子供がかかる「夏風邪」といえば、ヘルパンギーナや手足口病が代表的なものですよね。発熱したり、口の中に発疹ができてご飯が食べづらくなってしまったりと、かかった子供だけでなく、ママやパパもケアが大変な病気です。今回は、ほぼ同時期に流行することが多いヘルパンギーナと手足口病の違いや、併発することがあるのかについてご説明します。
ヘルパンギーナ、手足口病の病原体は?
ヘルパンギーナと手足口病は、ともにエンテロウイルス属のウイルスが感染することによって発症します。
エンテロウイルスは動物の中で人だけが保菌するウイルスです。特に夏から秋にかけて流行することが多く、ヘルパンギーナや手足口病以外にも鼻炎や、頻度が低いものの重症例としては髄膜炎・心筋炎など、さまざまな病気を引き起こします。
アメリカでは、夏~秋にかけて発熱した乳児の33~66%に、エンテロウイルスの感染が関係しているとの報告があります(※1)。
ヘルパンギーナはエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスA2、3、4、5、6、10などが病原体で起こることが多く、手足口病は同じくエンテロウイルス属のコクサッキーウイルスA6、16、エンテロウイルス71などが病原体で起こります(※2,3)。
原因となるウイルスがいくつもあるため、両者とも何度も発症してしまうという特徴があります。
ヘルパンギーナと手足口病の違いは?
ヘルパンギーナと手足口病には、それぞれ以下のような特徴があります(※2,3)。
ヘルパンギーナ | 手足口病 | |
発症が多い年齢 | 0~5歳 | 0~4歳 |
潜伏期間 | 2~4日 | 3~5日 |
感染経路 | 飛沫感染、経口感染など | 飛沫感染、経口感染など |
発熱 | 38~40度が1~3日続く | 平熱~38度 |
肌の発疹 | なし | 手や足に2~3mmの水ぶくれ |
口内の発疹 | 喉に1~5mmの水ぶくれ | 口の中の全体に2~3mmの水ぶくれ |
ウイルスの排出 | 治癒後、2~4週間 | 治癒後、2~4週間 |
ヘルパンギーナと手足口病に共通する点は、未就学児の感染が多く、熱が出ること、2~4日前後の潜伏期間を経て発症すること、また治癒後もしばらくウイルスを排出し続けることなどです。
一方、両者の違いとして分かりやすい点は、ヘルパンギーナは突然高熱を出すこと、手足口病は口だけでなく手や足にも発疹が出ることで、多くはそこから診断されます。
なお口内にできる発疹は、ヘルパンギーナも手足口病も、強い痛みや刺激があります。
ヘルパンギーナと手足口病は薬で治療する?
ヘルパンギーナ、手足口病ともに、ワクチンや特効薬はなく、治療は対症療法となります。
治療を行わなくても日が経つとともに症状は治まっていきますが、ヘルパンギーナは38度以上の高熱になってしまうことが多く、全身のだるさや食欲不振にもつながるので、解熱剤を使うことがあります。
またヘルパンギーナ、手足口病ともに、口の中に発疹ができるので、食べ物や飲み物が口の中に入ると痛かったりしみたりします。その症状を和らげるため、抗炎症剤を使うこともあります。
ヘルパンギーナや手足口病は、食べ物や飲み物が喉を通らず、食欲不振になると、脱水症状を起こしてしまう危険性もあります。その場合には、点滴で水分や電解質を補います。
ヘルパンギーナと手足口病は併発することもある?
ヘルパンギーナと手足口病は、基本的には併発することはありません。
ただし、ヘルパンギーナと手足口病は、症状から病名を診断するため、「手足口病と診断されたのに、熱が39度に上がってしまった」、「ヘルパンギーナと診断されたのに、手や足にも発疹がある」ということもあります。
つまり「最初はヘルパンギーナと診断されたものの、実は手足口病だった」というように、あとで診断名が変化することもあります。
また、手足口病で高熱が出る場合は、例年とは異なるウイルスが流行している可能性もあります。実際、2011年に流行した手足口病は、高熱や大きな発疹が多いという特徴がありました(※4)。
ヘルパンギーナと手足口病はいつから登園できる?
一般的には、ヘルパンギーナと手足口病は、発熱や食欲不振など、本人がつらいと感じる症状がなければ、登園・登校してもいいとされています。目安としては、「発疹の拡大がなく、解熱して24時間経過したとき」となります。
ただし、保育園や幼稚園が独自の登園基準を定めていることもあります。いつから登園できるかは、それぞれの保育園や幼稚園に問い合わせてみてください。
ヘルパンギーナと手足口病の違いを理解しておきましょう
ヘルパンギーナと手足口病は、予防接種や特効薬がなく、発症してしまったらその症状を和らげる治療しかできません。ただし両者の症状を知っておけば、もし子供が病気になってしまっても、どのように対処すればいいか想定できますよね。
もちろん、一番大切なのは、病原体のウイルスを体内に取り込まないことです。そのためには、日ごろの手洗いやうがいを欠かさないことが大事ですよ。