もある?
産後しばらくは排卵が起こらず、生理も止まっていますが、ミルクだけで赤ちゃんを育てているママの場合、産後1ヶ月半~2ヶ月を過ぎると生理が来ることがあります(※3)。
一方、母乳育児をしているママは、授乳によるホルモンの作用によって排卵が抑えられるため、生理の再開が遅くなる傾向にあります。これは、産後の体力の消耗や妊娠することを防ぎ、母体の体調を回復させるためのメカニズムです。
過去の調査によると、産後1ヶ月半で生理が再開した人が20%、産後3ヶ月では30~60%、産後半年経つと80%というデータもあります(※3)。
生理が来るタイミングはママのホルモンバランスや体の状態にもよるため、一概にはいえませんが、産後1ヶ月半を過ぎてからの鮮血は生理の可能性もあります。
ただし、1週間以上出血が続いたり、1回で多めの出血があったり、発熱などほかの症状も現れたりするようであれば、生理ではなく、子宮内の変化や細菌感染などによる不正出血の恐れもあるので、放っておかず、産婦人科医に相談しましょう。
産後の不正出血で病院に行く目安は?
産後の不正出血が一時的なものであれば、正常な悪露によるものと考えられますが、次のような状態であれば産婦人科を受診しましょう。
- 産後2週間を過ぎても鮮血のような赤い悪露が出る
- 大きな血の塊や多めの出血が急に出る
- 悪露の量が継続的に増えている
- 悪露から悪臭がする
- 出血以外に発熱やだるさなどの症状もある
急を要する状態ではなくても、産後の体調について気になることがあれば、1ヶ月検診を受けるときに相談してみてくださいね。
産後の不正出血に対応するには?
産後1ヶ月は体力が徐々に回復している途中で、育児の疲れもあるかもしれないので、家族のサポートを受けながら休養をとることも大切です。
お産のときの出血により貧血気味になっていることもあると思うので、悪露の出血が落ち着くまでは、家族に協力してもらったり、民間サービスをうまく利用したりしながら、体力を少しずつ回復させましょう。
また、出産直後の悪露は量が多いので、下着が汚れるのが気になる人は吸収力の高い産褥パッドを使うのもおすすめです。
産後に不正出血があっても冷静な対処を
産後に鮮血が出てくると、誰でも驚いてしまいますね。悪露なのかどうかを見分けるのも難しいので、どう対処していいか困る人も多いと思います。そのため、産後に鮮血が続いて不安を感じるようであれば、病院を受診することをおすすめします。
産後しばらくは体力が万全ではなく、精神的にも不安が強くなったりと変化が起きることもあるかもしれません。ママ1人で悩むのではなく、家族にも色々と相談しながら、信頼できる医師の診察を受けて気持ちを落ち着かせましょう。