多くの赤ちゃんは、生後数日すると肌が黄色っぽくなる「新生児黄疸」という症状が見られます。一般的に生後1~2週にかけて治まる症状ですが、母乳育児をしていると「母乳性黄疸」といって、黄疸の症状が長引く場合があります。それでは、この母乳性黄疸には何かリスクがあるのでしょうか?また、いつまで続くのでしょうか?今回は母乳性黄疸の原因や症状、いつまで続くのかなどについてご説明します。
そもそも新生児に黄疸が出る理由は?
新生児に黄疸が出るのには、血液中のビリルビンという成分が関係しています。
胎児はママのお腹の中で効率よく酸素を取り入れるために、血液中の赤血球の形態が出生後と異なっていて、その量も多くなっています。
しかし、出生後は自分の肺で呼吸できるようになるため、たくさんあった赤血球は不要になり、少しずつ分解されます。
また、この際に、赤血球中のヘモグロビンから黄色い色素を持つビリルビンという成分が大量に生み出されます。本来ビリルビンは、肝臓に運ばれて便や尿と一緒に体外に排出されるのですが、赤ちゃんの肝臓は未発達なので、ビリルビンを上手く処理できません。
すると、血液中のビリルビン値が上がり、肌が黄色くなってしまうのです。これを新生児黄疸と呼びます。新生児黄疸は、生まれたばかりのほとんどの赤ちゃんに起こる生理現象なので、基本的に心配する必要はありません。
新生児黄疸は、一般的に生後1~2週頃に治まります。
母乳性黄疸とは?原因や症状は?
完全母乳で育てていて生後2週間頃を過ぎても新生児黄疸が消えない場合、「母乳性黄疸」が疑われます。
母乳性黄疸は、母乳に含まれる女性ホルモンの影響により、赤ちゃんの体内でビリルビンを処理する能力が低下することが原因で起こります。
母乳性黄疸の症状は基本的に新生児黄疸と同じで、肌や白目の部分が黄色くなります。
母乳性黄疸はいつまで続くの?
新生児黄疸は遅くても生後2週頃には消えますが、母乳性黄疸の場合は、その後も症状が続きます。
一般的に、母乳性黄疸は生後2~3ヶ月頃には治まります(※1)。
母乳性黄疸は病院に行ったほうがいい?検査方法は?
母乳性黄疸は自己判断するのが難しいため、生後2週を過ぎても黄疸が続くようであれば、小児科を受診しましょう。母乳性黄疸で症状が長引いているのであれば問題ないですが、敗血症や先天性胆道閉鎖症などの病的な理由で黄疸が長引いている可能性も考えられるからです(※1)。
基本的には赤ちゃんの外出は生後1ヶ月健診で許可が出てからですが、母乳性黄疸が疑われる場合は、出産した病院や近所の小児科に相談してできるだけ早く受診することをおすすめします。
病院では血液検査を行い、血液中のビリルビン値が直接型・間接型のどちらが優位か、またその値が正常範囲であるか、肝機能に異常がないかなどを確かめます。
母乳性黄疸ではない場合は治療が必要なの?
検査の結果や経過、母乳性黄疸だと確定できれば、基本的には自然と症状が治まるのを待ちますが、他の原因で高ビリルビン血症と診断されて黄疸が出ている場合は、治療が必要になります。
体内のビリルビンの量が過剰になると、影響は脳にまで及び、「核黄疸」という脳障害が起きることがあります。進行すると、神経過敏や筋肉硬直、ひきつけといった症状が出てくるため、早期治療が大切です(※2)。
症状がひどい黄疸の治療法には、光線療法と交換輸血があります。
黄疸の治療法1:光線療法
光線療法は青白色や緑色の人工的な光を当てて、赤ちゃんのビリルビン値を下げる治療法です。
ビリルビンは光を当てられると、肝臓と腎臓によって排出されやすくなる形態になるため、光線療法にはビリルビン値を下げる効果を見込めるというわけです。光線療法は、赤ちゃんにアイマスクをつけ、保育器の中で治療用の光を当てて行います。
黄疸の治療法2:交換輸血
光線療法を行っても症状が改善しないときは、体の血を取り替える交換輸血を行うこともあります。また、便が白いという症状があれば、胆道閉鎖症が疑われるため、便を持って小児科を受診してください。
母乳性黄疸が疑われるときは医師に相談を
母乳性黄疸が現れると心配ですが、きちんと母乳を飲んでくれている証拠でもあります。
ただし、母乳の出が悪い、赤ちゃんがあまり母乳を飲んでくれないといった状況なのに黄疸が長引いている場合は、母乳性黄疸の可能性は低くなります。
母乳性黄疸を自己判断することは難しいので、生後2週間が過ぎても黄疸の症状が消えない場合は、念のため受診をして検査をしてもらいましょう。
きちんとビリルビン値を測っておけば、不要に心配になることも減りますよ。
母乳性黄疸とわかれば自然と治まっていくものなので、心配しすぎずに様子を見てあげてくださいね。