妊娠を喜んだのもつかの間、実は「子宮外妊娠(異所性妊娠)」だったというケースがあります。残念ながら妊娠を継続できないだけでなく、治療が遅れると母体の命にもかかわる危険な状態です。そのため、妊娠したと思ったときに、正常妊娠か子宮外妊娠かを判別する必要があります。今回は、子宮外妊娠による妊娠検査薬の反応やつわりの有無、基礎体温の変化についてご説明します。
子宮外妊娠とは?
子宮外妊娠(異所性妊娠)とは、本来なら子宮内膜に着床するはずの受精卵が、卵管や卵巣、子宮頸管など子宮内膜以外の場所に着床してしまった状態です。ほとんどのケースが、子宮内へと移動する途中の卵管内に着床して起こります。
子宮外妊娠が起こる確率は約1%とそれほど高くありませんが(※1)、誰にでも起こり得るものです。特に以下の項目に当てはまる人は、子宮外妊娠のリスクが高いことがわかっています(※1,2)。
・過去に子宮外妊娠の経験がある
・卵巣・卵管手術を受けたことがある
・性器クラミジア感染症や子宮内膜症の既往歴がある
・子宮内避妊器具を挿入していた
・人工妊娠中絶の経験がある
・体外受精による妊娠である
子宮外妊娠でも妊娠検査薬で陽性反応が出る?
妊娠検査薬を使うと、子宮外妊娠でも、正常な妊娠と同じく陽性反応が現れます。
妊娠検査薬は、妊娠すると分泌される「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモン」を感知して妊娠判定をします。
子宮外妊娠であっても受精卵がどこかに着床したことに変わりはなく、形成中の胎盤にある絨毛がhCGホルモンを分泌するため、妊娠検査薬が陽性反応を示すのです。
子宮外妊娠でもつわりがあるの?基礎体温は高いまま?
子宮外妊娠でも体内のホルモンバランスは変化するので、つわりなどの自覚症状が現れることがあります。妊娠初期症状と呼ばれる、胸の張りや風邪の引きはじめのような症状もあります。
子宮外妊娠の場合は「少量の出血」「ピンク色のおりものが続く」といった症状が現れることがありますが、正常妊娠でも初期に少量の出血が見られることは珍しくないため、これだけで判別することはできません。
また、基礎体温も正常妊娠と同じように高温期が維持されるので、基礎体温を測っていたとしても子宮外妊娠に気づくのは困難です。
つまり、妊娠検査薬で陽性反応があり、基礎体温の高温期が続いており、つわりなどの自覚症状があったとしても、医師から「正常に妊娠しています」と告げられるまで、子宮外妊娠の可能性はゼロではないといえます。
子宮外妊娠を早期発見するには?
子宮外妊娠を早期発見するには、産婦人科で超音波検査を受けるしかありません。
正常妊娠であれば、妊娠5~6週目頃に、赤ちゃんを包んでいる「胎嚢」という袋が子宮内に見えはじめますが、それが確認できないと子宮外妊娠が疑われます。
妊娠週数は、最後に生理が来た日を「妊娠0週0日」と数えます。妊娠検査薬で陽性反応が出たら、生理予定開始日から1~2週間後(妊娠5~6週目)に産婦人科を受診して、超音波検査で胎嚢の有無を確認してもらいましょう。
妊娠検査薬や自覚症状だけで「妊娠した」と思って病院を受診しないでいると、子宮外妊娠、特に卵管妊娠の場合、卵管内で受精卵が大きくなって「卵管破裂」を招く危険性があります。妊娠検査薬で陽性反応を示した場合は、遅くても妊娠6~7週目までには病院を受診するようにしてください。
子宮外妊娠の場合、治療は必要?
子宮外妊娠と判明した場合、全身の状態がかなり安定していれば、特に治療を行わず経過観察となることもありますが、たいていは症状の程度に応じて治療が必要になります。
薬物療法で胎嚢の成長を抑えたり、卵管から胎嚢を取り除くために腹腔鏡下手術などを行ったりします。卵管が破裂するなど緊急度が高い場合には、手術で卵管ごと切除することもあります。
同じ側の卵管における子宮外妊娠の再発を防ぐには、卵管切除が最も確実な方法ですが、次の妊娠可能性は下がってしまうため、慎重に検討する必要があります。
子宮外妊娠は早期発見が大切
子宮外妊娠は誰の身にも起こる可能性があり、最悪の場合、卵管が破裂してしまうと出血性ショックでママの命に危険が及ぶこともあります。また、手術で卵管ごと切除しなければならないケースもあるので、今後も妊娠を望む場合は特に、子宮外妊娠の早期発見が大切です。
子宮外妊娠以外でも妊娠・出産には様々なトラブルがあるので、妊活中・妊娠中に何か変だと感じたときはすぐ産婦人科の医師に相談してください。