O157の予防法は?加熱すればいい?消毒の方法は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

人間に感染すると、下痢や血便などの食中毒症状を引き起こす大腸菌の一種であるO157。O157の菌は他の食中毒の菌よりも感染力が強いため、人から人へうつりやすい特徴があります。加熱すればO157の菌は死滅するのでしょうか。今回は、そのO157感染への予防について、食品の加熱や消毒などさまざまな方法をご紹介します。

O157とは?

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O157は、人に感染すると、腸管出血性大腸菌感染症を引き起こす大腸菌の一種です。腸管出血性大腸菌感染症が発症すると、激しい腹痛を伴う下痢、続いて血便の症状が現れます。

O157の菌の感染力は非常に強く、1996年に大阪府堺市で発生した食中毒では9,000人を超える感染者が出るなど、大規模感染が発生しやすいのも特徴です(※1)。

主な感染経路は経口感染で、菌が付着した生肉や、その生肉が触れた食品などを食べた場合、患者の便や菌のついたものに触れた後、手洗いを十分にしなかった場合などに感染します。

O157予防の3原則とは?

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O157は、体内に50個程度の菌が入れば発症する可能性がある、非常に感染力の強い菌です(※2)。これは、他の食中毒の菌が発症に必要とする100万個という数字に比べて、圧倒的に少ない数です。

しかし、O157がいくら感染力の強い菌だといっても、「食中毒予防の3原則」を守れば、他の食中毒の菌と同様に、感染が広がるのを抑えることができます(※3)。

食中毒予防の3原則

● 菌をやっつける
● 菌をつけない
● 菌を増やさない

この3原則のそれぞれの方法について、次から詳しくご説明していきます。

O157を加熱して、菌を「やっつける」。加熱時間の目安は?

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O157の菌の感染を予防するうえで、食品を加熱することは非常に有効です。

O157は酸や低温には強いものの、比較的熱に弱いという特徴があります。そのため、食品をしっかりと加熱することで、O157の菌を死滅させることができます。

O157の菌を死滅させる加熱の目安は、食品の中心部を75度で1分以上加熱することです(※3)。

このときに気をつけなければいけないのは、加熱部のムラを作らないこと。食品を加熱するときに、きちんと温度が上がらない部分があると、かえって細菌が増えやすい環境を作ってしまう可能性があるので、気をつけましょう。

O157予防の加熱は電子レンジでもいいの?

電子レンジを使用しても、食品全体を75度で1分以上加熱すれば、O157の菌を死滅させることができます(※4)。

ただし電子レンジでの加熱はムラが出やすいので、全体を75度以上に保つため、専用容器とフタを使い、温めながら時々料理をかき混ぜるなどの工夫が必要です。

O157を消毒して、菌を「つけない」

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O157の菌への感染はそのほとんどが経口感染のため、第一に菌を食べ物に付けないことが大切です。

調理を始める前や、オムツを交換した後、残った食品を扱う前など、手をこまめに洗い、アルコール消毒液などで常に清潔にしておきましょう。

また肉や魚などは、ドリップが他の食べ物に付かないように、購入時から個別にビニール袋に入れるなどしておきましょう。

O157の菌は、調理器具を介して感染することもあるので、まな板などは洗剤でよく洗ってから熱湯をかけたり、台所用殺菌剤で消毒することも必要です。

O157を冷凍して、菌を「増やさない」

冷凍庫

O157を含む細菌の多くは、10度以下では増殖スピードが遅くなり、-15度以下では増殖が停止します(※5)。

菌を増やさないためには、肉や魚などの生鮮食品やお惣菜を購入後にすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れるのが効果的です。温度調節ができる機種であれば、冷蔵庫は10度以下、冷凍庫は-15度以下に保つようにしましょう。

しかし、O157の菌は低温でも死滅せず、冷蔵庫の環境下ではゆっくりと増殖するので、この方法で殺菌まではできません。購入した食品はできるだけ早めに消費するか、上記のような加熱を行うことをおすすめします。

O157の予防で、調理で気をつけることは?

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前述したとおり、O157への感染はそのほとんどが経口感染のため、感染を予防するために食品に菌がいない状態にすることが大切です。O157感染を含む食中毒予防のポイントについて、上で紹介したもの以外の予防法を、調理の流れに沿って6つのポイントでご紹介します(※5)。

1、買い物
2、家庭での保存
3、下準備
4、調理
5、食事
6、残った食品

1、買い物

● 消費期限を確認して購入する
● 肉や魚などの生鮮食品や冷凍食品は最後に買う
● 冷蔵・冷凍が必要なものを購入したら、寄り道をしないですぐに帰る

2、家庭での保存

● 肉、魚、卵などを取り扱うときは、前後に必ず手指を洗う
● 冷蔵庫や冷凍庫に詰めすぎない(冷気の循環が悪くなり設定温度が維持できない)

3、下準備

● 野菜などの食材を流水できれいに洗う(カット野菜もよく洗う)
● 生肉や魚や卵を触ったあとに手を洗う
● 包丁やまな板は肉用、魚用、野菜用と別々に揃えて使い分ける
● 冷凍食品の解凍は冷蔵庫や電子レンジを利用し、自然解凍は避ける
● 冷凍食品は使う分だけ解凍し、再冷凍しない
● 使用後のふきんやタオルは、熱湯で煮沸した後しっかり乾燥させる

4、調理

● 調理の前に手を洗う

5、食事

● 食べる前に石けんで手を洗う
● 清潔な食器を使う
● 作った料理は、長時間、室温に放置しない

6、残った食品

● 清潔な容器に保存する
● 温め直すときも十分に加熱する
● 時間が経ちすぎたものは思い切って捨てる
● ちょっとでもあやしいと思ったら捨てる

子供がO157にならないために予防しよう

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O157は、食中毒を引き起こす菌の中でも、感染力が高く、危険性が高い細菌です。

しかし、O157の発症のほとんどが口から菌が入る経口感染によるものなので、予防を行おうと思えばそれほど難しくありません。

O157に感染しないように、食品の加熱や調理器具の消毒、食材の冷凍など、普段の生活から予防を心がけましょう。

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