ノロウイルスは加熱しても死なない?殺菌できる加熱時間は?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

ノロウイルスは感染力が強く、しばしば集団感染を引き起こします。また、エタノールでも消毒できないため「なかなか死なない強いウイルス」と思われているかもしれません。でも、そのイメージはどこまで本当なのでしょうか?今回は、ノロウイルスを加熱して殺菌することはできるのか、殺菌できるなら加熱時間はどのくらいなのかなどをご紹介します。

ノロウイルスとは?

ウイルス 感染 うつる

ノロウイルスは、季節に関係なく感染する可能性があるウイルスですが、特に冬は感染が広がります。流行のピークは12月から翌年1月で、その前の11月から感染者が増え始めます(※1)。

ノロウイルスに感染すると、24〜48時間の潜伏期間の後に、1〜2日間にわたり、吐き気や嘔吐、水っぽい下痢、腹痛、人によっては発熱の症状が見られます(※1)。

ノロウイルスの感染経路は主に口からで、感染者の嘔吐物や便と一緒に排出されたウイルスが、食品や手の指を経由して口から体内に入ることで感染します。また、嘔吐物や便の粒子が空中に舞い、それを吸い込むことでも感染します(※2)。

ノロウイルスは、おもちゃやドアノブ、タオルなどに付着したウイルスから簡単に感染します。そのため、保育園や学校、社会福祉施設などの集団生活の場で、爆発的に感染が広がることがあります(※3)。

またノロウイルスの症状が治まってからも、3~7日ほどは便にウイルスが排出され続けるため、症状が治まったあとも引き続き注意が必要です(※4)。

ノロウイルスは加熱しても死なないの?

? 疑問

一般的に、ウイルスや菌は熱に弱く、加熱すれば死滅するものが多いと考えられています。ノロウイルスも、加熱によって感染力がなくなるウイルスの一つです。

そのため、食品や食器などの殺菌はもちろん、ノロウイルス感染者の嘔吐物や便が付着した衣服、リネン類、カーペットなどにも、加熱消毒は有効です。

ノロウイルスの加熱時間や加熱温度は?

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現在、ノロウイルスを人工的に培養する技術がないため、ノロウイルスの感染力を失わせる加熱時間や温度などについて実験することができず、正確な数値は分かっていません。

A型肝炎などの同じようなウイルスでは、85度以上で1分間以上の加熱を行えば感染力がなくなるため、ノロウイルスの加熱殺菌の時間や温度もこれが基準になっています(※1)。

ただ、ウイルスがどんな条件で感染能力がなくなるかは、ウイルスが存在する環境によっても異なります。そのため、加熱する対象によって、下記のように目安が定められています。

食品の加熱殺菌

食品中のウイルスはタンパク質で保護されてしまうため、加熱殺菌する際には特に高い目安が設けられています。食品を加熱する際の目安は、90秒以上、中心部が85~90度になるように加熱することです(※1)。

ノロウイルスの食中毒は、原因の特定が難しい傾向がありますが、特定されているものでもっとも多い原因が、牡蠣などの二枚貝によるものです(※1)。

牡蠣などの二枚貝は、プランクトンなどの餌と一緒に大量の海水を取り込むため、海水中に含まれるノロウイルスが体内に蓄積されていきます。そのため、生のままや加熱が不十分な状態で食べると、ノロウイルスに感染するリスクが高くなるのです(※1)。

他の食材もそうですが、特に牡蠣などの二枚貝は生食を避け、十分に加熱してから食べましょう。

調理器具の加熱殺菌

まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等の調理器具も、加熱による殺菌が可能です。

これらの調理器具は、85度以上のお湯に浸して1分以上加熱することで、付着したノロウイルスの感染力をなくすことができます(※1)。

衣類・リネン類など、洗濯が可能なものの加熱殺菌

ノロウイルス感染者の嘔吐物や便が、衣類やリネン類に付着してしまった場合、お湯での洗濯で殺菌することができます。

まずは下洗いをし、その後、85度以上のお湯で、1分間以上洗濯を行います。高温で乾燥が行える乾燥機を使用すると、さらに殺菌効果は高まります(※1)。

ただし、機種によってはお湯での洗濯ができない洗濯機もあるため、確認が必要です。

カーペットなど、洗濯が難しいものの加熱殺菌

大型のカーペットなど洗濯が難しいものは、家庭用のスチームアイロンで加熱殺菌することができます。

嘔吐物や便が付着した場所にスチームアイロンをあて、1ヶ所あたり2分程度加熱することで、表面のノロウイルスの感染力をなくすことができます(※5)。

ノロウイルスはしっかり加熱して感染予防を

チェック リスト 原因

ノロウイルスは感染力の強いウイルスなので、「加熱しても効果がないのでは」と思う人もいるかもしれません。しかし正しい時間と温度で加熱すれば、感染力を失わせることができます。

ノロウイルスはしばしば食中毒型の集団感染を引き起こしますが、原因が牡蠣などの二枚貝の加熱不足や生食であることも少なくないため、食品は十分に加熱してから食べることを心がけましょう(※1)。

また家族のなかに感染者が出た場合は、調理器具や衣服などを加熱消毒することにより、ノロウイルスの家庭内感染を防ぐことが大切です。

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