胎児の心拍数の正常値は?早い・遅いの基準は?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

妊娠期間中は、お腹にいる赤ちゃんの状態が目に見えないので、さまざまな検査を行います。その中でも、胎児の心拍数は比較的早い妊娠週数から調べることができ、母体にも赤ちゃんにも負担がかかりません。しかし、もし検査後に赤ちゃんの心拍数が早い・遅いと言われたら…何か異常があるのでしょうか。今回は、胎児の心拍数の正常値や早い、遅いの基準についてご説明します。

胎児の心拍数はいつから確認できる?

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お腹の赤ちゃんの心音や心拍は、妊娠のごく早い時期から妊婦健診の経腟超音波(エコー)で調べることができます。だいたい妊娠6週頃には確認できます(※1)。

ただし、排卵日がずれた場合、「実際の妊娠週数」と「最終月経開始日から計算した週数」が異なることがあります。その場合、最後に生理があった日から数えた妊娠6週でも、まだ心拍が確認できず、後日あらためて受診することになります。

超音波を利用した「ドップラー聴診器」を使えば、赤ちゃんの位置や胎盤の場所、子宮の位置などにもよりますが、妊娠10~12週くらいになるとママのお腹ごしに心音を聞き取ることができます(※2)。

そのほか、妊娠中期(16週以降)であればママのお腹にラッパ型の「トラウベ聴診器」を当てて赤ちゃんの心音を聞けることもあります(※3)。

最近では、自宅でも胎児の心音を聴くことができる、家庭用のドップラー聴診器も市販されています。パートナーがなかなか一緒に妊婦健診に行けない場合などは、重宝しそうですね。

ただし、家庭用の聴診器は心拍の状態を正確に判断するために使うものではありません。あくまでも赤ちゃんとのコミュニケーションツールとして楽しみ、妊婦健診は定期的に受けるようにしましょう。

胎児の心拍数から何がわかるの?

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赤ちゃんの心拍数や心音のリズムを確認することによって、脈の状態が判断できます。脈が早すぎたり遅すぎたり、リズムが一定ではなかったりする状態を知ることで、心臓の欠陥や胎児機能不全の発見にもつながることがあります。

妊娠34~36週頃になると、「胎児心拍数モニタリング」という検査を受けることがあります。この検査のうち、人工的に子宮収縮を加えずに赤ちゃんの心拍数を観察するものを「ノンストレステスト(NST)」といいます。

胎児心拍数モニタリングでは、ママのお腹に胎児の心拍数や胎動を計測する装置をつけ、10分間の平均心拍数をもとに赤ちゃんが元気かどうかを調べます。

胎児の心拍数の正常値は?

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日本産科婦人科学会によると、お腹の赤ちゃんの心拍数が「1分間あたり110~160回」の範囲内に入っていれば正常です(※4)。

なお、胎児心拍数モニタリングでは、心拍数も含め次の4つの条件を満たせば、赤ちゃんの状態は良好と判断されます(※1)。

  • 心拍数が正常範囲内(110~160回/分)か
  • 心拍数の細かい変動(基線細変動)が正常か
  • 胎動に伴う一時的な心拍数の上昇(一過性頻脈)があるか
  • 一時的に心拍数が下がる(一過性徐脈)ことがないか

胎児の心拍数の早い、遅いの基準は?

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赤ちゃんの心拍数が早いか、遅いかは正常範囲をベースに次のように判断されます。

  • 早い(頻脈):1分間あたり160回より多い(>160bpm)
  • 遅い(徐脈):1分間あたり110回より少ない(<110bpm)

心拍のスピードが速い場合は母体・胎児の細菌感染や胎児不整脈が疑われます。また、心拍数が遅い場合は胎児不整脈の可能性もあり、いずれにせよ追加検査を行うこともあります。

ただし、この範囲からわずかに外れているからといって、絶対に赤ちゃんが危険な状態にあるとはいえません。検査を行ったあと、胎児の状態を医師から詳しく聞いてみましょう。

また、胎児の心拍数が一時的に増えたとしても、またすぐに正常範囲内に戻るのであれば、胎動に伴う正常な反応と考えられます。これを「一過性頻脈」といい、赤ちゃんが元気に動いている証拠です。

胎児の心拍数に異常が見られた場合は?

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ノンストレステストの結果、赤ちゃんが元気かどうかはっきりとわからなかった場合、追加の検査を行うことがあります。

たとえば、ママのお腹に振動や音響などの刺激を与えて、一過性頻脈が見られるかどうかを調べたり、人工的に子宮収縮を起こして出産のときの陣痛を再現し、胎児の心拍数を調べる「コントラクション・ストレス・テスト(CST)」を行ったりします(※1)。

そのほか、超音波(エコー)を使ったBPSという検査で、胎児の呼吸や胎動、筋肉の動き、羊水量などを調べることもあります(※1)。

いくつも検査を受けることになると、お腹の赤ちゃんのことが心配になってしまうかもしれません。しかし、胎児の健康状態を調べるのは、安全に分娩を行ううえで必要なことなので、落ち着いた気持ちで検査を受けられるといいですね。

胎児の心拍数で心配事があれば、健診時に相談を

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お腹の赤ちゃんの状態は外から見えないだけに、どんな小さな変化であってもママは気になりますよね。心拍数については、正常値の範囲内で、医師から問題を指摘されていないのであれば、心配はいりません。

心拍数の数値は日によって変わるのが自然なことですが、もし不安なことがあれば、妊婦健診のときにかかりつけ医に相談するようにしましょう。

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