「妊婦さんにとって注意が必要な食べ物」と聞いて、どのようなものが思い浮かびますか?
絶対に食べてはいけないものばかりではなく、食べる量に注意すべき食材、時期によって避けたい食材など、さまざまあります。
ママだけでなくパパも正しい知識を持つことで、不要な制限や不安を減らし、毎日の食事を安心して楽しめるようになるといいですね。
そこで今回は、妊娠中に気をつけるべき食べ物・飲み物とその理由をご紹介します。
妊娠中に食べてはいけない食材まとめ
まずご紹介するのは、「少量でも食べてはいけないもの」です。妊婦さんでなければ大きな問題は起こりにくい食材でも、妊婦さんが食べるとお腹の中の赤ちゃんに影響が出てしまうことがあります。
食べてはいけない食材① 生もの

● 生ハム
● ナチュラルチーズ
● 肉や魚のパテ
● レバ刺し
● ユッケ
● 馬肉
● レアステーキなど、加熱不十分な肉
【魚介類】
● スモークサーモン
● 加熱不十分な二枚貝や肉類
【卵、乳製品】
● 生卵
● 未殺菌牛乳
● 低温殺菌が行われていない乳製品 など
「食べてはいけない生ものはこんなにたくさんあるのか」と驚くパパも多いかもしれません。これらの食べ物には、以下のような様々なリスクがあります。
生もののリスク① リステリア食中毒
リステリア菌は4℃以下の低温や12%食塩濃度下でも耐えて増殖することができる非常に強い菌で、妊婦さんをはじめとした免疫機能が低下している人は、特に感染しやすいとされています(※1)。
一般の人がリステリア食中毒を発症しても多くは軽症で、自然に治まります。しかし妊婦さんが感染すると、胎盤を通して胎児にも感染し、流産が起きたり生まれてきた赤ちゃんに影響が出たりすることがあるので、注意が必要です(※1)。
生もののリスク② トキソプラズマ
妊婦さんがトキソプラズマに感染すると、6~80%の確率で胎盤を通して胎児に感染し、そのうち約10%に「先天性トキソプラズマ症」があらわれます(※2)。
先天性トキソプラズマ症になると、生まれてくる赤ちゃんに脳性麻痺や髄膜炎などの症状が見られるほか、流産や死産のリスクも高まります。
生もののリスク③ 食中毒
食中毒は胎児に直接影響を及ぼすものではありませんが、食中毒の症状の1つである激しい下痢が起こると、子宮収縮を促し、流産や切迫早産につながるリスクが高くなります。
食べてはいけない食材② アロエ・ハーブ類

●ハーブ類(ネトル、ラズベリーリーフ、パッションフラワー)など
アロエ・ハーブ類のリスク
子宮収縮作用があるため、妊婦さんが摂取することで早産を引き起こす可能性があります。
アロエは皮に含まれる「アロイン」という成分に子宮収縮作用があるため、食べるときは身だけを取り出して、皮は食べないように注意が必要です。
ネトル、ラズベリーリーフ、パッションフラワーといったハーブにも子宮収縮作用があるため、妊娠中は避けるようにしましょう(※3)。
妊娠中に過剰摂取を避けたい食材まとめ
ここでご紹介する食材は、「絶対に食べてはいけない」わけではなく、「食べすぎに注意」というものです。適量を取る分にはメリットもあります。
過剰摂取を避けたい食材① 魚介類(の一部)

● 金目鯛やムツなどの深海魚
魚介類のリスク
上記の魚に含まれる「メチル水銀」という有害物質は、妊婦さんが大量に摂取すると胎盤から胎児に伝わって、発育に悪影響をもたらす危険があります(※4)。
ただし妊娠中に絶対に食べてはいけないというわけではなく、量や頻度に気をつければ食べても問題ありません。
一例ですが、量の目安は以下の通りです(※4)。
◇インドマグロ、マカジキ:1週間に約80g/お刺身1人前もしくは切り身で1切れ
◇本マグロ、メバチマグロ、金目鯛:1週間に約40g/お刺身半人前もしくは切り身で半切れ
(お刺身の1人前/切り身1切れを約80gとして)
魚にはたんぱく質やDHA、カルシウムなど妊婦さんが摂りたい栄養素が含まれているので、妊娠中の食事に取り入れたい食材です。
水銀の量は魚によって異なります。どれくらいの量なら食べてもいいのかより詳しく知りたい場合は、厚生労働省のホームページなどで確認してください。
過剰摂取を避けたい食材② 海藻類

● 昆布エキスや海藻エキスが入っている飲み物
● インスタントの昆布だし
海藻類のリスク
海藻類には甲状腺ホルモンの主原料であるヨウ素が多く含まれます。これを過剰に摂取し続けると、赤ちゃんの甲状腺機能を低下させてしまう恐れがあります(※5)。
ただし実際にはよほどの食べ過ぎに注意しておけば、大きな心配はないとも言えます。
一日に妊婦がとっていいとされるヨウ素の上限量は2,000μg(※6)。一方、食材に含まれるヨウ素の量は以下の通りです。
100g当たりのヨウ素量(※7)
◇茹でたひじき:960μg
◇かつお・昆布だし:1,500μg
◇水に戻した乾燥わかめ:1,900μg
◇焼きのり:2,100μg
海藻を1日100g単位で取り入れることはそうそうないと思います。普段の食事でヨウ素の耐容上限量を超えてしまう過度な心配はしなくていいでしょう。
なおヨウ素は胎児の骨や脳の成長を促進する働きがあり、妊娠中に摂りたい栄養素でもあります(※6)。
過剰摂取を避けたい食材③ ビタミンA(レチノール)を含む食材

