ビタミンB12が妊娠中に果たす役割は?葉酸サプリで摂取できる?

監修専門家 管理栄養士 渡辺 亜里夏
渡辺 亜里夏 神奈川県立保健福祉大学卒業後、予防医学に興味を持ちドラッグストアへ就職。その後独立し、現在はフリーランスの管理栄養士として特定保健指導、ダイエット指導、コラムの執筆、企業様での研修などを中心に活動。い... 監修記事一覧へ

ビタミンB12は、「赤いビタミン」とも呼ばれ、悪性貧血を防ぐ働きをする栄養素。特に妊娠中は、葉酸と並んで重要な役割を果たしてくれます。では妊婦さんにとって、必要なビタミンB12はどのくらいの量なのでしょうか?

今回は、ビタミンB12の役割や必要摂取量のほか、ビタミンB12を含む主な食品や葉酸サプリメントについてもご紹介します。

ビタミンB12とは?貧血を防いでくれるの?

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ビタミンB12は、ビタミンB群に含まれる栄養素です。葉酸と協力して、骨髄で赤血球のヘモグロビン合成を促します。これにより、巨赤芽球性貧血(悪性貧血)を予防することから、「赤いビタミン」と呼ばれることもあります。

ほかにも、肝臓を再生するためのたんぱく質や、細胞の新生に必要な核酸(DNA、RNA)を作るのに重要な役割を果たします。また、脂肪の代謝、中枢神経の機能維持といった働きもあります(※1)。

妊娠中に必要なビタミンB12の摂取量は?

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厚生労働省によると、妊娠している女性に推奨されるビタミンB12の摂取量は1日あたり2.8μgです。一般成人女性の推奨摂取量は2.4μgであり、妊婦さんは通常よりもやや多くビタミンB12を摂取することが求められています(※2)。

ビタミンB12欠乏症とは?赤ちゃんに影響する?

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ビタミンB12は腸内細菌によっても合成されるため、通常の食事では不足しないと言われています(※1)。

しかし、ビタミンB12は、主に動物性食品に含まれている栄養素です。植物性食品にはほとんど含まれていないため、妊婦さんや授乳中の女性が菜食主義者(ベジタリアン)や完全菜食主義者(ビーガン)である場合、赤ちゃんもビタミンB12が不足する可能性があります(※3)。

また、胃酸分泌が低いことや、小腸疾患などにより十分に吸収がされないことも、ビタミンB12が欠乏する原因となりえます(※4)。

ビタミンB12が不足すると、悪性貧血が起こり、疲労感、めまい、体力低下、食欲不振、体重減少などの症状を引き起こします。これを「ビタミンB12欠乏症」と呼びます。

この欠乏症が重症化すると、手足のしびれや、チクチクする痛みといった神経症状、記憶力の低下や抑うつが起こることもあります(※3)。

乳幼児のビタミンB12欠乏症の症状としては、発育障害、運動障害、特有の成長遅延、悪性貧血などがあります(※3)。赤ちゃんへの影響を防ぐためには、妊娠中・授乳中にママ自身がビタミンB12の摂取不足に気をつけることが重要といえます。

ビタミンB12と葉酸の関係は?

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葉酸は、ビタミンB12と協力して、赤血球を作り出す働きがあります。胎児が発育する妊娠中や、乳児を育てる授乳中には特に不可欠な栄養素で、厚生労働省は「少なくとも妊娠の1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間、食事からの摂取に加えて、葉酸サプリメントを1日0.4mg(400μg)摂取することで、神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することが期待できる」としています(※5)。

ただし、葉酸の過剰摂取にも注意が必要です。葉酸を多量に取ると貧血症状は改善しますが、ビタミンB12欠乏症の診断に影響を与えるため、ビタミンB12欠乏症であることに気づきにくくなります(※6)。様々な栄養素がチームで働いているので、バランスよく摂ることが必要なのです。

このことを踏まえ、厚生労働省は「健康な成人は1日に1,000μg以上の葉酸を取るべきではない」としています(※3)。

ビタミンB12が摂取できる食品は?

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文部科学省の「食品成分データベース」を参考に、ビタミンB12を含む食品をいくつかご紹介します(※7)。

しじみ

しじみには、水煮100gあたり約81μg、生のしじみ100gあたり約68μgのビタミンB12が含まれています。しじみの身は1つあたり約1.4g程なので、1日4~5つ食べるだけでも、1日の推奨摂取量である2.8μgを摂ることが可能です。

牡蠣(カキ)

生牡蠣は100gあたり約28μgとビタミンB12を豊富に含んでいます。しかし、生牡蠣は、妊婦さんにとって「ノロウイルス」を引き起こす危険性がかなり高いため、牡蠣フライやアヒージョなど、充分に加熱処理された状態で食べるようにしましょう。

カタクチイワシ

カタクチイワシは、加工方法によってビタミンB12の量が異なります。生で食べる場合。1匹(10g)あたり約1.4μgのビタミンB12を含むので、2匹食べれば、1日の推奨摂取量をクリアできる食材です。100gあたりのビタミンB12含有量でいうと、煮干しや田作りの方が多くなります。

ほたるいか

ほたるいかには、生だと100gで14μg、燻製だと100gで約27μgのビタミンB12が含まれています。イカは低カロリー・高タンパク質で知られていますが、妊婦さんは食べすぎに注意し、必ず火を通して食べるようにしましょう。

のり

焼のり100gあたり、約57μgのビタミンB12が含まれています。20×20cmほどの標準的な焼のり1.5枚で、妊婦さんが1日に摂りたいビタミンB12の量を満たすことができますよ。

妊娠中は控えた方が良い、ビタミンB12が豊富な食品は?

鶏 レバー

牛や鶏のレバーにもビタミンB12が豊富に含まれていますが、妊娠中に食べることはできるだけ控えた方がいいでしょう。それは、レバーに含まれる「レチノール」という栄養素を妊娠中に過剰摂取すると、胎児の奇形リスクが高まるといわれているからです。

特に妊娠初期(妊娠15週まで)は、食べ物による胎児への影響が大きい時期なので注意してくださいね。

ビタミンB12は、葉酸サプリメントでも摂れる?

葉酸サプリ

先ほどご紹介したとおり、ビタミンB12は魚介類や藻類に多く含まれています。しかし、妊娠初期のつわりや偏食、食欲減退により、食べられないものがある場合には、サプリメントを活用するのも一つの方法です。多くの妊婦さんに愛飲されている葉酸サプリには、ビタミンB12を豊富に含むものもありますよ。

下の記事では、「充分な量の葉酸が摂れる」「ビタミンB12やほかの栄養素も一緒に摂れる」という基準をクリアしたおすすめの葉酸サプリをいくつかご紹介しています。あわせて参考にしてくださいね。

妊婦は、ビタミンB12を食品や葉酸サプリから上手に摂取しましょう

貧血やめまいが起こりやすい妊娠中の女性にとって、赤血球のヘモグロビン合成を促してくれるビタミンB12は強い味方です。妊婦さんのビタミンB12が欠乏してしまうと、お腹の赤ちゃんにも影響してしまう可能性があります。

体内に吸収されるビタミンB12の量には限界があり、少し摂りすぎたぐらいでは過剰症になる心配はありません。魚介類や藻類などの食品と、葉酸サプリメントをうまく組み合わせて摂取するようにしたいですね。

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