産後ママの心身は本当に大変!パパの支えが必要な理由とは?【パパペディア】

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

出産前にパパが知っておくべきなのが、出産直後のママの状態です。

トツキトオカ体の中で赤ちゃんを育て、生み出すのは、本当に大変な仕事です。それゆえ出産後のママの体には大きなダメージが残り、心にも大きな変化が起こります。

どのような変化が起こるのか出産前にしっかりと頭に入れ、ダメージの大きい産後のママを支えられるよう準備しておきましょう。

産後のママの変化①体の痛み・不調

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出産はたくさんのエネルギーを使うので、どれだけお産がスムーズだったとしても、女性の体は大きなダメージを受けています。医学的にも、出産の影響を受けた体が妊娠前の状態に戻るまで6~8週間かかるとしており、この期間を「産褥期」と呼びます(※1)。

出産の疲れから体が回復して日常生活に徐々に復帰するまでには、最短でも産後3週間、長い人は2ヶ月ほど必要なこともあります。

具体的には、以下のような不調が産後ママに起こる可能性があります。

後陣痛:分娩後2~3日続く下腹部の痛み

後陣痛とは、下腹部の痛みのことを指します。

出産すると子宮の中は空っぽになるので、子宮を収縮させて妊娠前の状態に戻す必要があります。これは「子宮復古」と呼ばれる現象で、下腹部に痛みを伴います。

後陣痛の痛みの程度は人それぞれで、「生理痛に似た鈍い痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」などといわれます。

後陣痛は分娩後2~3日で治まるのが一般的です(※2)。しかし痛みを感じる期間には個人差があり、人によっては1週間ほど続くこともあります。

悪露(おろ):産後1ヶ月ほど続く分泌物の排出

悪露とは、子宮や産道が妊娠前の状態に戻るときに排出される分泌物のことです。

悪露には、血液やリンパ液、粘液、子宮内に残った卵膜の一部などが含まれています。血が混じっていて赤っぽく、血生臭いので、生理の出血によく似ています。

上記で触れた「子宮復古」で子宮が収縮することによって徐々に止血され、一般的に産後1ヶ月ほどで出なくなります。

骨盤のゆがみ:長引く腰痛につながることも

出産時、赤ちゃんを子宮から体外へと出すために、骨盤は最大限に緩みます。そのため産後1~2週間は骨盤が緩く、開いた状態になっていて、ママは思うように体を動かすことができません。

骨盤の戻りが遅くなると、ゆがみや炎症によって骨盤周りに痛みを感じる人が多く、人によっては歩けないほどの腰痛が起きる場合もあります。

切開縫合部分の痛み:産褥期中は痛みが続く

赤ちゃんの頭の通り道を広げるために会陰切開(えいんせっかい)をした場合や、赤ちゃんが産まれるときにできた会陰裂傷を縫合した場合、帝王切開で出産をした場合は、産後に傷口がズキズキと痛みます。

一般的に、産褥期の間は痛みが続くことが多いようです。

産後の主な体調不良まとめ

● 最低でも産後6〜8週ほど、出産の疲れがとれない
● 分娩後2~3日ほど、下腹部の痛みが続く(後陣痛)
● 産後1ヶ月ほど、分泌物の排出が続く(悪露)
● 産後1~2週間ほど、骨盤のゆがみで体を動かしづらくなる
● 産褥期中、出産時の切開縫合部分の痛みが続く

産後のママの変化②ホルモンバランスの乱れ

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妊娠中は、妊娠を維持するために「黄体ホルモン(プロゲステロン)」と「卵胞ホルモン(エストロゲン)」がさかんに分泌されます。

これらは産後に分泌量が急激に減少し、代わりに母乳を作るのに欠かせない「プロラクチン」や「オキシトシン」というホルモンの分泌量が増えます。

このホルモン量の急激な変化により、ママの体と心にはにいろいろな変化がおこり、以下のようなトラブルが起こることがあります。

肌や髪の毛に変化が起こる

ママの体には、下記のような変化が起こります。

● 肌が敏感になってかゆみや湿疹、かさつきなどが起こる
● シミができる
● 毛が抜けやすくなる

特に抜け毛は産後脱毛症や分娩後脱毛症とも呼ばれ、多くのママが経験します。多くは産後6ヶ月前後でおさまりますが、個人差があり、産後1年以上続く人もいます。

「愛情ホルモン」でパパに対して攻撃的になる

産後に分泌が増えるオキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれます。オキシトシンの分泌量が増えるとママは赤ちゃんをより愛おしく感じるようになり、母性愛が強まるといわれています。恐怖心や不安、ストレスを軽減し、心を落ち着かせてくれる作用もあります。

