授乳中は下痢になりやすい?腹痛があるとき薬は飲める?

監修専門家 助産師 鶴町 はるな
鶴町 はるな 茨城県立中央看護専門学校助産学科卒業後、総合周産期センターの産婦人科・NICU勤務を経て、クリニックでのフリースタイル分娩や無痛分娩にも携わってきました。現在は産後ケアや母乳外来を中心に活動しています... 監修記事一覧へ

「産後にお腹がゆるくなった」と悩むママも多いもの。出産という大仕事を終えたあとの女性の体にはさまざまな変化が起き、マイナートラブルもよく起こります。特に、授乳中に起きるトラブルについては、母乳を飲んでいる赤ちゃんへの影響や対処法が気になりますよね。そこで今回は、授乳中にママがなりやすい下痢について、原因や対処法、薬を飲んでもいいのかなどをご説明します。

授乳中、下痢になりやすい原因は?

育児 疲れ 眠い

出産する前はお腹の不調が起きにくかったという人でも、産後や授乳中に下痢になってしまうことがあるのはなぜなのでしょうか。

主に、次のような原因が考えられます。

自律神経の乱れ

産後は育児に追われ、ストレスが溜まりやすい時期です。そのうえ、妊娠・出産・授乳を経て、目まぐるしくホルモンバランスが変化しています。

ストレスやホルモンバランスの崩れによって、自律神経が乱れると、下痢などの症状が出やすくなります。

冷え

授乳中は、赤ちゃんに水分を取られるため、喉が渇きがちです。授乳中に適度に水分を摂ることは良いことですが、冷えた飲み物を摂りすぎるとお腹が冷えてしまい、下痢気味になることもあります。

また、寒い季節の夜間授乳はママの体が冷えやすく、お腹を下す一因になることもあります。

消化不良

育児に追われ、自分の食事は立ちながら、ちょっとずつ手が空いたときに済ませる、といったママも多いですよね。

手軽に済ませられる糖質の高い菓子パンなどを食事代わりにしたり、よく噛まず丸飲みしてしまったりすることもあるかもしれませんが、これらの食事方法では消化不良を起こしやすくなります。

消化不良になると、下痢にもなりやすくなります。

免疫力の低下

産後は、育児の疲れやホルモンバランスの乱れによって、免疫力が落ちている状態です。

そのためウイルスにも感染しやすく、上の子が保育園でウイルスをもらってきたときなどにうつって、ウイルス性胃腸炎になることがあります。

なお、ウイルスが母乳を通じて赤ちゃんに感染することはありません(※1)。

授乳中の下痢の予防・解消方法は?

公園 ベビーカー

授乳中の下痢は、前述の「ストレス」「冷え」「消化不良」「免疫力の低下」のいずれかが原因になっていることが多いので、これらを解消できるよう生活習慣を見直してみましょう。

軽く体を動かす

赤ちゃんのお世話をしていると、家にこもりがちで運動不足になり、知らず知らずのうちにストレスが溜まってしまいます。

赤ちゃんが寝ているあいだにヨガやストレッチをするなど、少しでも体を動かすようにすると、リラックスにつながるかもしれません。また、天気のいい日は赤ちゃんをベビーカーに乗せて、お散歩するのもおすすめです。

お腹を冷やさない

授乳中に限ったことではありませんが、お腹が冷えると下痢になってしまうことも。できるだけ温かい飲み物をとるように心がけましょう。

また、寒い季節は授乳のたびにお腹が冷えないよう、腹巻きや授乳用ケープを身につけるなど、冷えないための工夫をしてみてくださいね。

消化の良いものを食べる

授乳中は、なかなかゆっくり食事をとれないかもしれませんが、消化不良を起こさないよう、よく噛んで食べるようにしたいですね。また、スナック菓子や脂っこい食事は、腸に負担をかけてしまうので食べすぎないように要注意です。

もし下痢になってしまったときは、脱水症状にならないようスポーツドリンクや温かいスープなどで水分を摂りましょう。食物繊維の多い食べ物は避け、おかゆなど、消化・吸収の良いものを食べるようにしてくださいね。

無理をしない

先述のとおり、産後のママは免疫力が下がっているので、体調がすぐれないと感じたときは、無理をしないことが大切です。

赤ちゃんと一緒に昼寝をするなど、休めるときにできるだけ休みましょう。家事は手を抜いてしまっても大丈夫、と肩の力を抜き、家族や民間サービスを頼ってみてくださいね。

また基本的なことですが、外から帰ってきたときはしっかり手洗いし、ウイルスの感染を防ぎましょう。

授乳中は下痢の薬を服用してもいいの?

薬

下痢の状態が続くとつらいですよね。食事や生活改善など、自分でできるケアをしても症状が改善されない場合は、市販薬の服用を考えるかもしれません。しかし授乳中の場合、赤ちゃんへの影響も気になるところですよね。

市販されている薬のうち、整腸剤の「新ビオフェルミンS錠」(大正製薬)を例にとると、もともと健康な人の腸内にいる乳酸菌を製剤にしたものなので、授乳中に飲んでも赤ちゃんに影響が出ることはありません(※2,3)。

ただし、「ビオフェルミン下痢止め」(大正製薬)にはロートエキスという成分が配合されており、母乳を通じて赤ちゃんに届き、脈が速くなるなどの悪影響を及ぼす恐れがあるため、授乳中には飲むことができません(※4)。

このように、お腹の調子を整える市販薬のなかには、母乳を飲んでいる赤ちゃんへの影響があるものとないものがあるため、自己判断で使う前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

できることなら、内科などを受診して授乳中であることを伝え、赤ちゃんへの影響を心配せずに使える薬を処方してもらいましょう。

なお、下痢が長期間続く、腹痛や吐き気、出血を伴うといった場合には、食中毒やウイルス性の病気などの可能性もあるので、市販薬は飲まず、すぐ病院を受診してくださいね。

授乳中の下痢は、無理せず早めの対策を

夫婦 赤ちゃん 家族

授乳中である乳児期は、赤ちゃんのお世話が一番大変な頃ではないでしょうか。毎日赤ちゃんのことで頭がいっぱいで、ママ自身のケアは後回しになってしまいがちかもしれません。

しかし、赤ちゃんにとって一番良いのは、ママも健康でいてくれること。寝られるときに寝る、冷え対策をするなど、できることから工夫して体調管理をしましょう。下痢の症状がなかなか治らないときは無理をせず、病院を受診してくださいね。

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