●うなぎ
●あなご
●ホタルイカ
ビタミンA(レチノール)のリスク
ビタミンAは、体の抵抗力を高めたり、皮膚や粘膜を健康的に保ったりするために欠かせない栄養素ですが、妊娠中に動物性のビタミンA(レチノール)を過剰摂取すると、胎児が奇形・先天異常などの障害を持って生まれるリスクが高まるとされています(※8)。
内閣府の食品安全委員会は、妊婦さんの1日のビタミンA摂取上限量を2,700μgRE、推奨量は650~780μgRE(年齢や妊娠週数によって異なる)としています(※8)。
食品100g当たりのレチノール当量(※8)
◇うなぎのかば焼き:1,500μgRE
1日当たりに食べられる量を換算すると、うなぎのかば焼きは約50gで推奨量に達します。
妊娠中に飲んではいけない/摂取しすぎてはいけない飲み物まとめ
① お酒・アルコールは「飲んではいけない」
アルコールのリスク
妊婦さんがアルコールを摂取すると、胎児が胎児性アルコール症候群を発症し、成長に異常が出る危険性があります。妊娠が分かったら飲酒をやめましょう。
妊婦さんが摂取したアルコールは血管と胎盤を通じてお腹の赤ちゃんへと渡ります。まだ体の機能が未発達な赤ちゃんがアルコールを分解するには長い時間と負担がかかり、その間に様々な影響が出ると考えられています。
胎児への主な影響は、以下のとおりです(※9)。
● 身体面の影響
出生時の低体重
出生時の頭位が小さい
脳の障害
● 精神面の影響(成長に伴ってあらわれる)
ADHD(注意欠陥多動性障害)
うつ病
成人後の依存症リスク
など
少量の飲酒による胎児性アルコール症候群の報告例もあり、「どれくらいまでの飲酒量であれば安全」という明確な基準はありません。
アルコール0%をうたっているノンアルコール飲料にもごく少量のアルコールを含んでいることがあり、リスクはゼロではありません。バーボン入りのチョコレ―トや洋酒漬けのフルーツを使ったケーキなど、お菓子にアルコールが入っている場合もあるので注意してくださいね。
ちなみに料理に使用するみりんにもアルコールが入っていますが、加熱すると飛んでしまうので、基本的にお腹の赤ちゃんへの影響はありません。心配な場合はアルコール度数1%未満の「みりん風調味料」を使うのがおすすめですよ。
② カフェインを含む飲み物は「摂取しすぎてはいけない」
●紅茶
●緑茶(煎茶、玉露、抹茶、番茶、玄米茶、ほうじ茶)
●ウーロン茶
●コーラ
●ココア
●栄養ドリンク
カフェインのリスク
妊娠中にカフェインを過剰摂取すると、流産や死産を引き起こすリスクや、胎児の発育を阻害するリスクがあります。
1日のカフェイン摂取量が100㎎を超えると自然流産率が増加するというデータもあります(※10)。
1杯あたりのカフェイン含有量
◇コーヒー:50~100mg
◇インスタント紅茶:30mg
◇煎茶、ウーロン茶、ほうじ茶:20~40mg
◇抹茶:48mg
◇玉露:200mg
◇コカ・コーラ(350ml缶):34mg
◇ココア:10~20mg
◇板チョコ(50g):20mg
コーヒーの場合は1日に1杯程度にとどめておくと安心ですね。飲み物によって含有量に差があるので気をつけましょう。
またコーヒーや紅茶、ウーロン茶などには、鉄分の吸収を妨げる「タンニン」も多く含まれるので、特に貧血気味の妊婦さんは摂取に注意が必要です。
③ 一部のハーブティーは「飲んではいけない」

●ラズベリーリーフティー
●セントジョーンズワートティー
●ラズベリーリーフティー
●パッションフラワーティー
●ネトルティー
●ベニバナ茶
●ハトムギ茶
●アロエ茶
ハーブティーのリスク
子宮収縮や緊張を促す作用がある一部のハーブティーは、流産や早産のリスクを高めるので、妊娠中は飲むのを控えた方が良いでしょう。
体の不調を解消したりリラックス効果があったりするノンカフェインのハーブティーの中にも、妊娠中に飲んでいいものとダメなものがあります。
「安産ティー」と呼ばれるラズベリーリーフティーも、妊娠初期~中期は控えてくださいね。
とはいえ、万が一飲んでしまっても少量であれば問題ないので、心配しすぎないようにしましょう。
飲んだ後にお腹の張りなどが気になるようであれば、産婦人科医に相談してみてくださね。
正しい知識を持って妊娠中の食事を楽しもう
妊娠初期のママは、つわりで思うように食事をとれなかったり、気をつけるべき食べ物が多くあったり、栄養バランスを気にかけたりと、食事に関してストレスを感じることも多いものです。
ママは大好物だけれど、赤ちゃんのために我慢をする食べ物もあるかもしれません。今回ご紹介した知識を知っておくことで、パパがそれをうっかりすすめてしまうなんてことも避けられるかもしれませんね。
ママが神経質になりすぎないようサポートしながら、妊娠中の毎日の食事を一緒に楽しんでくださいね。
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