O157に感染!症状や治療法は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

O157によって引き起こされる、腸管出血性大腸菌感染症。腸管出血性大腸菌感染症は、特に子供が多く発症し、最悪の場合、死に至ることもあります(※1)。そのため、子供を持つママやパパにとっては怖い病気の一つです。今回は、O157がどんな菌なのか、また、感染した場合の潜伏期間や、子供が感染した場合にどのような症状が出て、どのような治療を行えばいいのかについてご紹介します。

O157とは?

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O157とは、人間に感染すると下痢や血便などの食中毒症状を引き起こす大腸菌の一種です。

1996年には、日本で1万人を超える感染者を出したO157ですが、それから20年経った2016年でも、252人の人がO157を含む腸管出血性大腸菌に感染しています(※2)。

また腸管出血性大腸菌感染症は子供の発症が多く、患者の約80%は15歳以下で発症しています(※1)。

「食中毒」と聞くと、夏などの暖かい季節に多く起こるというイメージを持つ人も多いでしょう。O157を原因とする感染症も他の食中毒同様、夏季に多く発生します。しかし、それ以外の季節でも感染がなくなるわけではありません(※3)。

O157ってうつるの?感染ルートは?

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O157の菌には次のような特徴があります。

● 酸性に強く、胃液で死滅しない
● 低温に強い
● 発症に必要な菌の数が少なく、感染力が強い

O157の感染は、そのほとんどが経口感染によるものです。

なかでも多いのが、汚染された食品を口にしてしまうこと。食品についた菌は水に強く、また、寒いところでも生き残るので、一旦汚染された食品を家庭用の冷凍庫の中で保管したとしても、菌は生き残ると考えられています。

そのため、生肉や生魚を扱うときはもちろん、冷凍食品などを扱う際も、しっかりと手を洗うなどの対策が必要です。

また、多くの食中毒は、100万個以上の菌が体内に入らないと発症しないことが多いのに対し、O157は抵抗力が弱い子供の場合は、100個以下の菌があれば発症の可能性があります(※4)。そのため、感染者の便などを介した二次感染が起きやすく、感染が拡大しやすいという特徴があります。

O157の症状とは?子供が感染するとどうなる?

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O157による感染症の症状を引き起こすのは、菌が出す「ベロ毒素」が原因。なかには全く症状が現れない人もいますが、多くの場合、この毒素が体内に吸収されることで、次のような症状が現れます(※1)。

● 腹痛
● 下痢
● 血便
● 発熱

腹痛が起きる範囲は、へそから下腹部にかけて。また、血便はほぼ真っ赤な血が出るような症状になる場合もあります。人によっては、発熱の症状が見られることもありますが、一過性のことがほとんどです(※3,4)。

子供が感染した場合でも、大人と同様に、腹痛を伴う下痢や血便、発熱といった症状が現れます。

また、免疫の弱い子供が感染した場合は、貧血や腎不全、血が止まりにくくなるなどの症状を引き起こす溶血性尿毒症症候群や、けいれんなどを引き起こす脳症という他の合併症にかかったりと、重症化しやすい傾向があるので注意が必要です(※5)。

日本国内では、合併症である溶血性尿毒症症候群にかかるのはO157感染者のうち、約3〜4%です(※6)。特に、5歳未満の子供では、全年齢の11倍以上も高いというデータがあります(※6)。

場合によっては死に至ることもあるので、早めに病院を受診しましょう。

O157の潜伏期間は?

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O157の感染から症状が出るまでの潜伏期間は、2〜9日間と長く、感染経路の特定が難しいという特徴があります(※5)。

そのため、一緒に食事をした家族に下痢や血便などの症状が見られたり、子供の通う保育園で感染者が出た場合など、心当たりがある際には、早めに医師に相談することをおすすめします。

O157の検査は、どんなことをするの?

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O157の検査は、まず便を採取し、そこに含まれる細菌を調べることで行われます。便にO157の菌が見つかり、ベロ毒素を作ることが確認されると、O157に感染していると診断されます。

また、下痢が長引いたり血便が見られ、むくみがひどかったり、血が止まりにくいなどの症状がある際は、合併症である溶血性尿毒症症候群にかかっていないか、尿検査と血液検査を繰り返して調べます(※7)。

O157の治療法は?

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O157に感染し、下痢の症状が出ているからといって、自己判断で整腸剤や痛み止めなどを使用してはいけません。それらの薬のなかには、腸の動きを抑制する種類のものもあり、誤って服用してしまうとベロ毒素が体外に出るのを邪魔する可能性もあります。

そうすると、腸から毒素が吸収する時間が長くなってしまい、かえって逆効果になることも。

抗生物質の使用に関しては、海外の研究では抗生物質を使用することで症状が悪化する可能性があると報告されている一方、日本では早い段階で抗生物質を使用することで溶血性尿毒症症候群の発症をある程度抑えられるという報告があります(※8)。

そのため、2017年現在、抗生物質を用いるかどうかについては、医師の判断に任せられています(※8)。

O157の家での治療法は?

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もし子供が病院でO157による感染と診断された場合は、安静にし、水分をこまめに補給させます。また、食事は、食べやすいように柔らかめに煮たうどんやおかゆなどの料理を作ってあげて栄養補給させるのも有効です。

子供は年齢によっては自分で意思表示ができないため、どこが痛むのか、どんな症状があるのかなど、説明できない可能性もあります。

そのため、子供にO157感染の疑いがある場合は、便や表情などの小さな変化を見逃さないようにしましょう。

子供がO157に感染したら、早めの治療を

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「O157に感染したかな」と思っても、自身の判断で下痢止めや抗生物質などの薬を服用するのはやめましょう。

子供が辛そうにしているのは親として耐え難いとは思います。しかし、自己判断で行った治療のせいで、悪化してしまうこともあります。

子供がO157に感染した疑いがあれば、必ず病院での診療を受け、適切な治療を受けてくださいね。

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