赤ちゃんや幼児が鼻水や咳をしていたら、それはヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症の症状かもしれません。ヒトメタニューモウイルスは2001年と比較的最近見つかったウイルスで、赤ちゃんや子供が感染しやすく、症状が重くなることもあり注意が必要です。今回は、ヒトメタニューモウイルスに感染したときの症状や検査法、潜伏期間などについてご紹介します。
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)とは?
ヒトメタニューモウイルスは2001年に発見されたウイルスで、持っている遺伝子も感染したときに引き起こす症状もRSウイルスによく似ています。大人から子供まで幅広い年齢層で感染しますが、とくに1〜2歳の小さな子供は感染しやすいため注意が必要です。
気管支炎や下気道炎を引き起こす病原体の一つで、子供がかかるウイルス性の呼吸器感染症のうち5〜10%がヒトメタニューモウイルスによるものとされています。
ヒトメタニューモウイルスが流行するのは3~6月頃が多く、RSウイルスより1~2ヶ月遅れて流行する傾向があります(※1)。
ヒトメタニューモウイルスの潜伏期間や感染力は?
ヒトメタニューモウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は3〜6日です。また、感染すると7〜14日間は唾液や鼻水にヒトメタニューモウイルスが含まれているため、この期間はまわりの人にうつす可能性があります(※1)。
感染力も強く、高齢者施設の院内感染の事例では、入所者の約40%が感染したという報告もあります(※2)。
ヒトメタニューモウイルスの症状は?熱が出て肺炎になる?
ヒトメタニューモウイルスの症状はRSウイルスとよく似ています。主に以下のような症状が現れます(※3)。
● 発熱
● せき
● 鼻水
● 喉の痛み
● 声が枯れる
RSウイルスとの違いは、RSウイルスが1歳未満で発症しやすいのに対し、ヒトメタニューモウイルスは1歳以上で発症しやすいということ、そしてRSウイルスは鼻水が多いのに対し、ヒトメタニューモウイルスは発熱と咳き込みが多いことです(※1)。
ヒトメタニューモウイルスによる発熱の期間は比較的長い傾向があります。この他、結膜炎や嘔吐、下痢、発疹を発症することもありますが、それほど多くはありません。ヒトメタニューモウイルスの症状は、1週間程度で良くなります(※1)。
ヒトメタニューモウイルス感染症は赤ちゃんや子供は重症化しやすいの?
赤ちゃんは生後6ヶ月ごろからヒトメタニューモウイルスに感染し始め、5歳までには多くの子供がヒトメタニューモウイルスの感染を経験します。
一度の感染では十分な免疫を獲得できないため、その後何度も感染を繰り返し、感染するたびに症状は軽くなっていきます。年長の子供の場合は、感染しても風邪のような軽症ですんだり、そもそも症状が出なかったりします(※1)。
一方で2歳以下の子はまだ免疫が不十分なため、症状が重くなる傾向があります。また、男の子は女の子よりも重症化しやすいことが知られています(※3)。
乳幼児は細気管支炎や喘息様気管支炎、肺炎、中耳炎になることがあります(※1)。ゼイゼイ・ヒューヒューという呼吸音が聞こえたり、熱がなかなか下がらないときは注意が必要です。
ヒトメタニューモウイルスは症状でわかる?検査はしなくていい?
前述のとおり、症状がRSウイルスとよく似ているために、症状だけでヒトメタニューモウイルスによる感染症なのか判断することはできません(※1)。正しく診断してもらうには、医療機関で検査を受ける必要があります。
検査方法はいくつかありますが、迅速に検査するための専用キットがあります。また、症状がRSウイルスと似ているので、RSウイルス用の検査を行って陰性だったらこのウイルスに感染していると疑う、といった方法で見当をつける場合もあります(※3)。
なお、6歳未満で強く肺炎が疑われるときにレントゲン撮影をした場合のみ検査費用に健康保険が適用されます(※1)。そのため、あまり検査は行なっていないのが実情です。
ヒトメタニューモウイルスは入院して治療することもある?
ヒトメタニューモウイルスに効果がある特効薬はなく、治療は現れた症状を和らげる対症療法で行うことになります。
症状が軽い場合は、咳止め薬を使ったり、鼻水を吸引して対処します。症状が重くなり、水分を摂れず脱水になる危険があるときは、水分や電解質を点滴することがあります。しかし、人工呼吸器を使わなければいけないなど、入院が必要なほど症状が悪化することはあまりありません(※3)。
ヒトメタニューモウイルスは予防できる?
ヒトメタニューモウイルスに対するワクチンはありません。感染を予防するには、ヒトメタニューモウイルスをもらわないことが大事です。
ヒトメタニューモウイルスは飛沫感染、接触感染で人から人へとうつります。外出先から帰ってきたときは手を洗う、鼻水や唾液がついたティッシュはすぐに捨てる、タオルは家族内でもできるだけ使いまわさないなど、一般的な風邪の予防対策が大切です(※1)。
ヒトメタニューモウイルスは風邪予防が大切
ヒトメタニューモウイルス感染症はまだまだ知られていない病気です。さらに病原体が発見されたのが比較的新しく、ワクチンもまだないと聞くと、つい身構えてしまう人もいると思います。
しかしたいていの場合はそれほど心配する必要はない病気なので、気にしすぎる必要はありません。とはいえ、小さい子供ほど重症化しやすいという特徴があるので、特に2歳以下の子供がいるママやパパは注意が必要です。
子供が外からウイルスをもらってきたり、家庭内で子供にうつしてしまったりしないように、家族みんなで予防をしっかりしましょうね。