一方、オキシトシンには「赤ちゃん以外の人に攻撃的になる」作用があることもわかってきています。野生動物のメスが赤ちゃんを守るために外敵を威嚇するのと同じように、人間も母性愛が強くなることで、赤ちゃん以外をすべて「敵」とみなしてしまうのです。

この攻撃性は、育児に協力的でないパパに対して発揮されてしまうことも十分ありえます。オキシトシンを親子・夫婦間の愛情を深める方向に働かせるためにも、パパが積極的に育児に参加するのは重要なことです。

オキシトシンの分泌量が増えることによる、ママの心の変化

● 母性愛が強まる
● 恐怖心や不安が減少し、ストレスが軽減される
● 赤ちゃん以外の人に攻撃的になる

涙もろくなったり、怒りっぽくなったりする

出産後、「わけもなく涙が出る」「なんでもないことにイライラする」といった症状が現れることがあります。これは「マタニティブルーズ」といい、出産後3~10日の間に見られる、一過性の情緒不安定のことです(※3)。

出産を終えたママの約30%が発症するとされており、最も特徴的な症状として涙もろさが見られます。そのほかにも、軽度の抑うつや不安感、集中力の低下などの症状があります(※3)。

マタニティブルーズは、妊娠中や出産後の緊張・不安、睡眠不足、体調不良、疲労などが重なることで発症します。一般的に2週間ほどで治ることが多く、特別な治療を行わないケースがほとんどです。

この時期の感情の乱れは、ママ自身もコントロールできません。産後のママは感情の起伏が激しくなる可能性があることを頭に入れておき、何かあったときは「ホルモンの仕業だな」と理解して、ママに寄り添ってあげてくださいね。

マタニティブルーズの特徴

● 産後3~10日に一過性の情緒不安定が現れる
● 約30%のママが発症する
● 2週間ほどで治まることが多い

産後のママの変化③産後うつ

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衝撃的なことに、産後1年未満に死亡した女性の死因で最も多いのが「自殺」です(※4)。その要因となるのが「産後うつ」だといわれています。

産後うつとはその名の通り、産後に現れるうつ症状のことです。産後の女性の5~10%が発症すると考えられています(※5)。

一般的に、先に触れたマタニティーブルーズは数週間で治まります。しかしそこに育児疲れや周囲のサポートを得られないことへの孤独感、家事と子育てを両立できないことへの罪悪感などが加わると、産後うつを発症してしまうことがあるのです。

パパや両親の協力を得られず1人で育児を抱え込んでいるママほど発症しやすくなります。「家事も育児も完璧にこなしたい」と考えすぎてしまう人や、責任感が強い人は特に注意が必要です。

産後うつに気づくには

重症化すると虐待や自殺につながるリスクがあるため、産後うつは早期発見が大切です。とはいえママが自分で気づくのは難しいので、パパが変化に気づいてあげる必要があります。ママの不安に寄り添う夫婦のコミュニケーションを、日頃から欠かさないようにしてください。

また産後ママの精神状態をはかる方法に「エジンバラ産後うつ病質問票」があります。下記の記事に質問リストがあるので、パパから見てママの心の状態に不安を感じたら、チェックするようすすめてみてください。

産後はパパも精神が不安定になることがある

国立成育医療研究センターは以下のような調査結果を発表しています(※6)。

● 生後1歳未満の子供がいるふたり親家庭のうち、夫婦が同時期に「メンタルヘルスの不調のリスクあり」と判定された世帯:3.4%
● 父親が産後1年間に「メンタルヘルスの不調のリスク」ありと判定される割合:11.0%

産後のメンタル不調は、ママだけに起こることではありません。パパ自身の心にも不調が訪れるリスクがあるということを知っておきましょう。

産後うつの注意点

● 産後女性の5~10%は産後うつになる
● 産後うつは、虐待や自殺につながるリスクがある
● ママが自分で気づくのは難しいので、パパの細やかなコミュニケーションが大切
● パパも産後にメンタルヘルスが不調になるリスクは十分にある

産後のママは、パートナーの支えが必要不可欠

産後ママ サマリー

産後のママの心身が、いかに満身創痍の状態かわかりましたか?そんなママを一番近くで支え、いつでも味方でいられるのは、パパであるあなたです。

赤ちゃんを元気に育てていくためにも、ママの不調を事前に理解し、できるサポートを考えていきましょう。

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