子供が急に腹痛を訴えた場合、「急性虫垂炎」を発症している可能性があります。小さい子供はお腹の痛みを言葉で表現するのが苦手なので、発見が遅れて重症化してしまうことも珍しくありません。今回は急性虫垂炎について、原因や症状、治療法などをご説明します。
急性虫垂炎とは?
急性虫垂炎とは、盲腸の先端にぶら下がっている「虫垂」という部位が炎症を起こしている状態で、一般的には「盲腸」と呼ばれている病気です。2~3歳頃から急性虫垂炎を発症しますが、最も起こりやすいのは小・中学生の子供です(※1)。
まだ年齢が低い子供が発症すると、症状をうまく言葉で伝えることができず、対処が遅れてしまう恐れがあります。いつもより元気がない、機嫌が悪い、ぐずつく、といった様子が見られたときは、まず小児科で診てもらいましょう。
急性虫垂炎の原因は?
急性虫垂炎を発症する原因については、まだはっきりしていません。虫垂がねじれたり、虫垂に便や粘液が詰まったりすると、そこに細菌が侵入して炎症が起こると考えられていますが、そういった症状がなく、発症することもあります。
急性虫垂炎の症状は?
盲腸と聞くと、「お腹の右下が痛くなる」とイメージを持っている人も多いかもしれませんが、発症直後から右下腹部が痛み出すわけではありません。
最初は、おへそやみぞおちのあたりに痛みを感じ、食べたものや胃液を嘔吐することもあります。小さな子供の場合、機嫌が悪くなったり、食欲が落ちたりします。
虫垂が化膿しはじめると、虫垂がある右下腹部へと痛みが少しずつ移動していきます。ただし、虫垂が腸管の裏にもぐっているなど、典型的な症状が見られず、急性虫垂炎が進行するまで気づきにくいこともあります。
急性虫垂炎の痛みは、時間が経つにつれて強くなるという特徴があり、立ったり歩いたりできないほど痛くなります。場合によっては37~38度前後の発熱や嘔吐を伴うこともあります。
急性虫垂炎は合併症に注意!
急性虫垂炎を治療せずに放置していると、虫垂の炎症や膿がお腹の中に広がり、腹膜炎を併発することもあるので注意が必要です。
39度以上の発熱を起こしている、お腹が張ってきた、お腹を触るだけで子供がひどく痛がる、という場合は、腹膜炎を合併している可能性があります(※2)。
腹膜炎は命に関わる恐れもある病気なので、急性虫垂炎が重症化する前に、できるだけ早く病院を受診してください。
急性虫垂炎の診断・治療法は?手術は必要?
急性虫垂炎の疑いがある場合は、問診と触診を行ったうえで、血液検査や腹部CT検査、超音波検査を行い、診断します。
急性虫垂炎の治療法には薬物療法と手術療法がありますが、子供の場合には虫垂が破れて腹膜炎になりやすいなどの特徴があるため、手術が多くなります。
薬物療法
症状が軽度であれば、抗菌薬を投与して炎症を軽減させ、しばらく様子を見ます。ただし、虫垂は残ったままになるので再発する可能性があり、治療期間が長引く恐れがあります。
手術療法
急性虫垂炎と診断された場合、基本的には手術療法によって、炎症を起こしている虫垂を切除します。
入院手術にはなりますが、最近では開腹手術ではなく、お腹に小さな穴を数ヶ所あけるだけで虫垂を切除できる腹腔鏡下手術が行われることが増えており、基本的に1週間以内に退院できます。
しかし、症状が重い場合は、大量の生理食塩水でお腹の中を洗い、急性虫垂炎によって発生した膿を取り除く処置が必要となるため、入院期間は長くなります(※1)。
急性虫垂炎が重症化する前に早めの対処を
急性虫垂炎は原因がはっきりしておらず、予防が難しい病気ですが、発症したときに、いち早く対処することで、治療期間を長引かせずに済みます。
急性虫垂炎を発症したばかりの時期は、お腹の痛みもそれほど強くなく、急性虫垂炎かどうかの判断がつきにくいことがあります。子供が腹痛を訴えていても、お腹をなでてあげると落ち着く程度であれば、まだ初期の段階か、便秘などが原因の可能性もあります。
しかし、お腹を触られることを嫌がる、右下腹部に痛みが現れている、発熱や嘔吐がある、といった場合は、急性虫垂炎の疑いがあるので、すぐに小児科を受診してください。早めの対処で、急性虫垂炎のつらさをできるだけ軽減させてあげましょう。