出産が終わってから涙もろくなったり、ぼーっとしてしまったりする。そんな症状があったら、マタニティブルーズかもしれません。あまり聞きなれない言葉ですが、実は出産を終えたばかりのママによく見られるものなんです。そこで今回は、マタニティブルーズとは何か、どのような原因で起こるのか、また、産後うつ病との違いや対処法などをご紹介します。
マタニティブルーズとは?
マタニティブルーズとは、出産後3~10日の間に見られる、一過性の情緒不安定のことを指します(※1)。
出産を終えたママのうち、約30%が発症するとされており、最も特徴的な症状として、涙もろさが見られます。そのほかにも、軽度の抑うつや不安感、集中力の低下などの症状があります(※1)。
これらの症状は、一般的には2週間ほどで元どおりになることが多く、特別な治療を行わないケースがほとんどです。しかし、2週間経っても治らない場合には、他の精神疾患の可能性があるため、通院が必要になる場合があります。
マタニティブルーズの原因は?
マタニティブルーズは、妊娠合併症や赤ちゃんの異常、長期間の入院など、妊娠中や出産後の緊張・不安や、睡眠不足、体調不良、疲労などが重なることで発症します。
このとき体内では、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロン、幸せを感じる神経伝達物質であるエンドルフィンやセロトニンが大きく変動することで、精神的に不安定な状態を引き起こしていると考えられています(※2)。
マタニティブルーズと産後うつは違う?
マタニティブルーズが一過性の生理的な変化であるのに対し、産後うつ病は産褥精神障害と呼ばれる病気の一種です。
産後うつ病の原因は、女性ホルモンの変化でストレスへの抵抗力が落ちた脳が、産後の疲れやストレスにさらされることで起こると考えられています。
特に、育児や家事面でサポートが不十分な場合や、赤ちゃんに障害がある場合、望まない・望まれない妊娠だった場合などに起こりやすいとされています(※1,3)。
産後うつ病を発症すると、抑うつや不安、焦りや不眠など、一般的なうつ病の症状が現れ、特に「私は母親失格だ」という自分を責める気持ちなどが強く現れます(※3)。
マタニティブルーズが治療をしなくても短期間で治るのに対し、産後うつ病は治療を行わないと重症化したり、治っても再発を繰り返したりすることがあります。その結果、虐待や育児放棄など、自分だけでなく、子供にも悪影響を及ぼすことがあります。
そのため、産後うつ病の症状が見られる場合には、できるだけ早く治療を始めることが推奨されています。
マタニティブルーズになったらどうする?
マタニティブルーズ自体はあくまで一過性で、薬などで治療をしなくても回復します。
しかし、マタニティブルーズは、発症者の約5%が産後うつ病を発症するという報告があるため、産後うつ病の発症を防ぐことが大切です(※1)。
マタニティブルーズになったら、下記のようなポイントを意識して、産後うつ病を予防しましょう。
1. 家事や育児を家族に任せる
出産を頑張ったママの体はくたくた。ホルモンバランスも崩れてストレスに弱い状態です。そんなときは、パパや他の家族に日々の家事や育児を手分けしてもらいましょう。
パパが休みの日は育児をまかせ、ママは睡眠時間を確保するのも、産後うつ病の予防にとても有効です。
ここで重要なのは、家事を分担しているからといって自分を責めないこと。つらいときには助け合うのが家族です。第一に優先するべきはママの体調を戻すことなので、精神的にも、肉体的にも負担を減らしていけるといいですね。
2. 完璧を求めない
赤ちゃんが生まれたうえに、ママの体は出産で大きな負担を感じています。これまでと同じように家事に時間を割けなくなるのは当然です。出産前のようにできなくても、自分を責める必要はありませんよ。
また、育児においても完璧を求めてはいけません。赤ちゃんは一人一人に個性がありますし、同じ日に生まれた子でも成長の度合いは異なります。他の子と比べて不安を抱く必要はありませんよ。
赤ちゃんのお世話が思い通りに行かなくても大丈夫。慣れない間は、うまくいかないのが当然です。家族や周りのサポートを受けながら、ママは自分の体の回復を一番に考えてくださいね。
マタニティブルーズは心配しすぎないで
マタニティブルーズは一過性の生理現象のため、マタニティブルーズの症状が現れても深刻に考える必要はありません。
マタニティブルーズで、気をつけたほうがいいのは、産後うつ病への移行です。
産後うつ病を発症しないために、育児や家事などの協力体制を家族にお願いし、甘えられるところは大いに甘えることをおすすめします。
また、もし2週間以上経っても、マタニティブルーズの症状が出ていたら、なるべく早めに病院を受診しましょう。その際、もし産後うつ病と診断されたとしても、治療を行えば治るものなので、悲観する必要はありません。引き続き周りの人にサポートしてもらいながら、じっくりと治療を行うことが大切ですよ。