赤ちゃんを待ち望んでいた夫婦にとって、子宮外妊娠の経験はつらいものです。病院で手術などの治療を受けたあと、「次の妊娠に悪影響はないのだろうか」「次も子宮外妊娠になるかも」と、体への影響が心配になる人もいると思います。そこで今回は、子宮外妊娠後の妊娠への影響や、再発する確率についてご説明します。
子宮外妊娠とは?どんな治療が必要なの?
子宮外妊娠(異所性妊娠)は、子宮内膜に着床するはずの受精卵が、何らかの理由で子宮内膜以外に着床して根をはった状態です。放置しておくと、受精卵が成長して卵管破裂などを起こす可能性があるので、早めに適切な治療を行う必要になります。
子宮外妊娠の治療法は、着床した場所や症状の程度、将来妊娠を希望するかどうかなどによって異なります。「メトトレキサート(MTX)」という薬で胎嚢の成長を抑える方法もありますが、保険適用外なので、原則的には手術を行います(※1)。
子宮外妊娠の大部分を占める「卵管妊娠」の治療法として、腹腔鏡下手術で卵管を切り開いて、中の胎嚢を除去する「卵管線状切開術(卵管温存手術)」や、妊娠が起きている部位を卵管ごと取り除く「卵管切除術(卵管摘出手術)」などがあります。
手術の方法によって、メリット・デメリットは異なるので、医師とよく相談のうえ決める必要があります。
子宮外妊娠の手術後、どのくらい体を休めるべき?
子宮外妊娠で手術をする場合は、手術方法や症状によっても違いますが、4〜7日ほどの入院が必要です。
病状や手術内容にもよりますが、退院した後は、通常の日常生活を送れるようになることがほとんどです。適度に動くことは、お腹の中の癒着や血栓症を防ぐうえで大切です。
あくまでも体調に無理のない範囲で、家族などの周りの人に助けてもらいながら、ゆっくりと日常生活に復帰していきましょう。
子宮外妊娠後、次の妊娠はできる?
「子宮外妊娠後に自然妊娠がしづらくなる」というデータは、今のところありません。子宮外妊娠になったとしても、次の妊娠に不安を感じすぎないでくださいね。
治療の際に卵管を切除した場合には、もう一方の卵管があれば自然妊娠できますし、妊娠する確率はほぼ変わらないことがわかっています。
ただし、残っている卵管が閉塞していたり、うまく機能していなかったりする場合は、体外受精など不妊治療も視野に入れて、医師とよく相談をしていきましょう。
子宮外妊娠後、いつから夫婦生活を再開できる?
手術後の経過にもよりますが、退院して約1ヶ月たてば、手術した部分の痛みがやわらぎ、体調も回復してくるため、夫婦生活を再開しても良い、と医師から言われることが多いようです。
ただし、生理が再開していない場合、気づかないうちに妊娠することがあります。子宮外妊娠が続いているのか、新たな妊娠なのかが判別できなくなってしまう恐れがあるほか、免疫力が低下していることも考えられるので、避妊と細菌の感染予防のためにしばらくはコンドームなどをつけて性交渉を行う方が安全です。
子宮外妊娠の後、次の生理が来るまでにかかる期間も人それぞれなので、妊娠を視野に入れた夫婦生活の再開については医師やパートナーとよく相談して決めましょう。
子宮外妊娠が再発する確率は?
子宮外妊娠のほとんどを占める「卵管妊娠」では、卵管切除術か卵管切開術で治療を行うことが多いですが、いずれにしてもまた子宮外妊娠を繰り返す確率が約10〜15%あります(※2)。
なお、卵巣・卵管の手術や人工妊娠中絶の経験、性感染症や子宮内膜症の発症歴がある場合や、体外受精・胚移植などの不妊治療による妊娠の場合は、子宮外妊娠の起こる確率が高まることがわかっています(※3)。
子宮外妊娠は予防できる?
「10人に1人は子宮外妊娠が再発する」となると、次の妊娠では予防したいと思うものですが、残念ながら、子宮外妊娠を100%予防する方法はありません。
ただし、子宮外妊娠になりやすい要因をできるだけ早く見つけ、取り除くために、次の2つの方法をおすすめします。
子宮卵管造影検査を受ける
子宮卵管造影検査は、卵管の詰まりや癒着などを調べられる検査です。子宮外妊娠の大部分を占める卵管妊娠を起こすリスクがあるかどうかをある程度確認することができます。
原則的に、生理が終わってから排卵が起こるまでの期間に行った方が良い検査なので、タイミングについては医師に相談してください。
クラミジア感染症の検査を受ける
クラミジア感染症は、卵管内部や周囲の癒着を引き起こす恐れがあり、子宮外妊娠のリスクを高める原因の一つです。
次の妊娠を希望する場合には、一度検査を受けておくと良いでしょう。夫婦のどちらかが感染している場合、2人同時に検査と治療を行う必要があります。
子宮外妊娠後、妊娠に向けて焦らず前向きに
子宮外妊娠を経験した後は、次の妊娠に不安を感じる人も多いと思います。ただ、一度の子宮外妊娠ですぐに不妊になるというわけではありません。
夫婦生活を再開するタイミングについては、医師に相談したうえでパートナーと良く話し合い、焦らず前向きに次の妊娠を目指せるといいですね。