アデノウイルスに感染すると、咳、発熱、目の充血、のどの痛み、下痢など、さまざまな症状があらわれます。なかには、保育園や幼稚園にしばらく行けなくなる病気もあります。今回は、アデノウイルスに感染したら保育園にいつから通えるのか、登園許可証は必要なのかについて、ご紹介します。
アデノウイルスはどんな病気を引き起こす?
アデノウイルスは1型から51型まで、51もの血清型があり、遺伝子分類ではさらに細かく分かれます(※1)。
感染によって病気を引き起こすのは、そのうち約半数で、感染した血清型により症状が異なる傾向があります。血清型が多いため免疫ができず、何度も感染を繰り返してしまうのが特徴です。
アデノウイルスに感染して発症した病気を、「アデノウイルス感染症」といいます。アデノウイルス感染症にかかると、多くの場合、ウイルスが体内に入ってから5~7日の潜伏期間を経て、さまざまな症状を発症します(※1)。
アデノウイルス感染症は、症状によって、以下の病気に分類することができます。
呼吸器感染症
乳幼児がかかることが多く、鼻水や咳、のどの痛み、発熱など、いわゆる一般的な風邪の症状があらわれます。
気管支炎や肺炎を併発することもあり、咳や炎症により呼吸がしづらい、食事や水分が取れない、眠れないときなどは、入院して治療を行うこともあります(※2)。
咽頭結膜熱(プール熱)
以前はプールで感染が広がることが多く、「プール熱」という名前がつけられました。しかし今は衛生管理が徹底されており、プールで感染することはほとんどないと考えられています。
感染すると結膜炎の症状があらわれ、両目もしくは片方の目が充血して、目やにがでます。また、1日の間に39~40度の高熱と37~38度の微熱を繰り返す状態が、4~5日続きます(※1)。
その他にも、扁桃腺の腫れによる喉の痛みや頭痛、腹痛、下痢などの症状があらわれることもあります。
流行性角結膜炎
感染しても高熱はなく、喉もあまり赤くならないものの、咽頭結膜熱と同様、目が充血して目やにが出ます(※1)。
流行性角結膜炎は、治ったあとに「点状表層角膜炎」という病気になることが多いのが特徴です。その際は、目が赤くなる、光に過敏になる、涙が自然に出てくる、視力が落ちるといった症状があらわれます。
これらの症状は自然に治るので、あまり心配する必要はありません。
胃腸炎
子供に起こる胃腸炎の主要な原因の一つが、アデノウイルスです。腹痛、嘔吐、下痢などを伴い、軽く発熱することもあります(※1)。
多くの場合は、自然に治ります。
出血性膀胱炎
おしっこをするときに痛みを感じ、真っ赤な血尿が出ます。多くの場合、症状は2~3日で治まり、尿蛋白や腎不全を起こさず改善することがほとんどです(※1)。
アデノウイルスにかかると保育園にはいつから通える?
前述したとおり、アデノウイルスに感染するとさまざまな症状があらわれるため、保育園はしばらく休む必要があります。それでは、アデノウイルスに感染したら、保育園はいつから通うことができるのでしょうか。
一般的な風邪の症状だけであれば、原因がアデノウイルスであることに気づかないまま治ることが多くあります。その場合、本人がつらいと感じる症状がなくなれば、保育園に通っても問題ありません。
アデノウイルスの感染で気をつけなければいけないのは、咽頭結膜熱と流行性角結膜炎の場合です。これらの病気にかかった場合、下記のような出席停止期間が、学校安全保健法により定められています(※3)。
● 咽頭結膜熱:発熱、のどの炎症、結膜炎などの症状が治まったあと2日を経過するまで
● 流行性角結膜炎:医師が感染のおそれがないと認めるまで
咽頭結膜熱は、インフルエンザやおたふく風邪などと同様に、学校や保育園で流行が広がりやすいとされる「第二種感染症」に指定されています。流行性角結膜炎は、それより緊急性が低い、「第三種感染症」です。
流行性角結膜炎は、目の症状が軽くなっても感染力が残る場合があるので、「もう大丈夫」と思っていても、登園できないことがあります。必ず、医師の判断を仰ぐようにしてください。
アデノウイルスは保育園に登園許可証の提出が必要なの?
アデノウイルス感染症のうち、咽頭結膜熱と流行性角結膜炎は、厚生労働省により「登園時に医師が記入した意見書が望ましい感染症」に指定されています(※4)。
ただし登園許可証は法律で定められているものではないので、必ず提出を求められるわけではありません。また統一の書式が定められているわけでもありません。
登園許可証の提出やその書式については、自治体や保育園によって独自に規定を設けていることもあります。詳細については、通っている保育園に問い合わせてみてください。
アデノウイルスで保育園を登園停止にならないためには予防を!
アデノウイルス感染症は鼻風邪のような症状だけで終わることもあり、病原体がアデノウイルスであることに気づかぬまま治まることも多くあります。
しかし結膜炎のような症状があらわれた場合は、しばらく保育園に行けなくなってしまうこともあります。手洗いを徹底する、タオルを共用しないようにするなど、日常的な予防法で感染を防ぎたいですね。