貧血はママだけでなく赤ちゃんにも影響を及ぼす、リスクのある症状です。しかも妊婦の約20%は貧血といわれるほど、妊娠中は貧血になりやすいのです(※1)。海外では貧血予防が小さい頃から行われているのに対し、日本では予防されてないどころか貧血は危険だという認識も薄いといった状況です。今回は、妊娠中期・後期、臨月の貧血について、原因や症状、治療法、胎児への影響についてご紹介します。
妊婦の貧血とは?
妊娠中の妊婦さんは、お腹に宿った赤ちゃんに栄養を送らねばならず、多くの血液が必要になります。しかし、特に妊娠初期はつわりになると食事も十分できず、鉄不足で貧血になってしまうことがあります。
妊娠中期や後期はつわりが治まる頃ではありますが、妊娠初期での鉄分不足が響き、妊娠中期や後期、または臨月になって貧血の症状が重くなる、という妊婦さんも多いようです。
妊婦が貧血になる原因は?
妊娠中は、出産時の出血に備えて母体で大量の血をつくり、血漿(けっしょう)が最大約50%、赤血球は約20%増加します(※2)。
このとき、血漿に比べて赤血球があまり作られないので、血液が薄まった状態になって、貧血の症状を引き起こすことがあります。
妊娠後期や臨月は貧血になりやすい?早いと妊娠中期からなる?
妊娠後期や臨月になると、赤ちゃんも大きくなり、より多くの血液が必要になります。そのため、赤ちゃんの成長の加速に合わせてさらに血液を増加させなければならず、何もしなければ貧血は進む一方となってしまいます。
妊娠中期の後半、妊娠7ヶ月頃から血漿が急激に作られ始めるので、妊娠後期や臨月の女性は特に注意しましょう(※2)。
妊娠後期・臨月に見られる貧血の症状は?
妊娠後期や臨月に限らず、妊娠中の貧血の症状としては次のようなものが挙げられます。
● 体のだるさ、疲れ
● めまいや立ちくらみ
● 視界が暗くなる
● 動悸・息切れ
● 顔が青白くなる
● 手足の感覚が変わる
● 氷などを食べたくなる
ところが、妊娠初期よりも強く症状が出ているはずなのに、その変化に気づくことができない妊婦さんも多くいます。つわりやイライラがピークの妊娠初期と比べると、体が慣れてしまったり「あの頃よりはマシになったかな」と感じてしまったりするのです。
辛いと感じたときにはしっかり休み、産婦人科の先生にも相談しておくと安心ですね。
妊娠中の貧血は、赤ちゃんに影響が出る?
赤ちゃんが体を形成する妊娠初期とは異なり、できてきた体を大きく成長させる妊娠中期以降では、貧血による未熟児や奇形児のリスクは低いとされています。
ただし、重度の貧血の場合、低体重出生児のリスクは上がるので注意が必要です(※1)。
そのほか、貧血でふらついてお腹をぶつけてしまったり、寝込んで運動不足になったりと間接的な悪影響が及ぶ危険性もあります。
また、出産には出血がつきものです。出血量は分娩時間などに左右されるため個人差がありますが、妊娠後期に貧血だと血圧が下がりやすく、出血量が余計に増えてしまいがちです。その結果、意識を失ったり、輸血が必要になったりして、産後の回復が遅れてしまうこともあります。
さらに、貧血により血液から作られる母乳の出が悪くなることもあります。産後への影響も含めて、貧血改善に取り組んでいきたいですね。
妊娠中期・後期の貧血はどう診断するの?
妊娠中期や後期での貧血の診断は、定期妊婦健診で血液検査を行うことによって、貧血かどうかを判断します。まだ貧血とは言い切れないような状況でも、医師からは貧血対策をするように指示をもらうこともあります。
貧血の疑いが出た時点で、早めに治療や体質改善にとりかかりましょう。妊娠中や産後のリスクを減らすため、妊婦健診には必ず行くようにしてくださいね。
妊婦の貧血は食べ物で改善できる?
妊婦さんの貧血改善には、やはり食生活の改善が効果的です。妊娠中の無理なダイエットや偏った食事で貧血になる女性も多くいるので、栄養バランスの良い食生活に変えていきましょう。
貧血対策におすすめなのは、非ヘム鉄を多く含む、乾燥青のり、乾燥ひじき、パセリ、納豆、小松菜、ほうれん草などです。
さらに、吸収力をあげるタンパク質やビタミンCが含まれる、豆腐、あじ、レモン、ケール、ブロッコリーなどと一緒に食べるとよいでしょう。
「鉄分の摂取にはレバーがいいのでは?」と思う妊婦さんも多いようですが、レバーは鉄分以外にビタミンAも豊富に含み、ビタミンAを過剰に摂取してしまうと赤ちゃんの身体に影響がでることもあります(※3)。そのため、レバーの食べ過ぎには注意してくださいね。
妊婦の貧血対策には薬も使うの?臨月にも必要なの?
貧血を治すには鉄分を補うことが必要ですが、鉄分を補うための偏った食材の摂取が逆に赤ちゃんに良くないこともあります。
例えばレバーのように、鉄分を補えても、過剰に摂取すると胎児のリスクが増してしまうビタミンAが大量に含まれる食材は、大量に食べるべきではありません。
そのため、妊娠中期以降の貧血対策には鉄剤を服用するように、医師からすすめられることも少なくありません。鉄剤を服用しても貧血が改善しない場合には、点滴による治療を行うこともあります。
ただし、鉄剤は効果が現れるまでに時間がかかることがあり、貧血の症状がすぐに改善されるというわけではありません。また、鉄剤の副作用で胃に不快感を伴ったり、便秘になったりすることもあるので、医師の判断で鉄剤と一緒に胃薬を処方されることがあります。
妊娠中の貧血は、食生活の見直しから
貧血を防ぐには、やはり普段からほうれん草や大豆類などの鉄分を多く含む食べ物を多めに取っておく必要があります。
また、妊娠中期・後期、臨月はもちろんのこと、妊娠初期の段階から対策しておくのがおすすめです。
もし貧血で悩むようなことがあれば、我慢せずに産婦人科の先生に相談しましょう。体調不良によるストレスも赤ちゃんによくありません。早めの体質改善を心がけてくださいね。