正常な月経(生理)の状態から外れたものを「月経異常」と呼びます。命にかかわる重大なものではないので軽視されがちですが、月経異常があると妊娠しやすさに影響が出たり、日常生活がつらくなったりすることもあります。そこで今回は、月経異常の種類や原因、症状、治療法についてご説明します。
月経異常とは?
月経異常とは、「正常な月経の範囲外にある状態」をいいます。月経異常と一口にいっても、その種類は様々で、以下のように分類されています(※1)。
種類 | 正常範囲 | 異常の名称 |
初経の時期 | 10~14歳 | 10歳未満:早発月経 15歳以上:遅発月経 |
閉経の時期 | 43~54歳 | 43歳未満:早発閉経 55歳以降:遅発閉経 |
経血量 | 20~140ml | 20ml以下:過少月経 140ml以上:過多月経 |
持続期間 | 3~7日 | 2日以内:過短月経 8日以上:過長月経 |
周期 | 25~38日 | 月経がない:無月経 24日以内:頻発月経 39日以上3ヶ月未満:稀発月経 |
症状 | 月経中に起こる症状:月経困難症 月経前に起こる症状:月経前症候群 |
こうした月経異常は、どれか1つだけが現れる人もいれば、複数が同時に現れる人もいます。次からは、それぞれの症状や原因の違いを具体的に見ていきましょう。
月経異常1. 初経の年齢
通常、初経は10~14歳に起こります。それより早い、または遅い場合、月経異常と分類されます。
初経が早い:早発月経
10歳未満で初経が起こった場合、ホルモン値の異常のほか、頭蓋骨内の腫瘍や中枢神経性障害、甲状腺機能低下症などの原因が隠れている可能性があり、注意が必要です(※1)。病院で検査を受け、適切な治療を受けることが大切です。
初経が遅い:遅発月経
遅発月経は15歳以降に初経がくることをいいます。もし18歳になっても月経が来ない場合は、「原発無月経」と呼ばれます。特に原因がない場合は様子を見ますが、原発性無月経の場合、下垂体機能の低下や、性染色体の異常がある場合もあります。
月経異常2. 閉経の年齢
閉経は通常43~54歳の間に起こります。この範囲に当てはまらない場合は、月経異常です。
閉経が早い:早発閉経
早発閉経の起こる割合は、30歳までは1,000人に1人、40歳までで100人に1人ほどです(※2)。精神的な不安定やほてり、頭痛など、更年期障害のような症状が特徴で、徐々に生理が来なくなります。
原因は、甲状腺機能低下症などの自己免疫性疾患、卵巣の手術、放射線療法の影響などです。早発閉経になったら、ホルモン剤を使って女性ホルモンを補う治療を行います。
閉経が遅い:遅発閉経
遅発閉経は女性ホルモンの作用が何らかの原因で長く続くことで起こります。特に治療は必要ありませんが、子宮体がんや乳癌のリスクが上がるので注意が必要です(※1)。
月経異常3. 経血量
月経時の経血量の正常な範囲は20~140mlで、これよりも多い、または少ないときは月経異常です。経血量を自分で測ることは難しいと思うので、ナプキンを交換する頻度や見た目の量などで判断しましょう。
経血量が多い:過多月経
出血が最も多い日に、ナプキンを30分に1回ほどのペースで交換しないと間に合わないようなときは、過多月経が疑われます(※1)。
子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫などの婦人科疾患が原因となっていることが多く、その原因疾患を治療することで過多月経も改善されていきます。
経血量が少ない:過少月経
生理がきてもほとんど経血が出ないときは過少月経の可能性があります。過少月経の主な原因は、生理のような出血があるのに排卵が起こっていない、「無排卵月経」や、女性ホルモンが上手く機能していない「黄体機能不全」などです(※1)。
基礎体温や血液検査、内診などの結果で原因を判断し、ホルモン剤の服用などで治療を行います。
月経異常4. 持続期間
月経の持続期間は3~7日間が正常で、それよりも長いか短いと月経異常です。持続期間の異常は経血量の異常と一緒に現れることが多く、過多月経の場合は期間も長くなり、過少月経なら期間は短くなる傾向にあります。
持続期間が長い:過長月経
主な原因は過多月経と同じく、子宮筋腫や子宮腺筋症などの婦人科疾患です(※1)。原因疾患の治療を行うことで、過長月経も改善されます。
持続期間が短い:過短月経
過短月経の場合、出血期間が短すぎて、月経があったかどうかもわからないほどになることがあります。主な原因は過少月経と同じく、無排卵月経などです(※1)。こちらも原因の治療を行うことで改善されます。
月経異常5. 周期
正常な月経周期は25~38日で、この期間から外れた場合は月経異常になります。
月経周期が短い:頻発月経
頻発月経が起こる主な原因は、黄体機能不全や無排卵周期症などです。稀ですが子宮体がんや子宮頸がんなどが隠れている可能性もあるので、きちんと検査を受け、治療を行うことが大切です(※1)。
月経周期が長い:稀発月経、無月経
稀発月経はストレスなどでも起こりますが、多嚢胞性卵巣や糖代謝の異常などの可能性もあります。また、妊娠の可能性もあるので、月経が来ないときは一度妊娠検査薬で調べてみることをおすすめします。
月経がなかなか来なくなり、3ヶ月以上止まったままの場合は、稀発月経ではなく「無月経」と診断されます。
月経異常6. 症状
月経前や月経中には、多くの女性が不快症状を感じるものですが、それらが日常生活に支障をきたすほどになった場合、月経異常と診断されます。不快症状が現れるタイミングで以下のように分類されます。
月経中に現れる:月経困難症
主に下腹部痛、腰痛、頭痛、吐き気などが見られ、寝込んだり動けなくなったりと、日常生活に支障をきたします。
子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系の病気が原因の場合と、ホルモンバランスの乱れなどが原因になる場合があり、原因の治療を行うことで症状もおさまります(※1)。
月経前に現れる:月経前症候群(PMS)
月経が始まる3~10日前に身体的・精神的な不快症状が起こるものをいいます。イライラしたり怒りっぽくなったり、頭痛や腹痛が現れたりと、症状は人によって異なります。
原因ははっきりわかっていませんが、ホルモンバランスが関係しているのではないかと考えられています(※1)。
月経異常は体からのSOS
「生理が短いから楽だ」「2ヶ月くらい生理がないけどそのうちくるだろう」と、月経異常を放置してしまう人もいます。しかし、月経異常は体からのSOSです。異変が続くようなら、婦人科を受診してください。
月経異常は何らかの病気だけでなく、ホルモンバランスの乱れで引き起こされることも多いので、日頃から規則正しい生活を心がけ、こまめにストレスを発散することも大切です。自分の生理の状態を把握して、自分の体を守ってあげてくださいね。