疲れが溜まっているときに、大人の唇に出ることも多い、ヘルペス。ヘルペスは様々なウイルスによって引き起こされますが、なかでも「単純ヘルペスウイルス」という種類のウイルスは、子供に感染すると唇に症状をもたらすことがあります。そこで今回は、子供の唇に出るヘルペスはどんな病気なのか、原因や症状、治し方などをご紹介します。
子供の唇にヘルペスが。何の病気?
子供の唇や口内に水ぶくれのような発疹が見られる場合、「ヘルペス性歯肉口内炎」という病気の可能性が考えられます。
ヘルペス性歯肉口内炎は、生後6ヶ月~5歳までの子供に多く見られる病気です(※1)。症状が似ていることから、細菌性咽頭炎に間違われることもあります。
子供の唇にヘルペスができる原因は?
ヘルペス性歯肉口内炎は、子供の口のなかの粘膜や唇の小さな傷から単純ヘルペスウイルスが入り込むことで起こります。
単純ヘルペスウイルスは、症状が出ている場所から排出されることが多いため、ヘルペスの症状が出ているママ・パパとのキスや、ヘルペスウイルスを持っている人のくしゃみや咳の飛沫を吸い込むことなどで感染します。
ヘルペスが子供の唇にできたときの症状は?
ヘルペス性歯肉口内炎は突然発症します。口のなかに水ぶくれ(ヘルペス)ができるほか、痛みやよだれの増加、食事が摂りにくくなる、40度以上の高熱、歯茎が膨らむなどの症状が現れます(※1)。
水ぶくれの範囲は広く、歯茎、唇、舌、上顎、扁桃腺、のど、口の周りの皮膚などに現れます。
エンテロウイルスに感染して起こるヘルパンギーナという病気でも水ぶくれができますが、手足には出ず、またヘルペス性歯肉口内炎のほうが広範囲に症状が現れるのが特徴です。
水ぶくれは一般的に、2~3日間で治まることが多く、その後はただれたようになり、黄色っぽい膜で覆われることもあります。また、首のリンパ節が腫れることもあります。
大体の症状は治療をしなくても7~14日で治まりますが、リンパ節の腫れは数週間続くことがあります(※1)。
子供の唇のヘルペスは薬で治療するの?
ヘルペス性歯肉口内炎は治療しなくても7~14日で症状が治まることが多いですが、重症化を防いだり、発症期間を短くしたりする目的で、薬での治療が行われることもあります。
治療には一般的に、アシクロビルという抗ウイルス剤が使われます。
子供の体重1kgあたり40mgを1日4回に分け、5日間飲み薬として服用しますが、同じアシクロビルが成分の薬でも、メーカーによって用法が異なる場合もあるので医師の指示通りに内服をしてください。
ただし、口のなかにものを入れるのを嫌がり、飲み薬での服用が難しい場合は、点滴での治療が行われることもあります(※2)。
水分が取れない場合には、原則として入院したうえで管理でアシクロビルの点滴が用いられ、子供の体重1kgあたり15mgを、1日3回に分け、5日間投与されます(※2)。
また子供が小さい場合には、痛みで食事を摂りにくくなるため、脱水症状を引き起こす可能性もあります。そうならないためにも、冷たい飲み物やアイスクリーム、ヨーグルトなど、子供が食べやすいものを食べさせることが大切です。
子供のヘルペス予防法は?
ヘルペス性歯肉口内炎の原因となる単純ヘルペスウイルスには、有効なワクチンが見つかっていないため、予防接種で感染を防ぐことはできません。
単純ヘルペスウイルスは、症状が出ている部分に接触するか、よだれなどの分泌物に接触することで感染が広がります。
そのため、手洗いをこまめに行って手や指に付着するウイルスを洗い流したり、マスクを着用して口にウイルスが入りにくくしたりすることは、ヘルペスウイルスの感染予防にある程度の効果が期待できます。
ヘルペスに一度感染すると、症状が治まってもウイルスは体内に残り、再発をくりかえすことがあるため、もし家族のなかで、過去にヘルペスに感染した人がいる場合は、家族間での感染対策も大きな効果が期待できます。
家族などからの感染予防で有効なものに、アルコールによる除菌があります。単純ヘルペスウイルスはアルコールに弱いという特徴があるため、市販のアルコール消毒スプレーで、家族で共有している家具などを消毒するのもいいでしょう。
また、口の周りに水ぶくれができている場合、その周辺にはウイルスがたくさん存在しています。そのため、看病するママ・パパはもちろん、子供自身にもできるだけ触れさせないようにしましょう(※2)。
子供にヘルペスが出たら脱水症状に注意
子供の唇のヘルペスは、発症しても自然に症状が治まることがほとんどで、重症化しにくい病気です。
ただし、症状が長引いたり、子供の痛がり方がひどかったりする場合には、薬で治療が行われることもあるので、かかりつけの病院で相談することをおすすめします。
また、子供が発症した場合には、口のなかに痛みが出て食事を摂りにくくなることがあるので、こまめに水分補給をさせ、脱水症状に気をつけてくださいね。