妊娠すると、普段の食事に気をつけるようになるもの。胎児に影響がないかという視点で、様々な食べ物を改めて見つめ直すようになりますよね。蟹もそのうちのひとつで、妊娠中に食べてもいいのか悩んでいる人は多いのではないでしょうか。今回は、妊娠中の蟹の摂取についてご説明します。
妊婦は蟹を食べてもいいの?
結論からいうと、火が通ったものであれば、妊婦さんが蟹を食べても問題ありません。
むしろ、蟹は低脂肪で高タンパク質なうえに、多くの栄養素を含んでいるので、妊婦さんにおすすめしたい食べ物でもあります。
蟹に含まれている代表的な栄養素とその効果は、下記のとおりです(※1,2,3)。
カルシウム
カルシウムには、歯や骨を丈夫にする、精神を安定させる、筋肉の働きをよくするといった働きがあり、妊娠中は、お腹の赤ちゃんの骨や歯を形成するという大切な役割を担います。
成人女性に推奨されるカルシウムの摂取量は、650mg/日で、蟹に含まれるカルシウム量は、約50~120mg/100gです。
銅
銅は、貧血を防ぐ、骨を強くするなどの働きがあります。妊娠中は、赤ちゃんに血液が優先的に送られるので、ママは貧血になりやすい状態です。過剰に摂る必要はありませんが、銅はきちんと摂取しておきたい栄養素のひとつです。
妊婦さんに推奨される銅の摂取量は、0.9mg/日で、蟹に含まれる銅の量は、約0.4~1.10mg/100gです。
亜鉛
亜鉛は、免疫力を高めたり、細胞が新しく作られるのを活性化したりする栄養素です。
妊婦さんに推奨される亜鉛の摂取量は、10mg/日で、蟹に含まれる亜鉛の量は、約2.5~6.5mg/100gです。
妊娠中は蟹をどのくらい食べてもいいの?
蟹に栄養素がたくさん含まれているからといって、いくらでも食べてもいいというわけではありません。なぜなら蟹には、微量ながらも水銀が含まれているからです。
妊婦さんが水銀を過剰に摂取してしまうと、胎児に悪影響を与えるリスクが生じ、場合によっては先天性異常を引き起こすこともあります。よって妊娠中の水銀摂取量には、細心の注意を払わなければいけません。
厚生労働省も、水銀摂取の観点から、一部の魚介類について、妊娠中に食べるのを控えるようにと注意喚起を行っています(※4)。
蟹に関しては、控えるべき魚介類とされていませんが、過剰摂取には気をつけたほうがいいでしょう。先に説明した栄養素についても、蟹だけで摂取しようとするのではなく、様々な食品と組み合わせて摂取するようにしてくださいね。
妊婦が蟹を食べるときの注意点は?
妊婦さんが蟹を食べるときは、刺身や半生のしゃぶしゃぶなど、しっかりと火が通っていないものは避けたほうが安心です。なぜなら、蟹を含む生の魚介類には、食中毒を引き起こす細菌が含まれている可能性があるからです。
妊娠中は免疫力が低下しており、普段より食中毒にかかりやすい状態です。妊娠中に食中毒になると、飲める薬が限られているため、症状が長引き、胎児に影響が出かねません。
また、「リステリア」という細菌にも注意が必要です。妊婦さんがリステリアに感染すると、流産や、生まれた赤ちゃんに影響が残る可能性があります。厚生労働省も、妊娠中のリステリアの摂取には注意するよう呼びかけています(※5)。
日本では、わずかですが、魚介類の加工品からリステリア菌が検出されています(※5)。リステリア菌は加熱すると死滅するので、蟹の加工品はできる限り避け、食べるとしてもしっかりと加熱するようにしましょう。
また蟹味噌には、健康に害を及ぼしうるカドミウムという有害物質が含まれていることがわかっています(※6)。蟹味噌は、プリン体が多くコレステロール値も高いので、あまり食べすぎない方が安心です。
妊娠中は蟹を上手に活用しよう!
食べる量と食べ方に気をつければ、蟹は妊婦さんにとって素晴らしい栄養源になります。蟹を食事に上手く取り入れて、健やかなマタニティライフを過ごしてくださいね。
もちろん蟹だけでなく、妊娠中は、様々な食材をバランス良く摂取することが大切です。野菜や肉類、他の魚介類などと組み合わせながら、栄養が偏らないように注意しましょう。