女性の社会進出や晩婚化が進み、年々、出産する年齢も上がっています。第一子の平均出産年齢は、2005年が29.1歳だったのに対し、2021年は30.9歳で、16年で2歳ほど遅くなっていることがわかります(※1)。
しかし、年齢とともに妊娠する力は落ちる傾向があるため、もし妊活を始めるなら早いに越したことはありません。
今回は、30代の妊活の方法や普段の生活で何を心がければいいのかをご紹介します。
30代が妊活を早く始めたほうがいい理由は?
30代の女性が妊活を早く始めたほうがいい理由は、年齢を重ねるにつれて以下のような傾向がみられるようになるからです。
妊娠しにくくなる
日本生殖医学会のデータでは、不妊の頻度は25~29歳が8.9%なのに対し、30~34歳では14.6%、35~39歳では21.9%、40~44歳では28.9%と、30歳を過ぎると自然妊娠する確率が減っていくことがわかります(※2)。
女性は生まれた時点で、一生に排卵できる卵子の数が決まっていて、年齢とともに卵子の数は減り、古くなります。そのため、歳を重ねるにつれて「卵子の質」が低下して妊娠しにくくなるといわれています(※3)。
流産の確率が上がる
年齢を重ねるにつれて、妊娠に至っても流産してしまう確率が上がります。
妊娠初期の流産の原因は、胎児側の染色体異常がほとんどです。年齢とともに卵子の質が低下することによって染色体異常の発症率が増加するため、流産の確率も高くなると考えられています(※4)。
妊娠中の病気のリスクが高まる
年齢が上がると妊娠中に母体に負担がかかりやすくなるため、病気になるリスクも高まります。
特に、妊婦さんと赤ちゃんの命に関わる恐れもある「妊娠糖尿病」や「妊娠高血圧症候群」などには注意が必要です。妊娠糖尿病は35歳以上、妊娠高血圧症候群は40歳になると発症のリスクが高まります(※5)。
他にも、全身が疲れやすくなる甲状腺疾患、流産の原因にもなる子宮筋腫、胎盤が子宮口を塞いでしまう前置胎盤などを発症する確率が上がるとされています(※6,7,8)。
30代の妊活の方法や生活で心がけたいことは?
実際に30代で妊活を始めるときは、どのようなことを行うといいのでしょうか。ここでは、30代に向けたおすすめの妊活の方法や心がけたいことを紹介します。
基礎体温を把握する
妊活の基本はまず排卵日を把握することです。排卵日に合わせて性行為をすれば、妊娠の可能性は高まります。
排卵日の予測の方法として、最も一般的なのが基礎体温を毎日記録することです。
小数点第2位まで表示できる専用の基礎体温計で計測し記録することで、排卵日や生理を予測できます。専用アプリを使うと管理しやすいのでおすすめですよ。
食生活に気をつける
妊活中は特に栄養バランスの整った食事を心がけましょう。1日3食、いろいろな種類の食材を食べることで、しっかりと栄養をとることができます。
根菜や生姜など、体を温める食材を意識的に摂るのもおすすめです。
また厚生労働省は、妊活中の女性は妊娠する1ヶ月以上前から葉酸を摂取することを推奨しています(※9,10)。
妊娠前から妊娠初期(特に妊娠3ヶ月まで)にかけて葉酸を適切に摂取することで、生まれてくる赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減できるからです。
妊活中から妊娠初期までの葉酸の推奨量(1日あたり)は、食事から240μg、サプリメントなどの強化食品から400μgです(※11)。
ただし、葉酸摂取量の上限は、30〜40代の女性で1,000μg(1mg)/日とされているので、摂りすぎには注意しましょう(※11)。
適度に運動する
妊娠しやすい体を作るためには、適度な運動も効果的です。体を動かすことで、血行を促進して冷えを改善する効果やホルモンバランスを整える効果が期待できます。
ヨガやストレッチ、ウォーキングなど、毎日続けられるものがおすすめです。
ストレスを解消する
妊娠するためには、まず毎月きちんと排卵していることがポイントです。
しかし、過度なストレスがかかると、排卵に必要なホルモン分泌の指示を出す脳の機能がうまく機能せず、排卵障害が起こることがあります(※12)。
休みの日には遊びに出かけたり、趣味に時間を使ったりと、上手にストレス解消ができるといいですね。
また、できるだけ睡眠はしっかりとり、疲れを溜めないようにしましょう。
睡眠をしっかりとる
妊活に睡眠が効果的な理由には、睡眠によって分泌される成長ホルモンと睡眠ホルモンの働きがあります。
眠りが深いときに分泌される成長ホルモンには、女性ホルモンの分泌を調整する働きがあり、ホルモンバランスを整えてくれます。
また、睡眠ホルモンは、卵子を攻撃する活性酸素のはたらきを抑え、睡眠をしっかり取ることで卵子が成熟しやすくなるとも考えられています。
仕事などで忙しいかもしれませんが、できるだけ規則的に睡眠がとれるように時間は確保しましょう。
検査を受けて体の状態を知る
30代の妊活では、どのタイミングで不妊治療を始めるべきか悩むこともあるかもしれません。
基本的な「不妊」の定義は、避妊をせずに通常の性行為を継続的に行っても1年間妊娠しない場合をいいます(※13)。
しかし30代で妊娠を希望している場合は、早めに産婦人科や不妊専門の病院を受診するのがおすすめです。
病院では、妊活の方法が適切かどうか、妊娠の確率をもっと高める方法はあるかどうか、といったことを確認し、状況に応じて不妊の検査を受けられます。
不妊の原因は男性にある可能性もあるので、受診の際はパートナーと一緒に行くといいですよ。
30代の妊活はパートナーと協力しながら取り組もう
30代は、女性も男性もライフスタイルや体の変化が起こりやすい時期です。赤ちゃんが欲しいと思ったら、なるべく早く妊活を始めてみてくださいね。
※1 厚生労働省 令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況 「結果の概要」p.5
※2 日本生殖医学会「一般のみなさまへ:Q22. 女性の加齢は不妊症にどんな影響を与えるのですか? 」
※3 日本生殖医学会「一般のみなさまへ:Q21. 女性の妊娠・分娩に最適な年齢はいくつくらいですか?」
※4 日本生殖医学会「一般のみなさまへ:Q23.女性の加齢は流産にどんな影響を与えるのですか?」
※5 株式会社メディックメディア『病気がみえるvol.10 産科 第4版』pp.103,,200
※7 日本産婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020」p.279
※9 厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針〜妊娠前から、健康的なからだづくりを〜解説要領」
※10 厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」p.55
※11 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版」pp.232-237,262
※12 株式会社メディックメディア『病気がみえる Vol.9 婦人科・乳腺外科 第3版』p.33
※13 日本産科婦人科学会「不妊症」