妊娠をすると、お腹の赤ちゃんを無事に育て、産もうとして、体に様々な変化が起きます。「卵黄嚢(らんおうのう)」ができるのも、その一つです。今回は、卵黄嚢について、超音波(エコー)検査で確認する時期や、見えない場合に流産のリスクがあるのか、逆に卵黄嚢が大きいと流産の可能性が高いのかなど、よくある妊婦さんの疑問にお答えします。
卵黄嚢とは?エコーで見えるの?
卵黄嚢とは、妊娠初期にママのお腹の中で赤ちゃんが成長するのに必要な栄養を供給したり、血を作ったりするための袋のことです。
妊娠がわかったあと、産婦人科の超音波(エコー)検査で、赤ちゃんの側にある「小さな丸い円」を見た人もいるかもしれませんが、それが卵黄嚢です。
胎盤が作られ始めるまで、赤ちゃんは卵黄嚢から栄養をもらって成長していきますが、卵黄嚢の中身についてはまだ詳しくわかっていません。
卵黄嚢はいつまで必要なの?
卵黄嚢は、赤ちゃんと同じ受精卵から作られます。着床した受精卵が細胞分裂を繰り返す過程で、赤ちゃんの体(胎芽)と卵黄嚢に分かれていくのです。
「どうして卵黄嚢を作る必要があるの?」と疑問に思うかもしれませんが、妊娠初期は、母体から赤ちゃんに栄養を送り届ける仕組みができあがっていないためです。
妊娠中期以降は、お腹の赤ちゃんは胎盤を通じてママから栄養をもらいますが、妊娠15週(妊娠4ヶ月末)頃までは胎盤が形成されていません(※1)。
そこで、胎盤が作られ始めるまでの間は、赤ちゃんは卵黄嚢から栄養をもらって成長すると考えられています。
妊娠初期のつわりが始まる時期でも、卵黄嚢のおかげで赤ちゃんは成長を続けることができるというわけです。
また、卵黄嚢は赤ちゃんの血を作る働きも持っていて、妊娠2ヶ月頃に肝臓とバトンタッチするまでは、造血機能を主に担います(※1)。
妊娠7週頃から胎盤やほかの臓器が作られていくにつれて、卵黄嚢は徐々に小さくなり、妊娠12~13週頃にはその役目を終えます。
赤ちゃんと卵黄嚢をつなぐ卵黄管という管の一部は、へその緒として赤ちゃんと胎盤をつないでくれます。
卵黄嚢をエコーで見られる時期は?見えないと流産?
卵黄嚢は、妊娠5~6週頃になると赤ちゃんの姿(胎芽)と一緒に確認できることがあります。卵黄嚢が見えるのであれば、子宮内で正常妊娠しているといえます。
逆に、妊娠7週を過ぎても卵黄嚢が見えないと、「流産してしまうのでは?」と不安になってしまうかもしれませんが、卵黄嚢は小さいため、胎嚢と重なって見えないこともあります。
流産の診断基準となるのは、卵黄嚢が見える・見えないではなく、「胎嚢が確認でき、成長しているか」「心拍を認めるか」です。
「2人の子供を無事に出産したけれど、どちらのときもはっきり卵黄嚢が見えなかった」というママもいますよ。
卵黄嚢が大きいと流産の可能性が高い?
卵黄嚢は小さいことが多いといわれ、卵黄嚢が大きい場合、卵黄嚢に栄養がたまったままで、赤ちゃんへと栄養を送り届けられていないという可能性も考えられるかもしれません。
日本産科婦人科学会が示す「超音波検査のチェックポイント」によると、妊娠初期に卵黄嚢が大きすぎると予後不良、つまり流産につながる可能性がある、とされています(※3)。
ただし、卵黄嚢の大きさには個人差があり、どのくらいであれば正常といえる基準があるものでもないので、医師から「卵黄嚢が大きい」といわれても心配しすぎないようにしましょう。
卵黄嚢が大きいのは何かの病気?
特定の病気が原因で卵黄嚢が大きくなる、ということを示す医学的データは、今のところありません。
ただし、妊娠が成立しても何度も流産や死産を繰り返す場合は、卵黄嚢の大きさに関係なく不育症の可能性があるので、一度婦人科や産婦人科で検査を受けることをおすすめします。
不育症について、詳しくは下記の関連記事を参考にしてください。
卵黄嚢が大きい・見えないことを気にしすぎないで
妊娠初期は特に、どんな些細なことでも気になるものですよね。エコー検査のときに医師から「卵黄嚢がはっきり見えない」「卵黄嚢が少し大きい」などと言われたりすると、赤ちゃんは無事なのかと考えてしまうかもしれません。
しかし、この時期にできることは、きちんと妊婦健診へ行き、赤ちゃんの成長を見守ることです。気になることがあれば、その都度医師に相談し、不安を解消しましょう。